セブン-イレブン・ジャパン株式会社やスターバックスコーヒージャパン株式会社など有名企業では、環境への配慮からプラスチックストローを紙ストローへ切り替えています。しかしその理由をはっきりと理解している人は少ないのではないでしょうか。そこで今回は、紙ストローへの切り替えが進む理由や世界での取り組みについて解説します。

プラスチックストローから紙ストローへ切り替わる理由

紙ストロー
(画像=thanakorn/stock.adobe.com)

プラスチックストローを紙ストローへ切り替える理由には、どのような理由があるのでしょうか。世界ではストローを含めた使い捨てプラスチック製品の廃止についての流れがあり、紙ストローへの切り替えもその一環です。

マイクロプラスチックによる海の環境汚染

プラスチックストローやレジ袋などのプラスチックゴミみが海に流れ込み、海洋生物の体内に入り込んでしまう問題が知られています。しかしプラスチックゴミから生まれる「マイクロプラスチック」がさらに深刻な環境汚染につながることが分かっています。マイクロプラスチックとは、プラスチックゴミが紫外線によって劣化して自然と細かく砕かれ1粒が5ミリメートル以下になったものです。

陸上にあったプラスチックゴミは細かなマイクロプラスチックとなることで雨水とともに川へ流れ、川から海へと流れ込みやすくなります。マイクロプラスチックは、ストローやポリ袋を飲み込めるような大きな海洋生物だけでなく小さな魚などの体内からも見つかっているのです。プラスチックゴミは、マイクロプラスチックになることでより多くの生物やそれを食する人間にも影響を及ぼすことが懸念されています。

プラスチックストロー廃止は世界的な流れ

2018年に米国カリフォルニア州では、プラスチックストローの提供を禁止する法を成立させています。同州は2015年にレジ袋の無償提供を禁止するなど環境問題に積極的な州です。他にもシアトル市がプラスチック製のフォーク、ナイフなどストローを含めた使い捨てプラスチック製品の提供を禁止しており米国では法規制の波が生まれています。

EU(欧州連合)では2019年に「使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する」という法案を採択しました。「環境汚染を防ごうという市民の声に応えた」という欧州委員会の声明からEU全体の世論が使い捨てプラスチック製品を使わない方向に進んでいることが分かるでしょう。欧米では使い捨てプラスチック製品のフォークやナイフ、スプーン、皿なども禁止対象になってきています。

プラスチックストローはあくまでその中の一つということも注目しておきたい点です。

紙ストローへ移行する企業の取り組み

プラスチックストローの提供を廃止し、プラスチックゴミを減らすことは世界的な潮流です。今後もプラスチックストローから紙ストローへ切り替えていく企業は日本でもさらに増えていくでしょう。そこで2020年現在日本における有名企業3社の紙ストロー切り替えに向けた具体的な取り組みを紹介します。

  • 株式会社セブン-イレブン・ジャパン
  • スターバックスコーヒージャパン株式会社
  • 株式会社すかいらーくホールディングス

株式会社セブン-イレブン・ジャパン

多くの人が利用するセブン-イレブンジャパンは、2019年11月5日から自社のオリジナルブランドであるセブンカフェで提供するストローを環境へ配慮した素材のものに切り替えています。北海道と北陸、関西、中部、四国、九州、沖縄の店舗では、植物由来で生分解されるバイオポリマー素材の「PHBH」を使用したストローを提供しています。

関東やその近郊、東北などの店舗では、森林保護へも配慮したFSC認証を受けた紙ストローを提供しています。同社は全国2万1,010店(2019年9月末時点)でプラスチックストロー提供を減らすことにより環境汚染の抑止に取り組んでいるのです。

スターバックスコーヒージャパン株式会社

全国に約1,500店(2020年3月時点)を展開するスターバックスコーヒージャパン株式会社では、2020年1月から段階的にセブン-イレブンも導入したFSC認証の紙ストロー提供を開始しました。スターバックスでは2018年に全世界の店舗で2020年末までにプラスチックストローを全廃することを発表しており日本でもその対応が始まったことになります。

この取り組みにより日本では年間およそ2億本、世界では年間約10億本のプラスチックストローの削減が見込まれており、削減量は非常に大きいといえるでしょう。

株式会社すかいらーくホールディングス

株式会社すかいらーくホールディングスでは2018年12月からドリンクバーで常備しているプラスチックストローを順次廃止しています。2019年7月末時点すかいらーくグループ全店で廃止を完了。プラスチックストローの代わりにトウモロコシ原料で生分解性を有するバイオマスストローを提供しています。

紙ストローが環境にやさしいといわれる理由と課題

プラスチックストローの代わりになる紙ストローは、なぜ環境にやさしいといわれるのでしょうか。ここでは、紙ストローが環境にやさしい理由と抱える課題について解説します。

生成分解され環境汚染の心配がない

紙ストローの原材料は木です。そのためもし落としたり捨てられたりしても自然の中で生成分解され汚染物質が残らず環境に非常にやさしいものとなっています。株式会社セブン-イレブン・ジャパンやスターバックスコーヒージャパン株式会社が採用するFSC(森林管理協議会)認証の紙ストローは、責任を持って管理された森林から持続可能な範囲で伐採された木材によって作られたものです。

これにより単にプラスチックゴミを減らすだけでなく森林破壊につながらないよう配慮された紙ストローになっています。

使いやすさはプラスチックより劣る

紙ストローを実際に使ってみると分かりますが、飲み物につかり過ぎると柔らかくなり、飲み物をかき混ぜると折れてしまうことがあります。またぬれると唇に張り付くものもあり、プラスチックストローに比べて決して使いやすいとはいえない点が課題です。人間にとっての使いやすさを求め続けた結果がプラスチックストローであり普及した一因とも考えられます。

しかし紙ストローのデメリットを嘆くのではなく、環境への配慮をしたうえで徐々に改良を重ね紙ストローなりの使いやすさを模索していくことが大切といえるでしょう。

紙ストロー導入だけでは環境汚染は解決しない

有名企業が紙ストローに切り替えただけでは世界的な環境汚染をなくすことはできません。そのため世界ではプラスチックストローの廃止だけでなく、広い視野で環境への配慮をすべきだと考えられています。

他のプラスチックゴミも削減する必要がある

紹介したスターバックスコーヒージャパン株式会社の取り組みに対して「プラスチックストローが廃止されても同じプラスチック製のフタが提供されている」と米国で批判する声が上がりました。たしかにストローを換えただけで環境汚染がなくなるわけではなく、使い捨てプラスチック製品全体を減らすことを考えていかなければなりません。

例えば、いまだにコンビニなどで提供されているプラスチック製のフォークやスプーンなど、減らすべき使い捨てプラスチック製品は多岐にわたります。紙ストローへの切り替えをきっかけとしてさまざまな分野でゴミの削減が検討することが必要です。

ゴミを減らすには再生できるものを使う

プラスチックストローから紙ストローへ切り替えることは、環境汚染の原因の一つ「プラスチックゴミ」を減らすために意味のある取り組みです。しかし最終的にはリサイクルできるものを使い、ゴミの量自体を減らしていくことが理想的でしょう。なかには、シリコンや金属で作られたマイストローを持ち歩いて紙ストローを受け取らずゴミを出さないようにしている人もいます。

日本では2020年7月1日からプラスチック製ゴミ袋が有料化したことに伴い、マイバッグを持つことも徐々に浸透しつつあり同様にゴミの削減につながっていくことも期待できるでしょう。企業の取り組みに任せるだけでなく、私たち一人ひとりが再利用できるものを活用し「ゴミ」という環境への負荷を減らせるよう積極的に取り組んでみてはどうでしょうか。(提供:Renergy Online