世の中的には「お盆休み」の季節となり、ゆるりとお過ごしの方も多いかもしれません。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、バカンスについて「今年は自粛」と考えられる方も多いと思われます。一方で、その分株式市場への参加を続けている投資家も多く、例年に比べて株式市場の売買代金はあまり減らないかもしれません。
そうした中、2020年4~6月期の決算発表が8/14(金)をもち、おおむね一巡しました。決算発表とともに、業績が市場予想や前年同期の数字と比べて増えたのか、減ったのか、また業績見通しは強くなりそうなのか、弱くなりそうなのか、それらの「第1印象」に基づく反応も一巡したものと思われます。8/17(月)以降は、その銘柄の業績見通しや成長性をより詳細に見極めた物色が本格化してくるのではないのでしょうか。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、2020/4~6期の決算発表が終わった銘柄について分析し、歴史的な逆境の中、大幅な営業増益が継続しそうな「強い銘柄」を探ってみました。8/17(月)以降の東京株式市場で、好パフォーマンスをあげる銘柄も含まれていると「日本株投資戦略」では期待しています。
決算発表がほぼ一巡し、ここから活躍できそうな好業績銘柄を探ってみた
株価上昇が期待できる好決算銘柄とはどのような銘柄でしょうか。そこで、とりあえずは以下のような条件のもと、銘柄を抽出し、株価の騰落を調べてみました。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること。
(3)広義の金融(銀行、証券・商品、保険、その他金融)を除く業種に属していること。
(4)3月、6月、9月、12月決算銘柄で、8/13(木)までに決算発表を終えた銘柄(一部を除く)であること。
(5)直前四半期(2020/4~6期)の営業利益が事前の市場コンセンサスを上回っている銘柄であること。
(6)直前四半期(同上)の営業利益が前年同期比で10%超の増益になっていること。
(7)業績予想を行っているアナリストが3人以上いる銘柄であること。
(8)今期、来期ともに市場コンセンサスで10%超の営業増益が予想されていること。
(9)直近4週間で予想EPSの市場コンセンサスが横ばい、または上昇している銘柄であること。
以上のすべての条件を満たした銘柄を、上記の(6)に相当する直前四半期の営業増益率(前年同期比)が高い順に並べたものが表1となっています。ご存知の通り、2020/4~6期は我が国のみならず世界的に経済活動や人の流れが止まり、業績が急速に悪化する上場企業が多かったのが現実です。日銀短観では大企業・全産業の業況判断が3月の0から、6月は-26へと急速に悪化し、業況が好転した業種は皆無となりました。
表1に掲載された銘柄はそうした中、前年同期比で、本業のもうけを示す営業利益について、大幅な増益を確保している稀有な存在の銘柄であり、メディア等に前向きな内容で紹介されるケースも多いと思われます。
問題は「それでは、ここから買っても、投資家は値上がり益を享受できるのか」という点です。すでに大きく株価が上昇した銘柄もあり、それらについては、「好材料織り込み済み」となっているリスクにも注意すべきです。逆に、これだけ好材料が揃っても株価が上昇していない場合、その背景に悪材料が隠れていないのか、チェックする必要があると考えられます。
表1 決算発表がほぼ一巡し、ここから活躍できそうな好業績銘柄を探ってみた
コード / 銘柄 / 株価(8/14) / 決算発表直前株価 / 決算発表後株価騰落率 / 営業増益率2020/4~6 / 営業増益率今年度(予) / 営業増益率来年度(予)
<6407> / CKD / 1,857 / 2,038 / -8.9% / +349.2% / +37.3% / +80.6%
<4502> / 武田薬品工業 / 3,980 / 3,756 / 6.0% / +270.4% / +283.7% / +74.5%
<8035> / 東京エレクトロン / 28,690 / 28,960 / -0.9% / +73.6% / +13.2% / +18.6%
<3774> / インターネットイニシアティブ / 4,200 / 3,755 / 11.9% / +48.2% / +15.4% / +17.3%
<9672> / ※東京都競馬 / 4,625 / 4,455 / 3.8% / +45.3% / +14.0% / +15.6%
<4062> / イビデン / 3,670 / 2,988 / 22.8% / +44.7% / +26.8% / +35.4%
<4186> / ※東京応化工業 / 5,570 / 5,750 / -3.1% / +50.5% / +39.7% / +14.9%
<6383> / ダイフク / 9,900 / 9,720 / 1.9% / +40.5% / +14.1% / +26.5%
<9697> / カプコン / 5,050 / 4,130 / 22.3% / +39.1% / +14.3% / +16.0%
<2491> / ※バリューコマース / 3,360 / 3,310 / 1.5% / +25.8% / +15.4% / +13.1%
<4516> / 日本新薬 / 9,280 / 8,330 / 11.4% / +16.1% / +22.6% / +30.8%
<2412> / ベネフィット・ワン / 2,633 / 2,162 / 21.8% / +13.0% / +10.7% / +14.4%
※各社株価データ、各社公表データおよびBloombergをもとにSBI証券が作成。予想は市場コンセンサス。決算発表後株価騰落率は、決算発表が取引終了後に実施された場合は決算発表日を、決算発表が取引時間中に実施された場合は決算発表前日終値を起点に、8/13(木)終値までの騰落率をみたもの。銘柄名左側に※印のある銘柄は12月決算銘柄で、他は3月決算銘柄になります。
掲載銘柄のうち、決算発表後の動きが冴えない銘柄についての見方は?
決算発表とその直後の株価の反応としては、直前の市場コンセンサスと実績数字を比較して利益等が上回ったのか、下回ったのかをみて動くケースが多いと思われます。特に、本業のもうけを示す営業利益とその市場コンセンサスの比較は重要であると考えられます。また、会社側が公表した業績見通し(営業利益等の見通し)が、事前の市場コンセンサスを上回ったかどうかを確認することも重要です。表1の銘柄の多くは、総じて市場の期待を上回る業績となっており、株価も動意をみせているケースが多いようです。
しかし、決算発表後の株価が冴えないケースもあります。表1の最上位に掲載された省力機械・自動機械大手のCKD(6407)の場合、2020/4~6期の営業利益は1,277百万円(前年同期比349.2%増)で、事前の市場予想営業利益1,105百万円をも上回っており、通常は決算発表(8/12取引終了後)直前の株価2,038円に対して株価が上昇しても不思議ではないケースです。しかし、8/14(金)終値は1,857円と、下落してしまっています。
会社側が新たに公表した2021/3期の営業利益が3,210百万円(前期比38.6%減)であり、増益を予想していた市場の数値を大きく下回ったことで、失望売りをあびた形になりました。会社側は新型コロナウイルス感染拡大を原因とした工事の遅延や検収遅れのリスクを織り込んだようです。今後、会社側の抱いた懸念の一部が杞憂に終わり、実際の業績が市場予想に近づく展開となれば、株価が反発に向かう展開になりそうです。
表1で上から3番目の東京エレクトロン(8035)の場合、話題の半導体関連であることに加え、2020/4~6期の営業利益は実績、2021/3期の会社予想営業利益ともに、事前の市場予想を上回っており、こちらも通常は株価上昇が期待できるパターンです。しかし、決算発表(8/12取引終了後)直前の株価28,960円に対して8/14(金)終値は28,690円と冴えない動きになっています。
同業のアドバンテスト(6857)が期待を下回る決算になったことや、世界的にグロース株上昇の勢いが鈍り、タイミング的に恵まれなかったことが影響しているとみられます。今後、市場の期待通りに業績拡大が続けば、株価も出直る可能性があると考えられます。この辺の事情は同じ半導体関連株と分類できる東京応化工業(4186)も、参考にできると考えられます。
図1 CKD(6407・日足)
図2 東京エレクトロン(8035・日足)
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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