年金をきちんと受け取れるかが不安なうえに、銀行の金利も「ほとんどゼロ」という低金利の時代の昨今。老後の生活資金に危機感を覚える方も少なくないことから「投資」が注目を集めています。特に長期にわたって分散的に投資する「積立投資」は、安全性が比較的高い投資方法として注目されています。

そこで、2018年に金融庁が、投資の初心者でも安定して資産形成できるよう、積立投資の制度である「つみたてNISA」をスタートさせました。この記事では、つみたてNISAの概要、メリットやデメリットなどについてわかりやすく解説していきます。

積立NISAをわかりやすくいえば何?

NISA
(画像=yukahashimoto/stock.adobe.com)

つみたてNISAとは、金融庁が創設した、初心者でも比較的安全に資産形成するための積立投資の制度です。

投資対象商品は、元本割れリスクを分散するため複数の株式銘柄を合わせた「投資信託」のうち、金融庁が定めた基準に沿った初心者の積立投資に適したものが選ばれています。年間40万円で20年間まで、最大800万円の運用利益が非課税となるために、安定した資産形成が期待できるといわれています。

もちろん、金融庁が基準を設けているといっても、投資に「絶対」はないので、つみたてNISAの投資対象商品が「かならず値上がりする」と保証されているわけではありません。しかし、世の中に多数ある投資対象商品のなかでは、初心者が資産形成のために利用するものとして適しているといえるでしょう。

長期分散・積立投資の有効性

つみたてNISAが採用している「長期分散・積立投資」は、初心者でも行いやすく、安全性が比較的高い投資方法として知られています。この章では、分散投資、長期投資、積立投資の有効性について解説します。

分散投資の有効性

一般に投資を行う際には「分散させること」が重要です。投資の対象となる資産はどのようなものであっても、値上がりしたり値下がりしたりの値動きをします。そのため、値動きの違う複数の資産に合わせて投資をすることで、価格変動を小さくし、値下がりによるリスクを軽減できます。具体的な分散の方法は、国内外の国や地域、株式や債券など商品、円やドルなどの通貨と、積立などの時間で分ける、などの考え方があります。つみたてNISAの投資対象商品である投資信託は、運用の専門家が株式や債券、不動産など複数の銘柄や資産に分散投資し、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。

投資対象を複数にわけることによって、リスクを分散させることができるのが、分散投資の効果です。

長期投資の有効性

この分散投資を、長期にわたって行うと、さらにリスクが軽減されます。分散投資であっても、対象商品はやはり値上がりしたり値下がりしたりの値動きをします。しかし世界経済は周期的に回復しながら成長する傾向があり、将来的には対象商品の価値が増していく可能性が高いことから、長期的にみれば元本割れのリスクは低く、値上がりが見込めるといわれています。

積立投資の有効性

長期分散投資を、毎月一定額の投資信託を購入する「積立投資」で行うと、最初に一括で購入するのとくらべ、購入単価を低くおさえることができます。定額・定期での購入なら、商品価格が高いときには少なく、商品価格が安いときには多く購入することになるからです。定額の積立投資は、購入単価を低くおさえる効率的な投資が可能となります。

以上のように、長期分散・積立投資は値下がりのリスクを軽減し、効率的に投資を行う方法です。つみたてNISAは、この長期分散・積立投資に向いた制度と言えるでしょう。

つみたてNISAと一般NISAとの違い

NISAには、これまで解説してきた「つみたてNISA」のほかに「一般NISA」があります。つみたてNISAと一般NISAはどう違うのでしょうか?つみたてNISAと一般NISAの違いを表にまとめてみました。

【つみたてNISAと一般NISAの違い】

つみたてNISA一般NISA
投資の方法積立投資のみ制限なし
対象商品金融庁の基準を満たした投資信託のみ上場株式や投資信託などから幅広く選べる
非課税枠の上限年間40万円(月3.3万円)年間120万円
非課税期間20年間5年間

上の表に見る通り、つみたてNISAが積立投資に限定されているのに対し、一般NISAにはそのような制限はありません。それにともない、投資対象商品も、つみたてNISAでは積立に適したもののみであるのに対し、一般NISAは上場株式やさまざまな投資信託から広く選ぶことができます。非課税枠の上限も、一般NISAは120万円と大きくなっています。

したがって一般NISAは、つみたてNISAより多くの金額を、株式などさまざまな商品から選んで投資をしたい人に向いています。また、投資のタイミングも自分で決めることができます。ある程度投資の経験がある人は、一般NISAを選ぶのが良いでしょう。それに対して、少額から始めたい投資初心者は、つみたてNISAを選ぶのが良いといえます。

積立NISAのメリットは?

つみたてNISAのメリットを見てみましょう。

運用益が非課税になる

つみたてNISAのメリットはまず何といっても、運用の利益が非課税になることがあげられます。通常は、株式の配当益や売却益には20.315%の税金(所得税15%、復興特別所得税:所得税の2.1%、住民税5%)がかかります。しかし、つみたてNISAでは税金が無料となるため、通常は税金として支払う分も運用に回すことができます。

売買の判断が不要

投資には売買の判断が重要です。売買の判断は、投資商品の価格が低いときに買い、高いときに売ることが基本です。ただし、投資初心者は「判断に自信がない」と思う方も多いでしょう。

しかし、つみたてNISAは積立型であるため売買の判断が不要です。初心者向けの商品だといえるでしょう。

少額からでもスタートできる

少額からでもスタートできることもつみたてNISAの良さです。金融機関によっては100円から始められるところもあります。少ない額からスタートし、勝手がわかり余裕が出てきたら投資額を増やすことも可能です。このことも、初心者にとっては始めやすいポイントだといえるでしょう。

年齢の上限がない

年齢の上限がないことも、つみたてNISAのメリットだといえます。つみたてNISAと比較されることが多い個人型確定拠出年金「iDeCo」は、年齢の上限が60歳となっています。50歳なら、10年しか掛け金を支払いできません。つみたてNISAなら何歳からでも20年間の積み立てができますので、老後の生活に備えられます。

資産はいつでも引き出し可能

つみたてNISAでは、積み立てた資産をいつでも引き出すことができます。iDeCoでは、東日本大震災の被災者になるなど特殊な事情がない限り、60歳未満での資産の引き出しができません。いつでも引き出しできるつみたてNISAなら、教育資金や住宅資金、余暇資金など、積み立てした資産を自由に活用できます。

つみたてNISAのデメリットは?

以上のように、つみたてNISAには多くのメリットがあります。それでは、デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

元本割れの可能性は0ではない

つみたてNISAのデメリットとしてまずあげられるのは、元本割れの可能性が0ではないことです。元本が保証される定期預金や保険と異なり、つみたてNISAは投資です。対象商品は金融庁の基準にしたがい厳選されてはいるものの、元本を保証しているわけではありません。

個別株などでの運用はできない

つみたてNISAでは、金融庁の基準にしたがい選ばれた投資信託のみが投資対象商品です。個別株などでの運用はできません。投資に慣れている人にとっては、これを「デメリット」と感じる人もいることでしょう。

個別株の運用もできる一般NISAは、つみたてNISAと併用ができないため、非課税枠を生かして個別株の投資をしたい場合は一般NISAを選ぶことが必要です。

損益通算や損失の繰越控除ができない

つみたてNISAでは、仮に損失が出た場合でも、損失を他の口座の利益と相殺して税金の負担を軽くする「損益通算」ができません。また、つみたてNISAの損失は税務上「ないもの」とみなされるため、損失を複数年にわたって控除する「繰越控除」もできません。これらのことは、投資を活発に行う人にとってはデメリットとなるでしょう。

所得控除の対象にならない

つみたてNISAは、運用益については非課税となりますが、積み立てる金額自体は所得控除の対象にはなりません。このことは、積立金も所得控除の対象となり、節税対策としても利用できる前述のiDeCoと比較した場合には、デメリットだといえるでしょう。

非課税枠が持ち越せない

つみたてNISAでは、年間40万円の非課税枠のうち使用しない分があった場合も、それを翌年に持ち越すことはできません。経済的に余裕ができて投資金額を増やしたいと思ったときには、これがデメリットと映ることもあるでしょう。

つみたてNISAに向いている人

以上のようなメリット・デメリットがあるつみたてNISAは、どのような人に向いているでしょうか?

投資の初心者

つみたてNISAに向いているのは、まず投資の初心者です。金融庁の定めた基準にしたがい選ばれた元本割れリスクの低い投資商品に、売買の判断が必要ない積み立てで投資ができるからです。

まとまったお金がない人

つみたてNISAはまとまったお金を一度にかけるのではなく、コツコツと積み立てしていく投資です。また、100円からの少額からでもスタートできます。まとまったお金はないけれど投資をしたい人に向いています。

途中で引き出す可能性がある人

60歳までは資産を引き出せないiDeCoと異なり、つみたてNISAは、いつでも引き出すことができます。したがって、老後の生活に備えるだけでなく、教育や住宅資金を貯めたい人にも向いています。また、急病など急な資金需要にも対応できます。

年収103万円以下の人

年収103万円以下の人は、所得税がかかりません。このような場合には、つみたてNISAの利用を検討すると良いでしょう。iDeCoの所得税控除は、そもそも所得税がかからない人にはメリットがないからです。また、販売手数料が0円であるつみたてNISAは、iDeCoより手数料が安くなるケースが多いです。

50歳以上の人

50歳以上で「積み立て投資を始めたい」と考える人は、つみたてNISAを利用すると良いでしょう。iDeCoでは積み立ての上限年齢が60歳となるのに対し、つみたてNISAは年齢の上限がないために、50歳以上でも20年間積み立て投資ができるからです。

つみたてNISAを活用し将来に備えよう

金融庁が定めた基準にしたがって選ばれた元本割れリスクが少ない商品に積み立てで投資ができるつみたてNISAは、初心者にはおすすめの投資商品だといえます。銀行の金利も低いこれからの時代、資産形成には投資の活用が必要です。つみたてNISAで将来に備えましょう。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road