土地は値付けが難しい商品のひとつであり、景気や社会情勢などの影響を受け随時変動します。値段が決まらないことには売買取引や課税が成立しないため、目的に応じて複数の価格設定がなされます。

本記事では「一物四価」と呼ばれる、土地の4つの価格について解説します。それぞれの概要や計算方法について紹介しますので、ぜひお役立てください。

土地には複数の価格がある

不動産投資
(画像=andrey-popov/stock.adobe.com)

前述のように、土地には一物四価の4種類の価値基準が向けられており、内訳は以下の通りです。

  • 公示価格
  • 相続税評価額(相続税路線価)
  • 固定資産税評価額(固定資産税路線価)
  • 実勢価格

この内「公示価格」「相続税評価額(相続税路線価)」「固定資産税評価額(固定資産税路線価)」は「公示地価」と呼ばれ、国土交通省により設定されている公的な指標です。

上記の3種類に実勢価格を加えた4つの価格が一物四価として、土地価格の評価基準として使われます。

これに加え、土地の価格の設定方法には、都道府県が独自に決める「基準地価」や、競売などで価格を設定するための「売却基準価額(不動産鑑定評価額)」などもあり、上記の4種類に加え「一物六価」と呼ばれるケースもあります。

しかし、一般的な使用頻度は決して高くないため、土地の価格に関する知識は一物四価を優先的に身につけておけば、問題ありません。

土地の値段が複数設定される理由

公示地価が設定された理由として、前述のように価格が流動的な点が挙げられます。土地は所有しているだけで、固定資産税が発生しますが、価格の設定方法が曖昧だと、納税者も困惑してしまいます。

そこで、政府や地方自治体が納税額の算出をスムーズにするために設定された指標が、前述の「公示地価」です。

4つの土地の価格のそれぞれの特徴を紹介

以下の項目より、土地に設定される4つの価格について、具体的に説明します。

それぞれの指標価格の発表タイミング、実際に自分が価値を知りたい土地につけられている値段の調べ方について紹介しますので、しっかりと身につけましょう。

公示価格の特徴

公示価格とは、国土交通省が地価公示法に基づき設定する土地価格のひとつで、その目的は以下のふたつとなります。

<公示価格の設定理由>
①一般の土地取引に指標を与え、適正な地価の形成に資するため
②公共の利益となる事業に供する土地に対する適正な補償金の額を算出するため

国土交通省では、毎年1月1日時点で、二人以上の鑑定士に都市計画区内に設置された「標準地」の価格評価を依頼し、毎年3月下旬ごろに発表します。

公示価格について知りたい場合は、政府が公開している「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」にアクセスすれば、目的の土地の値段を知ることが可能です。

国土交通省とは別に、各都道府県の行政が土地の価格を設定するケースもあります。

都道府県が土地に値段をつける場合は、「国土利用計画法」に基づき選定された「基準地」に対して、ひとり以上の不動産鑑定士を派遣し、毎年7月1日時点での値段が査定されます。

公示価格に対してこちらは「基準地価」と呼ばれ、毎年9月下旬ごろに、各都道府県知事から発表されることが通例です。

公示価格と基準価格は両者共に適正な地価形成のために用いられる、公的な土地価格の指標となります。

しかし、一定の土地を対象としてしか査定されないなめ、自分が価格を知りたい土地が標準地や基準値から離れた場所に存在する場合、あまり参考にならない指標であることは念頭に置きましょう。

相続税評価額(相続税路線価)の特徴

相続税評価額とは、国税庁が「贈与税」「相続税」などの課税額を決めるために用いる価格指標です。

公示価格と同様に毎年1月1日時点で相続税評価額の金額は設定され、発表に関しては7月初旬ごろとなります。

相続税評価額の設定は、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。

市街地などで「路線価」が存在する場合は「路線価方式」が採用され、「路線価図上の1平方メートルごとの単価×土地面積」の計算式で算出する設定方法です。

路線価が設定されていない場合は「倍率方式」が採られ、「土地の固定資産税×各税務署が設定した倍率」との計算方法を用います。

評価対象の土地が借地だった場合は、これに加え土地ごとに30〜40%で設定された「借地権割合」がかけられます。

気になる土地の相続税評価額に関して詳しく知りたい場合は、国税庁の「財産評価基準書」を参照することで可能です。

相続税評価額は公示価格の約8割の値段で設定されている場合がほとんどであるため、すでに公示価格がわかっている場合は「公示価格×0.8」の計算式で算出する方法もあります。

固定資産税評価額(固定資産税路線価)の特徴

固定資産税評価額とは、固定資産税・不動産取得税・登録免許税などの課税額を決めるために設定された土地の価格指標で、各市町村の「固定資産課税台帳」に記録されています。

固定資産税評価額は、価格が決定すると、土地の所有者に価格を記載した「固定資産税課税明細書」を送付する形で伝えられます。この明細書は所有者本人しか求めることができません。

ただし、評価対象の土地が面している道路ごとの「固定資産税路線価」が設定されている地域においては、土地の所有者でなくとも、土地に設定された固定資産税評価額を知ることが可能となります。

固定資産税評価額は、3年周期で各市町村により評価替えが行われ、評価に変更が行われる年を「基準年」と呼びます。

一度決定された固定資産税評価額が変更されるケースは稀で、地価が激しく下落するなどの特別なケースを除いて次の基準年まで同じ価格のままです。

固定資産税評価額を詳しく知りたい土地がある場合は、一般財団法人の資産評価システム研究センターが公開している「全国地価マップ」で求めることができます。

固定資産税評価額は公示価格の約7割で設定されていることが多いので、対象の土地の公示価格が判明していれば「公示価格×0.7」の計算式で割り出すこともできます。

実勢価格の特徴

ここまで紹介した公示地価が、あくまで土地の売買価格の目安や課税額の決定に用いられる指標だったのに対し、実勢価格とは実際の土地の売買の際に使用される「時価」のようなものとなります。

物の売買は、双方の合意があれば成立しますので、実勢価格を決定するための具体的な計算式などは存在しません。

そのため、売買を検討している土地の実勢価格について知りたい場合は、以下のような方法を採ることになります。

  • 周辺地域での過去の取引記録から実勢価格の相場を知る
  • 不動産広告などに記載されている販売価格を参照する
  • 周辺地域の公的なデータ(公示価格、固定資産税評価額、路線価など)から概算する

ただし、上記の方法で算出された実勢価格の相場も、あくまで「希望価格」に過ぎないことを理解し、自分が望む形での取引が行えるように意識することが大切です。

気になる土地の実勢価格について把握するために、過去の取引実績を知りたい場合は国土交通省が公開している「不動産取引価格情報検索」から参照することができます。

まとめ

以上、一物四価の4種類の土地の価格指標についてご紹介してきました。

「公示価格」「相続税評価額」「固定資産税評価額」の4種類は公示地価と呼ばれ、主に課税額の算出のために用いられますが、実勢価格は時価ですので、具体的な基準は存在しません。

公示地価は公開情報として確認できるものも多く、実勢価格についても過去の取引履歴などから大まかな数値を算出することが可能です。(提供:Dear Reicious Online


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