資産運用の世界では「ESG投資」が注目を集めています。運用会社や保険会社といった機関投資家の多くがESG投資を取り入れており、最近では個人でもESG投資に取り組む人が増加傾向です。ただしESG投資にはデメリットもあるため、始める前に特徴や考え方を理解しておきましょう。
ESG投資とは
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの要素を考慮した投資手法のことです。これまでは、投資先の企業価値を測る材料として、主に売上や利益率、キャッシュフローといった財務情報が使われてきました。ESG投資では、企業の将来性や持続可能性を重視するため、財務情報に加えて非財務情報であるESG要素も考慮して投資先を選定します。
ESG要素の具体例は、以下の通りです。
- 環境(E):温室効果ガスの排出抑制、環境汚染への配慮、再生可能エネルギーの活用
- 社会(S):女性の活躍推進、労働環境の改善、地域への貢献
- 企業統治(G):法令遵守、株主の権利の確保、適切な情報開示
ESGの課題に取り組んでいる企業は、社会的評価が高く持続的な成長・発展が期待できることから投資においても長期にわたって安定した利益が期待できます。
ESG投資が注目される理由
ESG投資が注目されるようになった理由は、主に以下2つです。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資を採用
2006年に国連は投資にESGの視点を組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱しています。責任投資原則に賛同する投資機関は増加しており、2019年3月時点で世界の2,400近い機関が署名しています。日本においては、年金積立金の運用を行う年金積立管理運用独立法人(GPIF)が2015年に責任投資原則に署名したことをきっかけにESG投資が注目されるようになりました。
年金積立管理運用独立法人では、運用を委託する金融機関にESGを考慮して投資するように求めています。また株式を対象に5つの「ESG指数」を採用しており、それぞれの指数に連動するパッシブ運用を行っているのが特徴です。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)
国連の持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年の国連サミットで採択された持続可能な世界を目指すための国際目標です。貧困撲滅や格差の是正、気候変動対策など2030年までに17の目標達成を目指しています。地球温暖化の影響で異常気象や熱中症患者が増加しており、日常生活に影響が出ていることもあってSDGsへの関心は日々高まっている傾向です。
またSDGsでは、民間企業を課題解決の主体と位置づけていることからSDGsの目標を経営戦略に取り込み事業機会として活かす企業が増えています。ESGの課題とSDGsの目標は、持続可能な社会を目指す点で一致しているのが特徴です。SDGsの目標達成に取り組んでいる企業は、ESG要素を満たしているため、企業価値を高く評価されやすくなります。
ESG投資のメリット
ESG投資には、主に以下の2つのメリットがあります。
長期投資に適している
ESG投資では、業績やキャッシュフローなどの財務情報だけでなく環境問題や社会問題への取り組みといった非財務情報も考慮して投資先を選定します。環境問題や社会問題は地球に住んでいる人たちの生活や経済活動に影響を与えるため、企業の取り組みの重要性はさらに高まっていくでしょう。SDGsやESGへの取り組みは、短期的にコストがかさみ企業業績としてはマイナスになるかもしれません。
しかし長期的には投資リターンを改善する効果が期待できます。またESG要素に配慮した企業には機関投資家から資金が集まるため、企業価値の向上にもつながるでしょう。長期投資で資産形成に取り組む場合、ESG投資の手法を取り入れることで運用成績が向上する可能性があります。
投資を通して社会貢献できる
ESG投資は、投資を通して社会貢献できるのもメリットです。「温室効果ガスの排出抑制」「再生可能エネルギーの活用」「労働環境の改善」などに取り組む企業に投資すれば間接的に社会貢献ができます。環境問題や社会問題に対して個人でできることには限界があります。しかしESGの課題に取り組む企業に投資すればより大きな社会貢献が可能となるでしょう。
ESG投資のデメリット
ESG投資のデメリットは、主に以下の2つです。
投資先を選ぶのが難しい
ESG投資では、財務情報だけでなくESG要素も考慮して投資先を分析・選定しなくてはなりません。ESG投資の投資手法には、一定の基準を満たさない企業を排除する「ネガティブ・スクリーニング」、財務情報とESG要素をあわせて分析する「ESGインテグレーション」などがあります。しかしいずれも個人が実践するには難しいものです。
業績やキャッシュフローといった財務情報を分析するだけでも時間や手間がかかります。さらにESG要素も考慮して投資先を選定するには専門知識も必要になるため、個人投資家にとってはハードルが高いかもしれません。
利益を得られるとは限らない
ESGの課題に取り組む企業は長期的には企業価値が向上しやすいと考えられていますが、企業の株価はESG要素だけで決まるわけではありません。たとえESGに配慮した経営を行っていても業績が伴わなければ株価の上昇は期待できないでしょう。またESGへの取り組みはコストがかかるため、企業利益にマイナスの影響を与える可能性もあります。
ESG投資は長期投資に適していますが必ず利益を得られるわけではないため、注意が必要です。
ESG投資ができる主な金融商品
ESG投資は、投資先企業の選定に時間や手間がかかりますが個人でも簡単に始められる金融商品もあります。ここでは、ESG投資ができる金融商品を2つ紹介します。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所に上場している投資信託のことです。特定の指数に連動する投資成果を目指して運用されます。ESG指数に連動するETFに投資すれば個人でも少額からESG投資を始められます。主なESG指数は、以下の通りです。
- FTSE Blossom Japan Index<1654>
- MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数<1653>
- MSCI日本株女性活躍指数<1652>
- S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数<2567>
- 日経ESG-REIT指数<2566>
これらの指数に連動するETFを購入すれば個人でも簡単にESG投資を始められます。
投資信託
ESG関連の投資信託を通してESG投資を行うことも可能です。最近では、ESG要素を考慮して投資先を選定している投資信託が増えています。投資信託なら積立投資にも対応しているため、忙しい人でも続けやすいでしょう。ただしESG関連の投資信託は、購入時手数料や信託報酬が比較的高いファンドもあります。投資信託でESG投資を始める場合は、なるべく運用コストが低いファンドを選ぶことが大切です。
ESG投資と太陽光発電投資との関係性
ここまでは、株式投資を前提にESG投資について説明してきました。しかしESG投資は株式だけでなく債券や不動産にも取り入れられています。また環境にやさしい再生可能エネルギーを活用していることから、太陽光発電投資もESG投資の一種といえるでしょう。太陽光発電投資には「固定価格買取制度(FIT)」があり国が固定価格での電気の買取を保証しています。
そのため長期にわたって安定した収益が期待できます。個人がESG投資を始めるなら太陽光発電投資も選択肢の一つです。
社会貢献ができるESG投資を始めてみよう
多くの機関投資家がESG投資を採用していることから個人投資家の間でもESG投資が注目されています。ESG投資は長期投資との相性が良く、投資を通して社会貢献できるのが魅力です。投資先企業の選定には時間と手間がかかりますが、比較的取り組みやすい商品もあります。ESG投資に興味があるならETFや投資信託、太陽光発電投資などを検討してみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online)