日本では2011年前後から本格的なサービスが始まったクラウドファンディング(以下CF)。現在では、資金調達のひとつの手段として社会的にもある程度認知が進んでいる。中でも、不特定多数からの寄付を求める“寄付型”や、小売りの販売チャンネルのひとつとしての活用が増えている“購入型”、小口の資金を集めて資金を融資する“融資型”(ソーシャルレンディング)に関しては耳にしたことがある読者も多いだろう。ここでは、CFのひとつである“株式型”にスポットを当て、株式型CFを手掛けるイークラウド代表取締役の波多江直彦さんと、ユニコーン代表取締役CEO(最高経営責任者)の安田次郎さんのお二人に話を聞いた。はたして、株式型CFの魅力や将来性とは。

※この記事は10月12日に行われたZUU onlineのウェビナーを基に再構成されたものです。

波多江直彦
波多江直彦 Naohiko Hatae
イークラウド代表取締役
慶應義塾大学法学部卒業後、サイバーエージェントに入社。広告代理部門、スマホメディア、オークション事業の立ち上げ、子会社役員などを経てサイバーエージェント・ベンチャーズで投資事業に従事。その後、XTech VenturesでパートナーとしてVR(仮想現実)、SaaS、モビリティ、HRTech、シェアリングエコノミー、サブスクリプションサービスなどへの投資実行を担当する。2018年7月にイークラウドを創業し、代表取締役に就任。
安田次郎
安田次郎 Jiro Yasuda
ユニコーン代表取締役CEO
国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、本邦企業の資本政策・資金調達やIR戦略の立案、執行に従事。その後、クレディ・スイス証券、リーマン・ブラザーズ証券の株式資本市場部に籍を置き、国内外における株式及び株式関連の資金調達(IPO含む)において数多くの主幹事案件を担当。野村證券移籍後は、第三者割当型の資金調達や、事業会社が保有する株式の売却や自社株買いなどの案件について、デリバティブ(金融派生商品)を活用したスキームなどのソリューション提供業務を手掛ける。2019年2月より現職。ユニコーンでは9号案件が実施中。

クラウドファンディング市場は今後も拡大が継続。日本市場のポテンシャルは高い!

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(画像=PIXTA、ZUU online)

――クラウドファンディングは寄付型、購入型を中心に、資金調達のひとつとして普及が進んでいます。ただ、いわゆるCF会社を通して未公開株への投資を行う「株式型CF」に関しては、日本国内ではまだ実績も少ないのが現状ですよね。今回、お二人には株式型CFの現状や魅力、銘柄選別のポイントなどについてお話をうかがいたいと思います。まず、株式型CFの現状についてご説明いただけますか。

安田 株式型CFは2015年5月の金融商品取引法の改正によって解禁されたばかりで、実際の案件がスタートしたのは2017年5月からです。成立件数では現時点までで百数十件、資金調達額の累計も35億円を突破するなど、右肩上がりで推移しています。とはいえまだまだ黎明期であり、資金を調達する事業会社サイド、出資する投資家サイドともに、株式型CFの存在そのものが広く知られていないのが現状でしょう。

一方で海外に目を向けると、株式型CFの普及が進んでいる英国では、2013年前後から投資額が増加しはじめていて、2015年、2016年にはVC(ベンチャーキャピタル)の投資額と比肩するほど活用が進んでいます。

――日本でも購入型、寄付型のCFは普及が進んでいますが、今後もCF市場は拡大するのでしょうか。

安田 そうですね。現在はやはり購入型、寄付型が先行して認知度を高めていますが、今後は株式型CFを含め、CF全体が普及していくでしょう。CFは、頑張っている企業や個人を応援したいという気持ちが出資に結び付きますが、現在の若い人たちは、SNSなどを通じて他人の考えに触れることで、自分のお金の使い道を真剣に考える機会が増えていると思います。株式型CFはSNSなどとの相互性も高く、現在のニーズにマッチしているのではないでしょうか。

波多江 英国では、株式型CF市場が2017年に500億円程度まで拡大していますが、日本ではまだ数十億円程度の小さい市場でしかありません。この背景には、日本人と欧米人の株式投資に対する考え方の違いがあるのかもしれません。しかし、日本は約1800兆円の個人金融資産を抱えているわけですから、日本のCF市場がかなり大きなポテンシャルを持っているのは間違いないでしょう。

現在のコロナ禍が収束した後、おそらく株式型CF市場には“頑張りたい企業”や“頑張ろうとする企業”が、我々の株式型CFのプラットフォームを活用するケースが増えることが予想されます。その中で、投資家の方々には自分が応援したい企業を見つけ、その企業の初期の応援者になっていただきたいですね。それに合わせて、先ほどの個人金融資産の1%でもベンチャー市場に向かうような流れを我々の手で作り出すことができれば、市場が活性化します。そうなれば、日本自体もどんどん元気を取り戻せると考えています。

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