企業の環境活動やCSRと聞いても、具体的な取り組みまではご存じない方が大半ではないでしょうか。しかし、その活動内容は企業によってさまざまであり、私たちが想像する以上に広範囲におよび多くの人と関わりながら、積極的に行っている企業があります。

企業の環境活動は社会的責任から行われる

環境活動
(画像=ipopba/stock.adobe.com)

企業の環境活動について調べていくと、その多くがCSR報告書というかたちで公表されていることがわかります。CSR(Corporate Social Responsibility)とは、すべてのステークホルダー(消費者、投資家、社会全体など)に対して持つ企業の社会的責任を意味します。さらに、その責任から社会や環境へ向けて行われる自発的な活動を、CSR報告書として多くの有名企業が定期的に公表しています。

社外へ向けて行われる環境活動を紹介

CSRで行われる環境活動は社屋への太陽光発電の設置や省エネ設備の導入、工場や車両から出る二酸化炭素削減など、社内への対応で行われるケースが目立ちます。一方で社外へ出て地域の環境保護を行ったり、ときには人道支援やインフラ整備などに取り組んだりと、広範囲な活動をする企業もあります。ここではそうした社外へと踏み出し、さまざまな地域で取り組む有名企業の環境活動をご紹介します。

ユニクロの難民への洋服のリユース提供

衣料品販売の株式会社ユニクロでは不要になった同社の衣料品を店舗で回収し、国連などを通じて世界各地の難民キャンプや被災地へリユース品として届けています。この「全商品リサイクル活動」は、2019年8月末時点で回収は9,079万点、寄贈は3,657万点と非常に多くの実績を納めています。

服のリサイクルは環境活動と異なるように思えますが、回収されず廃棄処分となれば二酸化炭素排出を増やす可能性があり、さらに原材料となる資源の無駄使いにもなります。その点でユニクロのように大量の衣料品をリユースすることは、大きな環境保護効果のある活動と言えるでしょう。

カルビーミナミナの森活動

菓子メーカーのカルビー株式会社では、北海道の千歳市にある水源涵養(かんよう)森の一部を、「ミナミナの森」と名付け保全活動を行っています。水源涵養とは森林が降った雨を蓄え、ゆっくりと浸透しながら土壌によってろ過しきれいな水にしてくれる自然の働きです。また水源涵養には、雨が一気に河川に流れ込んで増水し災害を起こすことを、防いでくれる機能もあります。

カルビーはこのミナミナの森で、北海道林業技士会の方々と協力して植樹や下草刈りなどを行い、ときには社長自らも参加しながら環境活動に取り組んでいます。ちなみにミナミナとはアイヌ語で「ニコニコ笑う」という意味だそうです。

サントリーの次世代環境教育「水育」

飲料メーカーのサントリーホールディングス株式会社では、子どもたちへ自然の素晴らしさや水や森の大切さを伝えるプログラム、「水育」に取り組んでいます。この水育では「森と水の学校」と「出張授業」という、2つの活動が行われています。

「森と水の学校」は小学生とその保護者を対象に、白州や奥大山、阿蘇の大自然の中で水や自然の大切さを伝えるプログラムです。2004年に開校してから2019年までに、2万7,000名の親子が参加した歴史のある活動になっています。

もう一つの「出張授業」は小学校に赴いて行われる活動で、自然の仕組みを伝えたり水を未来に引きつぐために何ができるかを考えてもらったりしています。こちらも2019年までに約15万4,000名のお子さんが参加している、非常に壮大な授業となっています。

KDDIの各支社が行う環境保全活動

電気通信事業者であるKDDI株式会社では、2017年に策定し2030年まで行う長期計画、「KDDI GREEN PLAN 2017-2030」に取り組んでいます。これは温暖化対策の二酸化炭素削減や携帯電話のリサイクルなど企業本体の取り組みとともに、各支社において地域の森林や海岸などの保護活動も行うものです。

たとえば、静岡県の三保の松原松林の育成や保護や、和歌山県の熊野古道における道普請(保全活動の意味)など、全国の支社で地域に根ざした環境活動が行われています。

企業の環境活動は二酸化炭素削減や製品のリサイクル、設備の置き換えなど、社内で完結していることが多い傾向にあります。しかし先ほどのカルビーやこのKDDIのように、社員自らが汗を流し地域社会に貢献するという活動は、より積極的に企業の社会的責任を果たしているとも言えるでしょう。

ダイキンが世界で行う「"空気をはぐくむ森"プロジェクト」

空調機器メーカーのダイキン工業株式会社が行う「"空気をはぐくむ森"プロジェクト」では、世界の原生林など7つの地域で森を守る活動に取り組んでいます。ダイキンでは森を地球温暖化から防ぐ「地球のエアコン」と捉え、地元住民やNGOと協力しながら植林や保護を行い、さらに違法伐採や密猟の取締りを支援しています。

さらに、地元住民の生計を確保するため樹間で畜産や農作などをするアグロフォレストリーを支援したり、水や電気といったインフラ整備を行ったりしています。単なる自然の保護にとどまらず、森林と地域経済の共存を目指した厚みのある活動になっています。

ソニーのプラスチックゴミ削減活動

現在はイメージセンサやゲームを主力とするソニー株式会社では、「Blue Ocean Project」という海洋プラスチックゴミを削減する環境活動に取り組んでいます。これは、海の生き物に悪影響を与えているペットボトルやレジ袋など、プラスチック製のゴミを削減する以下の3つの取り組みです。

  1. パッケージに使われるプラスチック包装材を削減し、使用する際は再生プラスチックを用いる
  2. 社内のカフェや売店でプラスチックストローやカップ、レジ袋の提供を廃止
  3. 各地の社員による海岸でのゴミ拾い活動

これらは海洋汚染に配慮して使い捨てプラスチック製品を廃止するという世界的な流れに呼応しており、世界展開をするソニーらしい取り組みと言えるでしょう。

アサヒ飲料は茶粕を飼料にリサイクル

飲料メーカーのアサヒ飲料株式会社ではスチール缶を鉄筋などの建築資材へリサイクルしたり、ペットボトルから社員のユニフォームを作ったりと、リサイクルを中心に環境活動に取り組んでいます。その中で飲料メーカーらしい取り組みが、お茶飲料を製造する工程で排出される茶粕を乳牛用の飼料にするリサイクルです。

近年はバイオエタノールの需要増によって飼料の主原料であるトウモロコシが世界的に不足し、代替え飼料も少ないことが畜産業者の悩みでした。しかし、アサヒ飲料と飼料メーカーが研究を重ねた結果、茶粕を安全で低コストの飼料として提供できるようになりました。これによりアサヒ飲料は廃棄物の削減を、畜産業者は飼料のコスト削減を実現しています。

大和ハウスグループの「Daiwa Sakura Aid」

住宅建設会社の大和ハウスグループでは奈良県の吉野山において、1年を通じた桜の木の保全活動に取り組んでいます。桜の木から落ちたさくらんぼを拾い、種を採取して苗木に育ててから山へ植え替えるという、非常に手間のかかる植樹を行っています。また山へ入り枯損木を除去するといった桜の木の世代交代も補助し、吉野山にある桜の木を包括的に保全する取り組みとなっています。

さらに、吉野の和楽器奏者と一緒に全国の幼稚園や小学校へ赴き、桜の木の植樹や自然環境の大切さを伝えるサクラプロジェクトにも取り組んでいます。これは2010年からスタートし、2020年2月時点で302に上る幼稚園、小学校にその活動の輪を広げています。

今後の環境活動はCSRからサステナビリティへ

CSRは企業が、社会的責任としてどのような環境活動をしているかがテーマでしたが、時代の流れは徐々にサステナビリティをテーマとするものへ移ってきています。サステナビリティとは自然環境と社会経済、そして人間の生活が調和を取りながらそれぞれ持続し発展をしていくことです。

実際にいくつかの企業で、それまでCSRレポートという名前だった報告書がサステナビリティレポートと名前を変えています。

これまでのゴミや二酸化炭素削減といった社内で完結する環境活動から、今回ご紹介した企業のような、地域とともに環境保護へ取り組む活動へ変化していくと思われます。企業価値やその理念を知る上で、環境活動の内容にも目を向けてみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online