日本の太陽光発電の売電価格は2012年以降年々下がり続けていますが、利回りは一定のラインを維持しています。売電価格が低下しているにも関わらず、なぜ利回りは下がらないのでしょうか。その理由として挙げられるのは、太陽光パネルなどの部品価格の低下や技術性能の向上です。本記事では、太陽光発電の売電価格の推移やコスト低下の詳細、投資としての太陽光発電の現状や今後の展望について解説します。
太陽光発電の売電価格はスタート時に比べ下がり続けている
2012年に太陽光発電をはじめとした風力・水力などの「再生可能エネルギー」を一定期間内に一定価格で買い取る「固定価格買取制度」(FIT)が日本でスタートしました。FIT制度はドイツ・イタリア・スペインをはじめとした欧州ではすでに導入されていましたが、国内外を問わず太陽光発電の売電価格は年々下がり続けています。
経済産業省は、2019年時点で18.5%となっている国内の発電量に占める再生可能エネルギー比率を2030年までに22~24%へ引き上げることを目標としていますが、売電価格が下がり続ける中、太陽光発電への投資で十分な利益を出すことはできるのでしょうか。
まずは2019年の資源エネルギー庁の資料から、2,000kWの太陽光発電における各国の買取価格を見てみましょう。
ドイツ・イタリア・スペインといった太陽光発電の主要国をはじめ、2012年にFIT制度がスタートした日本でも買取価格は右肩下がりになっていることが分かります。上記の表は2019年までのグラフですが、2020年(2019年度認可分)の売電価格は以下の通りです。
2019年には10kW以上250kW未満は14円だったのに対し、2020年には10kW以上50kW未満は13円(ただし30%を自家消費することが条件)、50kW以上250kW未満は12円に下がり、250kW以上は買取制度を廃止し入札制度が採用されています。(すべて税抜き)一方で太陽光発電の国内買取金額・買取電力量は10kW以上、10kW未満ともに以下の通り年々増加傾向です
年度 | 買取金額 | 買取電力量(万kW毎時) | 2012年 | 75億2,000万円 | 約1万8,953 | 2013年 | 1,769億3,000万円 | 約42万5,467 | 2014年 | 5,486億円 | 約131万7,731 | 2015年 | 9,953億4,000万円 | 約245万9,108 | 2016年 | 1兆3,678億6,000万円 | 約345万4,952 | 2017年 | 1兆6,518億6,000万円 | 約426万1,477 | 2018年 | 1兆8,738億3,000万円 | 約492万7,599 | 2019年 | 2兆551億9,000万円 | 約550万198 |
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国内買取金額・買取電力量が上がったことを考慮すると「売電価格が下がった=太陽光発電の価値が下がった」というわけでなく、「太陽光発電が十分に普及した結果、売電価格が下がった」という見方ができるでしょう。売電価格が下がり続ける中で「買取金額や電力量が増加していく」ということは、太陽光発電の投資に参入する投資家は一定数いることが予想されます。
また売電価格が下がっても既存の投資家は一定の利回りを維持し続けていることを表しています。売電価格が低下する中、国内買取金額・買取電力量は上昇し利回りは堅調に推移している理由を詳しく見ていってみましょう。
太陽光発電の発電コストが年々下がっている
売電価格と共に太陽光発電の設置コストは年々下がり続けています。資源エネルギー庁が発表した太陽光発電のシステム費用平均値の推移は以下の通りです。
発電コストが下がった主な理由は「パネルなどの部品価格の低下」「発電効率の上昇」「設置費用の低下」の3つです。太陽光発電が普及したことにより、太陽光パネル部品などの価格が低下し設置費用が安くなりました。上図の「システム費用の内訳」を見るとパネル・パワーコンディショナー・架台の設置費が大半を占めています。
メーカーや容量によって金額は異なりますが、2020年度の設置費用の目安は1kWあたり約29万円です。つまり3.4kW程度の太陽光発電であれば設置費用を100万円未満に抑えられることも期待できます。なかには初期費用0円を謳っている商品もあり、発電効率の上昇も大きくコスト低下に貢献しているといえるでしょう。
太陽光発電の変換効率が高いと同じパネルの量でより多くの電力を生み出すことができます。2017年ごろの太陽光発電変換効率は15~20%程度となっており、再生可能エネルギー全体で見ると水力・風力に次いで3番目です。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「太陽光発電開発戦略」によると、2025年までに変換効率25%、2050年まで40%を目標としています。
目標達成は2020年時点ではなかなか難しい傾向ですが、国内メーカーはしのぎを削り変換効率の向上に努めています。例えば電機大手のシャープからは「世界一のモジュール変換効率40%超を目指す太陽電池を開発中」との発表がありました。
発電効率が上がるとパネルの量が少なくても十分な電力を発電できるようになります。パネルが小さくなることにより土地代や設置費用もさらに低コスト化し、太陽光発電への投資が低リスクとなっていくことが期待できるでしょう。
続いては投資としての太陽光発電における利回りについて詳しく解説していきます。
太陽光発電の投資対象としての現状を解説
太陽光発電投資において注目すべきキーワードは「利回り」「土地付き太陽光発電」「補助金制度を活用」の3つです。利回りは太陽光発電に限らず投資全般で役立つ知識となります。土地付き太陽光発電は、ローンを活用することで高いレバレッジ効果を得られることから投資家に注目を浴びているシステムです。補助金制度は上手に活用することで設置費用を抑えることができます。
利回りとは?計算方法を解説
太陽光発電に限らず「投資としてどのくらい利益が出るか」の指標の一つが「利回り」です。まずは利回りを理解し、投資全般における利益率の考え方を学びましょう。利回りとは投資した金額に対する収益の割合を示し、一般的には年単位で計算します。利回りには表面利回りと実質利回りがあり、それぞれの計算方法は以下の通りです。
- 想定年間売電収入÷初期費用×100=表面利回り
- (実質年間売電収入-年間の経費)÷初期費用×100=実質利回り
表面利回りには年間の経費が含まれていませんが、実質利回りには年間の経費(ランニングコスト)が加味されているため、より正確な数字を把握することができます。例えば年間の売電収入が30万円、初期費用が300万円の場合、表面利回りは30万円÷300万円×100=10%となります。一方、同様のケースで年間経費を15万円とした場合の実質利回りは(30万円-15万円)÷300万円×100=5%です。
一般的に業者が提示してくる利回りは表面利回りです。場合によっては初期費用となるフェンス代などを含めない計算で話が提示されているケースもあるため注意しましょう。主な経費はパワーコンディショナーの交換費用と電気代、定期点検費用・清掃費用などです。ただし修理・点検費用がメーカーの保証内容に含まれている場合は、保証期間内は無料となります。
経費の大半はパワーコンディショナーの交換費用・電気代といわれていますが、パワーコンディショナーは太陽光発電で発電した電力を家庭用に変える重要な役割を果たしている装置です。太陽光発電の「要」となる部分のため、交換費用や電気代は惜しまずに出すことをおすすめします。
太陽光発電においては利回り10%以上が一つの判断材料となるでしょう。業者に提示された表面利回りを参考に、想定される必要経費を含めた実質利回りを計算して10%以上となる場合は投資対象として検討してみてもいいかもしれません。
土地付き太陽光発電とは?
土地付き太陽光発電とは土地を所有していない投資家でも太陽光発電投資を行うことができるシステムです。土地と太陽光発電装置をセットで購入する「購入型」と借りた土地の上に太陽光発電装置を設置する「賃借型」の2つのパターンがあります。フルローンを組むことで「初期費用0円」で投資ができるシステムのため注目を集めている投資方法の一つです。
不動産投資と同じく、少ない資本で大きな利益を得るレバレッジ効果が期待できます。
固定資産税が0~2分の1に
生産性特別措置法を活用すれば、設備にかかる固定資産税を0から2分の1に軽減できます(自治体により異なる)。
こういった制度を上手に活用して、より利回りの高い経営を心掛けていきましょう。
まとめ
毎年買取価格が下がり続けている太陽光発電が利回りを維持している背景と理由は以下の通りです。
- 太陽光発電の設置コストが抑えられている
- 発電コストが下がった3つの理由は「パネルなどの部品の価格低下」「発電効率の上昇」「設置費用の低下」
また太陽光発電の投資としての現状と展望として押さえておきたいポイントは、以下の3点です。
- 利回りには表面利回りと実質利回りがあり実質利回りの計算が重要
- レバレッジ効果の高い土地付き太陽光発電が注目されている
- 自治体の補助金を利用して利回りの高い経営を
太陽光発電が十分に普及し売電価格は下落傾向にありますが、土地付き太陽光発電や設備コスト低下などの後押しもあり一定の利回りが期待できる投資として現在も注目を集めています。今回お伝えした情報を押さえたうえで、より利益を出せる太陽光発電投資を行っていきましょう。(提供:Renergy Online)