メガバンクの統合が一段落し、最近ではATMの共用化や店舗統合、口座維持費の導入検討など銀行を取り巻く環境は厳しさを増しています。メガバンクですら苦戦する中で、地方銀行が生き残るためにはどのように取り組んでいけばよいのでしょうか?そのカギは地域活性化の役割にありそうです。
地方銀行の役割とは
メガバンクと地方銀行は本来同じ土俵で戦うものではなく、それぞれに違う役割があります。まず地方銀行の役割について理解しておきましょう。
金融支援による貸出企業の労働生産性を向上させる
こちらはメガバンクと共通ですが、資金を迅速に供給することで、貸出企業の労働生産性を向上させます。融資は輸血のようなもので、企業活動には不可欠です。
メガバンクでカバーできない中小企業への資金供給
メガバンクが顧客とするのは、地元の大手企業が多く、中小(零細)企業や個人事業主の人が融資を受けようと思ってもなかなか相手にしてもらえません。
地方銀行はそういった中小企業や個人事業主をサポートします。決して経営が悪いわけではなく、決算書だけで測れない強みを持っている企業もあります。地域に根差した地方銀行のほうが助けられることが多いのです。
地域経済全体を成長させるための各種サポート
地方銀行には地方自治体の「総合戦略」のサポートと、地域密着型金融の強化という2つの使命があります。地方創生が国の重要な課題となっている中で、地方銀行は単なる金融機関ではなく、地域経済の総合的戦略の一翼を担うようになりました。
商店街の活性化や地場産業のアピールなどに地方銀行がかかわることも多く、積極的に融資を行うこともあります。
地方銀行が抱える課題
一方で地方銀行が抱える課題、問題も山積しています。過疎化が容赦なく進行しているのも事実です。
金利低下で貸出業の利益が減少
超低金利政策が続く中で、預金金利収入も雀の涙になっています。メガバンクが口座維持費を導入したりATMを統合したりしているのと同じ理由で、少額のお金を融資したり預かったりするだけでは赤字になってしまうのが現実です。
また、「出資規制」など過剰な規制も時代に合わず、手足を縛っています。
資金の運用や企業へのコンサルティングできる人材育成や体制整備が課題
金融業務が専門化し、転職市場の流動性が高まったことで、コンサルティングや資金運用等の高度専門性を備える人材が、投資顧問企業、M&A専門企業等の他業種に流出しやすくなっています。地方銀行としての人材育成方法を多様化する必要性があるだけでなく、給与待遇面も含めた総合的な体制整備に一層の努力が必要であるという課題に直面しています。
一部IT化への対応の遅れ
IT化が遅れている部分も無視できません。これは地方銀行に限らず、メガバンクや他産業にも言えることですが、人口減少社会の中で効率的に対応できていない部分があります。
オンラインバンキングのシステム整備などが遅れているところもあり、固定費が多くかかり経営を圧迫しています。最近では、休日入金ができるところのほうが重宝されるのです。
地方銀行の今後の取り組み
地方銀行は今後どのようにして生き残りを図ればよいのでしょうか?
地方創生・地域の活性化を目的とした新しい産業の育成
地方創生の機運が高まっています。コロナ禍で都会一極集中のリスクも明らかになりました。地方回帰の動きも今後予想され、これまでにない地方主体の新しい産業創生のための資金供給の重要な役割を担うはずです。
地域の企業のビジネスマッチング支援
既存の事業と新しい産業のシナジー効果によって、地域経済が活性化していきます。マッチングノウハウを地方銀行が持つことで、これまでにない斬新なコラボレーションが生まれます。
また事業承継等についても、地方銀行が積極的にかかわることで、伝統や技術を絶やさないようにできるでしょう。
地方の中小企業に対する経営コンサルティング
中小企業や個人事業主の方々は、大金を出して経営コンサルタントにアドバイスを受けることが難しい状況です。
勝ち抜くためには、融資だけではなく、経営コンサルも行う「指導金融」的な機能を持つことが重要です。商工会議所などが行っている経営相談を地方銀行も行うことで、利用者に選ばれる存在になります。
地方の時代はこれから!地方銀行は今後生き残る可能性大!
地方の過疎化、都市への人口集中は不可逆的なものかと思われましたが、コロナ禍によって集中リスク、分散メリットが注目されています。地方銀行はメガバンクにない機動性と迅速性を持ちます。
地域のニーズをいち早くくみ取り、単なる融資にとどまらないコンサルティングをして、IT化の流れに即してシステムを変えていけば、地域から愛される存在に生まれ変われます。ピンチはチャンス!今後の地方銀行に注目です。(提供:企業オーナーonline)
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