女性アナリストとして活躍中の三井智映子さん、馬渕磨理子さんのお二人が有望企業のトップに直撃取材する同連載。初回は、馬渕さんがAWSのインテグレーターとして急成長中のサーバーワークス・大石良社長に話を聞きました。前編では、同社の事業内容や収益の構造を中心にお話を聞いてきましたが、後編では成長力の裏側に迫って行きます。
1973年新潟市生まれ。1996年、東北大学経済学部を卒業し、総合商社の丸紅に入社。インターネット関連ビジネスの企画・営業に従事する。2000年に独立してサーバーワークスを設立し、代表取締役に就任。AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル。
まずはDXの効果を実感してもらうことが重要
馬渕 今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)のマーケットをどのように見通していらっしゃいますか?
大石 コロナ以前のDXには、2つの大きなトレンドがありました。1つは、人手不足。2つ目は、デジタルディスラプション(破壊)です。Uber(ウーバー)はタクシーやレンタカービジネスを破壊し、Airbnb(エアビーアンドビー)はホテルビジネスを破壊しました。また、Netflix(ネットフリックス)は映画館やビデオレンタルビジネスを破壊しましたよね。未知のプレイヤーが既存のプレイヤーのビジネスを壊すことをデジタルディスラプションと言います。これが、いつどこで起きるか予見することが難しいんです。
馬渕 今まで盤石だと思っていたプレイヤーがDXによってビジネスの基盤が大きく揺さぶられるわけですね。
大石 そうなんです。そのため、自分も「変革者」の側に回らないといけないという危機感が、日本の企業にはありました。人手不足とデジタルディスラプションの2つに後押しされる形で、コロナ以前はDXが進んでいました。
馬渕 DX化自体もコロナを通じて何か変化しているのでしょうか。
大石 DXの現場を見ていると雰囲気が変わってきたと思います。人手不足というよりはホワイトカラー(事務)の生産性の向上はもちろん、ニューノーマル(コロナ後の新常態)に向けて変わらなければならないという意識の変化を感じていますね。アフターコロナの世界では意思決定の基準が全く異なっているように見えます。
馬渕 これまで日本のDXはパフォーマンスに終始していて、形だけなどと言われていましたね。
大石 日本のDXは2018年から本格化しましたから、効果が出るのはまだ先だと思います。さまざまな意見があるでしょうが、DXがいくらポーズや形だけと言われても、DX化に向けて多くの企業が取り組んでいるのは事実です。個人的には前に進んでいることを評価したいですね。
馬渕 前に進んでいることを実感されているわけですね。
大石 DXの現場にいると分かることがあります。「流行だから」と最初はポーズとして導入したとしても、実際にDX化を進めることで、これまで3カ月かかっていたものが1日でできるようになる。そうなれば、いやでもDXの効果を実感できますよね。それを実感し、理解してもらうことが大事なんです。
クラウドはデータの銀行のようなもの
馬渕 日本では、DXのような新しい取り組みを取り入れる文化はまだ育っていないのでしょうか。