日本ではデジタル庁の設立など、行政のデジタル化への取り組みが急ピッチで進められ、より効率的で優れたビジネスモデルの構築に向け最新テクノロジーを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する議論が盛んに行われています。

STOnlineより
(画像=STOnlineより)

各組織における意識改革の実現に向けては、これまでの成功体験や習慣を抜本的に見直すことが重要であると言えますが、「戦略的テクノロジートレンド」を読み解き、次世代を見据えた成長戦略を構築することも今後は必要になることでしょう。

Gartner(ガートナー)は、2021年の「戦略的テクノロジートレンド」を発表しており、本稿では各テクノロジーについて解説していきます。

目次

  1. 1 Internet of Behaviors
  2. 2 Total Experience
  3. 3 Privacy-Enhancing Computation
  4. 4 Distributed Cloud
  5. 5 Anywhere Operations
  6. 6 Cybersecurity Mesh
  7. 7 Intelligent Composable Business
  8. 8 AI Engineering
  9. 9 Hyperautomation
  10. まとめ

1 Internet of Behaviors

Internet of Behavior(IoB)は、顔認証や位置情報の取得、ビックデータを活用した行動分析などの相互運用によって、よりパーソナライズされたサービス提供を可能とします。

IoTで収集したデータをもとに人々の行動をより最適化することで、IoBはバリューチェーンそのものの再設計をも担うとされています。

2025年末までには世界の約半数の人々がIoBの対象になるとガードナーは予測しており、今後は個人のデータを収集/分析し、行動を促すことに関して倫理観などの議論が行われると考えられています。

2 Total Experience

顧客満足度の向上を図るためには良質な体験価値の提供が求められています。

各企業はオンラインで収集したデータをもとに実店舗の陳列を変更するなど、積極的なデータの利活用によるサービス品質の高度化が進行。

複数のエクスペリエンスが組み合わさった「Total Experience」なサービスを提供することで、企業は差別化を図ることができ、競合他社との競争に打ち勝つためには「Total Experience」の概念が今後は重要とされています。

3 Privacy-Enhancing Computation

民間企業が個人情報を収集/利用してサービス品質の向上を図る一方、サイバー攻撃による情報漏洩事件も相次いでおり、セキュリティ対策の重要性は日に日に増しています。

EUやカリフォルニア州ではデータ保護規制の整備が行われており、今後は「Privacy-Enhancing Computation」の普及によって、危険なネット環境の分析が行われるとされています。

2025年までに「Privacy-Enhancing Computation」を大企業の半数が使用するとガードナーはしており、機密性の高いデータを処理する性能を評価し、より安全なネット環境を整備することが各企業には求められることでしょう。

4 Distributed Cloud

スタートアップ企業「Dfinity」は、分散型クラウドの開発を手掛けており、従来のクラウドサービスが構築した閉鎖的なクラウドコンピューティング市場の変革に向けて、アンドリーセン・ホロウィッツなどからの資金調達に成功しています。

分散型クラウドは、各パブリッククラウドサービスに関する運用やガバナンスの責任を「パブリッククラウドプロバイダー」が持つことで、各企業の開発環境に柔軟性とコストの削減といったメリットをもたらします。

クラウドコンピューティング市場においては、エッジ機能と分散型クラウドの連携によって、新たなユースケースの創出が見込まれており、2025年までに各クラウドサービスプラットフォームは、分散型クラウドサービスの提供を行えるようになるとガードナーは解説しています。

5 Anywhere Operations

リモートワークの普及に伴い、各従業員は出社せずとも生産性の向上を図ることが重要とされ、オンライン/オフラインを問わず労働環境を最適化することが求められています。

「Anywhere Operations」は、あらゆる場所において従業員が顧客に対して付加価値の高い体験を提供するためにさまざまな分散インフラストラクチャビジネスサービスの展開を管理するIT運用モデルのことを意味しています。

最近ではZOOMがアプリ連携システム「Zapps(ザップス)」によって25社との提携を発表するなど、「Anywhere Operations」の実現可能性が高まりを見せています。

ガートナーは2023年末までに企業の40%が「Anywhere Operations」の運用を行うとしており、安全なリモートワーク環境の整備などサービスの普及が見込まれます。

6 Cybersecurity Mesh

サイバー空間において人々が安全に情報にアクセスし、その資産に管理するためにはセキュリティ対策が重要であると言えますが、従来の物理的な取引機会が減少し、あらゆるモノやコトがデジタル化している中、今後は「Cybersecurity Mesh」の普及が見込まれています。

「Cybersecurity Meshは、クラウドのアプリケーションや制御されていないデバイスからの分散データへの安全なアクセス/利用を保証するための最も実用的なアプローチになります。」とガードナー社のバーク氏は述べており、2025年までに、約半数以上のデジタルアクセスの制御/要求を「Cybersecurity Mesh」はサポートすると予想されています。

7 Intelligent Composable Business

急激な市場環境によってビジネスモデルの再構築を各企業が余儀なくされる中、「Intelligent Composable Business」はより良い情報への迅速なアクセスを可能にし、ビジネスにおける意思決定の強化を実現します。

デジタル化によって新たなビジネスモデルや自立した運用モデルの構築の可能性が高まる中、「Intelligent Composable Business」の活用が見込まれています。

8 AI Engineering

ガードナーは、プロトタイプから本番環境に移行するAIプロジェクトは全体の53%としており、実稼働に向けたAIパイプライン作成/管理ツールの不足を指摘。

「AI Engineering」は、運用可能なAIと意思決定モデルにおけるガバナンス/ライフサイクル管理を強化し、AIを活用したシステムのパフォーマンス、スケーラビリティ、解釈可能性、信頼性向上を促進することでしょう。

9 Hyperautomation

「現在、Hyperautomationは不可避で不可逆的です。自動化できるものと自動化すべきものはすべて自動化されます」とガートナー社のブライアンバーク氏は述べています。

ブロックチェーン技術の普及とともにスマートコントラクトによる自動執行が注目を集めるなど、70%以上の営利組織が「Hyperautomation」への取り組みに着手しています。

今後も戦略的技術トレンドとして「Hyperautomation」は大きな注目を集めることが予想され、「デジタルファースト」時代においてその需要はさらに高まることが予想されます。

まとめ

データの利活用がこれまで以上に進むことが予想される2021年においては、その膨大なデータを処理するため「Hyperautomation」「Distributed Cloud」の普及が見込まれています。

「Anywhere Operations」の実現に向けては「Privacy-Enhancing Computation」「Cybersecurity Mesh」といったセキュリティ面への配慮も必要不可欠となり、Gartner(ガートナー)が発表した2021年の「戦略的テクノロジートレンド」は様々な領域で組み合わさり、より良いビジネスモデルの構築を促します。

一方、「戦略的テクノロジートレンド」を掴まず提供されるサービスは淘汰を余儀なくされるとも考えられ、常に最新のテクノロジーをキャッチアップすることで企業や組織は持続可能な成長を実現することでしょう。(提供:STOnline)