11月
(画像=株主手帳)

 6月24日に東証マザーズに上場を果たしたコパ・コーポレーション(7689)。

同社は調理器具や清掃用具など生活用品の卸業を展開する傍ら、小売店・テレビ・インターネット通販サイトなどを通じて実演販売し、営業支援も行っている。独自で育成した販売のプロ「実演販売士」は現在34人。巧みな話術で、商品の良さをアピールし商品を売る。口上に惹かれるリピーターも多いという。

吉村 泰助社長
Profile◉よしむら・たいすけ
19 6 8年8月18日、新潟県新発田市出身。國學院大学文学部日本文学科卒業。1990年より、日本シールの専属宣伝販売士として活動。1996年吉村泰助事務所設立を経て、1998年に有限会社コパ・コーポレーション設立。2006年に同社を株式会社に登記変更。

包丁から消臭剤まで300品目超
巧みな話術で購入意欲そそる

 同社が扱う生活用品は、包丁やフライパンといった調理用品から、タオル、クッション、消臭剤に至るまで300品目以上。そのほとんどがメーカーとの独占契約で、近年は自社開発品も増加している。販売経路は、ホームセンターや日用品店などに商品を卸し、自社で卸先の販売支援するリアル店舗と、テレビの通販番組のB to Bルート、ウェブのショッピングモール内EC通販のBtoCルートだ。

 2020年3月期の販路別売上高の割合は、TV通販が44.7%と最も多く、リアル店舗に卸すベンダー販売が25.7%、インターネット通販23.5%、実演販売士を販売会場や小売店へ派遣するセールスプロモーションが3.3%、昨年オープンした「デモカウ」と呼ばれる自社店舗が2.8%。2020年3月期の売上高は前期比59.9%増の56億500万円で、2021年3月期は14.5%増の64億1900万円を見込んでいる。

 同社最大の特徴であり、強みとなっているのは、「実演販売士」による商品販売だ。店舗・TV通販・ネットの3チャンネルでそれぞれ巧みな話術で、商品の使い方を紹介し消費者の購買意欲を刺激、販売につなげていく。吉村泰助社長はこの販売手法を「3Dマーケティング戦略」と名付けている。

「現代の消費行動はTVで見て、ネットで調べて、リアル店舗で納得して購入する、という流れです。それぞれに実演販売士が魅力的に紹介することができれば、どこのルートでも購入してもらえる」

 実演販売士による営業手法は珍しくない。ガマの油、バナナのたたき売りは昔から知られ、フーテンの寅さんは映画で活躍していた。吉村社長は、大学時代に演劇活動の傍ら、そのスキルを活かし実演販売のアルバイトを行っていた。卒業後、日用品等の販売会社で、専属実演販売士として数々のヒット商品を手掛け、メディアにも出演し、名を挙げた。

 しかし、当時の実演販売士は「宣伝屋」と呼ばれ、「いかがわしい」とか、「怪しい」というイメージがついていた。「我々のイメージを上げれば、新しいビジネスが生まれると考え、1998年に演劇仲間を募って同社を設立しました」(吉村社長)

次のステップは売上高100億円
直営店「デモカウ」多店舗化

 同社は、次のステップとして売上高100億円、一部上場を目標にしている。吉村社長が大きなカギを握ると考えているのが、自社リアル店舗「デモカウ」と自社ECサイトだ。2018年4月、東京スカイツリー内にオープンした同店では、毎日実際に販売士が商品を披露する。普段テレビやネットでしか見ることのできない有名販売士が登場することもあり、「人だかりができるほど盛況です」(同氏)。2020年3月期には店舗売上で1億5000万円を計上した。

 店舗開設の一月後、同名の自社ECサイトもオープン。ここではこれまで開発してきた商品300点が販売され、1点1点について実演販売士が、おすすめのポイントや使い方について解説する。

 この2つの販路は連携する仕組みだ。「例えば、ネットで見つけて商品を実際に見て納得してから買いたいという顧客のために、注文後店舗で受け取れるサービスにしたり、実演販売を見た顧客が後日ECサイトを経由して買うこともあります」(同氏)

自前の「タレント」育成が急務
消費者との会話が商品開発のヒント

 成長戦略を描くにあたりもう一つ外せないのが「実演販売士」の育成だ。

 現在所属する実演販売士は34人。元俳優もいれば芸人もいる。うち20人が社員だ。吉

村社長は2012年10月に「売の極意塾」を主宰し、実演販売士を採用、育成してきた。

 実演販売士を増やすことと質を高めることは今後のヒット商品開発に直結する。

「実際、これまで販売してきた商品の多くは、彼らが消費者から得たアイデアが元になっているのです。つまり、実演販売士と顧客の接点が多いほど、アイデアにあふれた新商品がたくさん生まれてくることになる」(同氏)

 直近のヒット商品である「毛足が12ミリ パルスイクロス」、「スーパーストーンバリア フライパン」、「カビ取り剤 スパイダージェル」、「水100%クリーナー すいすい水」などは全て、実演の中でヒントを得た商品だ。

「新商品は何もない所から生み出すわけではなく、『ここが足りない』、「ここがアピールに弱い」といった実演現場中でヒントが生まれてきます。ですから、これまで埋もれてきた既存商品をリバイバルヒットさせることもできるのです」(同氏)

 吉村社長が考える今後の実演販売士のあり方は、発信した情報を、消費者に拡散してもらえる影響力が大きい存在にすること。既に特定の実演販売士への「指名買い」という現象も発生しており、「より多くの実演販売士にファンをつけていきたいと考えている」(同氏)

 現在、コロナ禍によって小売店での実演販売がしにくい状況になっている。このため同社では、TV通販やECをさらに推進していく考えだ。

「ソーシャルディスタンス関係なく、実演販売を見てもらえる機会を増やしていく」(同氏)という。

(提供=青潮出版株式会社