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中国のV字回復を支える3つの「追い風」

岡三証券 チーフエコノミスト(中国) / 後藤 好美
週刊金融財政事情 2020年9月14日号

 中国政府は内需主導の安定成長を目指し、各種政策を総動員して早期の景気回復を図っている。中国の実質GDP成長率はコロナ禍で2020年1~3月期に前年同期比6.8%減まで落ち込んだが、積極的な金融・財政措置や消費促進策等により、4~6月期は同3.2%増とV字回復を果たした(図表)。

 今年下期に入っても、新世代型都市整備事業の加速などを背景にインフラ建設や不動産開発の高い伸びが続いている。また、各地方政府が強化しているライブコマース(ネット通販にライブ配信の要素を付加した販売形態)等のネット販売促進策に牽引されるかたちで個人消費も回復傾向をたどっている。こうした景気動向を踏まえ、国際通貨基金(IMF)では今年の中国の経済成長率を1.0%増と予想している。

 中国政府は今年が第13次5カ年計画の最終年に当たるため、下期の経済成長率のもう一段の引き上げを目指している。そうしたなか、中国経済に吹いている三つの「追い風」が今後の景気拡大を加速させる重要なファクターとして注目される。

 一つ目は、下期に入り株式市場が大幅に上昇していることだ。景気回復が鮮明化し、ハイテク分野への国家支援も強化されるなか、IT・通信・医療関連などの株価が好調に推移している。また、最近は住宅価格の上昇傾向も強まっており、こうした資産価格の上昇で消費が一段と活発化することが期待される。

 二つ目は、自動車市場の好調が予想以上に持続していることだ。業界では下期に息切れするリスクも意識されていたが、第3四半期になっても二桁成長が続いている。公共事業の拡大に伴うトラック需要の増加、コロナ禍を受けた衛生上の対策としてのマイカー需要拡大、各地での販売促進策(新車購入補助金やナンバー規制緩和等)が好調を支えている。

 三つ目は、輸出が予想外に回復していることだ。世界的感染拡大による外需の下振れが懸念されていたが、実際は経済活動が再開されたアセアンや先進諸国で医療衛生・日用雑貨・ハイテク・素材関連といった需要が拡大している。

 これに対して、今なお前年割れが続いているのが観光・娯楽・運輸・飲食などのサービス消費と企業の設備投資である。いずれもコロナ禍の影響が長引いており、今後どこまで回復ペースを引き上げられるか、まだ不透明な状況にある。

 さらにウィズコロナ時代の到来で、製造業・非製造業とも優勝劣敗傾向が強まっている点も見逃せない。工業利益が二桁の伸びを示すなど大手企業の業績は回復しているが、中小企業の景況感は悪化傾向にあり、企業淘汰の動きも広がっている。マクロ環境の変化で生じる負のコストは金融セクターに蓄積されるため、今後は地域金融機関の経営リスクに対しても十分な注意を払う必要がある。

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