ビジネスパーソンの投資や副業で太陽光発電が注目されています。なぜなら太陽光発電には「固定価格買取制度」があるからです。固定価格買取制度とは、発電した電気を一定期間・一定価格で買い取ることを国が約束しているため、安定した収入が期待できます。本記事では固定価格買取制度の詳しい制度の内容とともに、太陽光発電をこれからはじめる場合どれくらいの売電価格を保証してもらえるのかについて解説します。
太陽光発電投資の売電価格は一定期間・一定価格で約束されている
固定価格買取制度(通称:FIT)とは、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)で発電した電気を一定期間・一定価格で買い取ることを国が約束するものです。発電事業を行う事業者のほか、太陽光発電に投資をするビジネスパーソンが発電した電気も電力会社を通じて一定期間・一定価格で買い取ってくれます。
固定価格買取制度は、太陽光発電に投資をする立場からすると非常に大きな魅力です。発電した電気を一定期間・一定価格で買い取ることを国が保証しているということは、言い方を変えれば「リターンを国が保証してくれている」ともいえます。不動産投資や株式、債券、金などあらゆる投資を見わたしてもリターンを国が保証してくれている投資はありません。
例えば不動産投資で考えると、毎月7万円の賃料を長期間にわたって国が保証してくれているようなものです。
固定価格買取制度は税金ではなく利用料でまかなわれている
「リターン(売電価格)を長期間、国が保証してくれている」と聞いて太陽光発電への興味を高める人も多いのではないでしょうか。太陽光発電による投資・ビジネスの生命線である固定価格買取制度についてさらに深掘りしていきましょう。国が売電価格を保証してくれるといっても売電価格の一部を税金で穴埋めしているわけではありません。
太陽光発電で発電されたエネルギーは、各電力会社によって買い取られます。このときの費用の一部を「賦課金(サーチャージ)」として私たち利用者が支払っているのです。電気料金を支払うとき賦課金を支払っていることを意識している人はあまりいないのではないでしょうか。手元に届く電気利用料金の明細を見ると請求金額の明細に「再エネ(再生可能エネルギー)賦課金」という項目があります。
この部分が賦課金です。なお再エネ賦課金は「電気の使用量×2.98 円(※)」で計算されます。(※2020年5月分~2021年4月分の賦課金。内容は毎年変わる可能性があります)なぜ賦課金のような仕組みがあるのでしょうか。これは「コストの割高な再生可能エネルギーを普及させよう」という国全体の方針があるからです。
たとえコストは割高でもエネルギー自給率の向上や温暖化ガス削減のために再生可能エネルギーの普及が必須となっています。
2020年度の太陽光の売電価格はこれくらい 買取価格はずっと維持される
具体的に「売電価格や保証される期間(調達期間)がどれくらいか」については、再生可能エネルギーの種類、参入タイミング、発電規模などによって異なります。例えば、2020年度に太陽光発電投資に参入した場合は以下のような内容になります。ちなみにビジネスパーソンが副業で行う場合に多い規模は「10kW以上50kW未満」です。
・太陽光発電の2020年度売電価格
発電区分 | 売電価格(1kW毎時あたり) | 調達期間 |
---|---|---|
10kW以上50kW未満 | 13円+税 | 20年 |
50kW以上250kW未満 | 12円+税 | 20年 |
250kW以上 | 入札制度によって決定 | 20年 |
注)2020年度の低圧(10~50kW)での売電価格13円には、発電量の30%を自家消費するという条件があります。
売電価格・調達期間は、中立的な専門委員が話し合った内容をもとに経済産業大臣が決定します。「売電価格が変わるなら安定したリターン(売電価格)が得られないのでは?」と勘違いされる人もいるかもしれません。しかし2020年度の売電価格は調達期間が20年と決められています。つまり2021年以降に売電価格が下がっても2020年度に参入した人は20年間は「13円+税」で電力会社に買い取ってもらえるということです。
「13円+税」という売電価格を聞いても一般の人はピンとこないかもしれません。しかし、最新の太陽光発電システムを導入してこれから新規参入するなら利回り10%前後で初期費用を回収できるレベルです。
売電価格が下がっているのに太陽光ビジネスが成立する謎
日本の固定価格買取制度は、2012年からはじまった制度です。当時の太陽光発電の買取価格(10kW以上)は1kWあたり40円でした。それが段階的に引き下げられていき、2020年には約3分の1の13円になっています。このように太陽光発電の買取価格が大きく引き下げられたため「以前は儲かったけれど今は厳しい」という見方もありますがこれは勘違いです。
太陽光で生み出した電力の固定買取価格が下がったのは事実ですが、技術革新によって太陽光発電の初期投資コストが下がっているため適切なスキームを組めばビジネスとして十分成り立ちます。例えば電力 1kWあたりのシステム価格は1994年ごろで200万円前後でした。しかし2000年ごろには100万円前後まで半減し近年では30~40万円台と3分の1程度で推移しています。
こういった太陽光発電を取り巻く環境を考えると「固定買取価格が下がった=太陽光発電投資が成立しない」とはいえないでしょう。しかし買取価格が高かった大盤振る舞いの時代は終わったため、安定した収益を確保するには、効率的なシステムを採用することが参入の前提になります。
固定価格での買取が変更になることはあるのか?
「一度決められた売電価格が変更になることもあるのでは?」と心配される人もいるかもしれません。しかし固定価格買取制度は国が約束を明言しているため、途中で変更になることは基本的にないと考えてよいでしょう。ただし固定価格買取制度が終わったあと「どれくらいの価格で売電できるか」については未知数です。現状では住宅用卒FITと同様に7~10円で買い取られることになるとの予想が多いようです。この部分が太陽光発電投資をする人にとっては最大のリスクになります。
しかし今後太陽光発電投資に参入する人の利回りは10%前後、またはそれ以上のケースが多いことから固定価格買取制度の期間内(20年)に初期費用をペイできる可能性が高く、限定されたリスクと考えてよいでしょう。
固定価格買取制度の利用には申請や自治体との調整が必須
ここでは、太陽光投資の人気を支える「固定価格買取制度」にフォーカスしてきました。解説してきた内容を振り返ってみましょう。固定価格買取制度は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を一定期間・一定価格で買い取ることを国が約束するもののため、これから太陽光投資をはじめる人や法人にとって大きな安心材料です。
買取価格や保証期間は今後変更になる可能性があります。しかし参入した年度の価格が保証期間内ずっと続くため心配無用です。また固定買取価格が下がっているため「太陽光は儲からない」と勘違いしている人も少なくありません。しかし技術革新によって発電コストが下がっているため、買取価格が低くなっても利回り10%前後を確保することが可能です。
ただし固定価格買取制度をはじめて利用する際は、経済産業局に申請をして認められる必要があります。申請承認にはコツがあるため、太陽光発電をはじめるときには、固定価格買取制度の申請実績が豊富なパートナーを見つけることが絶対条件です。このほか、太陽光発電設備を設置する土地は農地法や景観条例に関する条例と関わってくるため、自治体への確認が必要になります。
パートナー選びの際には、こういった面倒な手続きを完全サポートしてくれるかを必ず事前に確認しましょう。(提供:Renergy Online)