経済
(画像=PIXTA)

超長期物を中心に、緩やかなスティープ化が継続する

BofA証券 チーフ金利ストラテジスト  / 大﨑 秀一
週刊金融財政事情 2020年11月23日号

 今年4月以降、10年以下の日本国債利回りは安定して推移したものの、超長期部分はスティープ化している(図表)。今後もその傾向は続き、10年国債利回りはレンジを5~10bpに切り上げつつも、イールドカーブ・コントロール(YCC)の下で安定的に推移し、緩やかにスティープ化することをメインシナリオとしている。

 弊社は、日本銀行が黒田東彦総裁の任期中(2023年4月まで)は、YCCの金利ターゲットを現在の水準に維持するとみている。米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)による緩和政策の見通しを踏まえると、その水準はさらに長期化する可能性もある。しかし、今年7月に国債が大幅に増発された際に、日銀は超長期部分の買い入れ増額を見送るなど、カーブの過度なフラット化を避ける姿勢を一貫して見せている。金融緩和策を維持しつつも、ある程度の金利上昇やカーブのスティープ化を許容することになりそうだ。10月の金融政策決定会合における主な意見においても、イールドカーブの超長期部分が緩やかにスティープ化することに好意的な指摘が見られる。

 来年度の日本国債発行は、今年度の第3次補正予算と一体で15カ月予算となる可能性が高く、その規模についてはまだ不確定要素が大きい。今年度が短期債を中心とした大幅増発となっているため、その償還および借換債の発行が増えそうだ。財務省理財局による国債発行額の推計によると、21年度の新規国債発行額は20年度から60兆円ほど減って37.2兆円となる一方、借換債発行額は30兆円ほど増えて136.5兆円となっている。カレンダーベースの発行額は現在の発行額から減らすことも可能だろう。しかし、その場合でも、急速な償還年限短期化に伴って、借り換えが困難になるリスクや借り換えに伴う金利変動リスクの増加を抑制するため、発行減額は短期債が中心となろう。

 来年の海外金利、特に米金利は上昇し、イールドカーブはスティープ化するものと弊社は見込んでいる。米10年国債利回りは20年末の時点で0.9%、21年第3四半期には1.35%へ上昇する見通しだ。イールドカーブの変動要因は大規模な財政支援よりも新型コロナウイルスの封じ込めとワクチン開発の進展に左右される面が大きくなってきた。世界各国で新型コロナの感染者数が記録的な水準に達する一方、米ファイザーと独ビオンテックが開発中のワクチンの治験で、90%超のコロナ感染を予防できたとする初期データも出ている。感染者数やワクチン実用化に至る時期を巡って、ボラティリティー要因となろう。

きんざいOnline
(画像=きんざいOnline)

(提供:きんざいOnlineより)