昨今の大きな潮流となっている「グロース株優位」の状態から、相場の潮目が変わるタイミングに関心が集まっている。先日、銀行株を中心に「バリュー株」が買われる局面があったが、変化の兆しと捉えるべきなのかー東京東海調査センター市場調査部のシニアエクイティマーケットアナリストの仙石誠氏に聞いた。
潮目の変化への関心が高まる
株式相場には、「潮目の変化」が存在する。それまで続いていたトレンドが、なにかをきっかけに大きく変わることも少なくない。そのきっかけは、たとえばトランプ大統領の当選、自民党の政権奪取など表面化していて目に見えやすいものもあれば、時間が経過してから振り返ってみて「あそこが転換点だったか」と判明するものもある。その潮目の変化をとらえることが、株式投資で勝つためのコツのひとつだ。
現在、相場の大きな潮流となっているのが「グロース株優位」の状態である。グロース(成長)株とは業績が成長していてPER(株価収益率)やPBR(株感純資産倍率)といった株価指標でも割高となっている銘柄のことで、IT関連やハイテク関連、新しいビジネスに関係する銘柄が主流となっている。グロース株の対にあるのはバリュー(割安)株。業績の急成長が見込めないなどの理由で株価指標が割安になっている銘柄で、いわゆる“重厚長大”産業に属する銘柄が多い。鉄鋼や化学、自動車などのほか、金融株もこちらに属する。
コロナショックでは、バリュー・グロース関係なく叩き売られた。しかし、8月2日の記事でも書いたように、その後グロース株は大きく反発しており、ショック安以前の高値を奪回している銘柄も少なくない。一方のバリュー株はというと、全体相場の回復を背景に値を戻してはいるものの、いまだショック安以前の水準には程遠い状態にある銘柄が多く見受けられる。日本ではベンチャー企業が多く上場する東証マザーズ指数、米国ではナスダック指数が高値更新を続けているのはグロース株優位の証左だろう(他にも、米国のグロース株ETFやTOPIXグロースの値動きなどグロース株優位を裏付ける指標は複数ある)。
個人投資家のSNSを覗くと、コロナショック後はバリュー株を中心に投資する投資家たちよりも、やはりグロース株メインで立ち回っている投資家のパフォーマンスが上回っている印象を受ける。
実は8月11日から13日にかけて、銀行株を中心にバリュー株が買われる局面があった。8月12日の日経新聞電子版に「来るか『バリュー株』の逆襲」という見出しで、「2017年半ば以降、グロース株優位の展開が続いている」「過去数年、バリュー株の反発は1〜2週間で一巡してきた。今回のバリュー株の反発もごく短期間にとどまる可能性がある」という記事が掲載された。8月上旬には株情報サイトでも似たような内容の記事も見かけたが、要は株式市場でも相場の潮目が変わるタイミングに関心が集まっているのだろう。
ポイントは長期金利の上昇と景気回復
問題は、やはり「本格的にグロース株優位の潮目が変わるのはいつか」である。東京東海調査センター市場調査部のシニアエクイティマーケットアナリスト、仙石誠氏は「すぐに相場がバリュー株買いに傾くとは思えない」と話す。