2020年2月、世界の株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大による「コロナショック」に見舞われた。年初に2万4000円台を推移していた日経平均株価は、3月19日には1万6358円まで売り叩かれた。多くの投資家が損失覚悟のロスカットを余儀なくされる中で、富裕層の約4割が果敢に買い向かったという。

コロナショック発生直後、富裕層の25%が保有資産を売却

コロナ禍における富裕層の投資行動#1
(画像=Graphs/PIXTA、ZUU online)

2020年5月中旬(14〜15日)、野村総合研究所(NRI)は全国の満20~69歳の男女1200人を対象に、インターネットでのアンケート調査を行った。調査対象世帯は5000万円以上の金融資産を保有し、株式や債券、投資信託、外貨預金などの運用を行っている個人投資家である。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を踏まえて、いわゆる富裕層の意識がどのように変わり、どういった行動を取ったのかを探るのがその狙いだ。周知の通り、政府は2020年4月7日に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を行い、同月16日には対象を全国に拡大した。

くしくも同アンケート調査の初日、39県で同宣言が解除されたものの、北海道・東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・京都・兵庫の8都道府県は継続。その後、5月21日に大阪・京都・兵庫、5月25日に東京・神奈川・埼玉・千葉・北海道が解除となったが、まだ混迷の最中での調査となったわけだ。

まず、「コロナショック」と呼ばれるようになった株価の暴落局面で、富裕層はどのような行動を取ったのだろうか? 日経平均株価は1月17日に2万4115円の年初来高値を記録したが、新型コロナの感染が発生源の中国から世界各地へと飛散していったのを受けて急落し、約2カ月後の3月19日には1万6358円の安値をつけた。

その後は反発に転じてアンケート調査の初日には一時2万円台を回復する場面もあったが、けっして強気になれる状況ではなかった。やはり、アンケートに協力した富裕層の47%が「運用資産(株式・債券・投資信託・外貨預金など)の売却を検討している」と回答しており、25%に当たる人たちは「すでに運用資産を売却した」と述べている。

一方で、4割近くの富裕層がショック安で買い増しに動く!

しかし、総悲観ムードになっていたわけではなさそうだ。驚くべきことに、「運用資産の追加投資を検討している」という富裕層は59%に達し、38%が「すでに追加投資を行った」と答えており、強気の手に打って出た人たちが4割近くを占めていた。

同調査は保有する金融資産が5000万円未満の個人投資家にも実施しており、こちらは「運用資産の追加投資を検討している」が51%で、「すでに追加投資を行った」との回答は30%だった。こうした難局に対し、保有資産が多い人たちのほうが積極的に動いたと言えそうだ。

今後の運用環境については、リーマンショック以上に悲観視

とはいえ、先行きに対してはかなり慎重な見方をしているとも言える。世界的な経済危機と言えば、すぐに連想しがちなのが2008年9月の「リーマンショック」だが、富裕層の73%が当時よりも運用環境は悪くなると考えていたのだ。だとすれば、先程のアンケート結果(4割近くが急落時に買い増し)は何を意味しているのだろうか?