旅行業界の国際的なイベントである「フォーカスライト・カンファレンス2020」が開催され、スタートアップピッチコンテスト「Summit」では空港全体の監視や分析サービスを実現するコンピュータービジョン開発企業「Trueface」が、最優秀賞と視聴者からの最多投票を獲得。
日本でも、ANAがタッチレスセンサーを搭載した自動手荷物預機(ANA Baggage Drop)の実証実験を行うなど、旅行業界においてもデジタル化が進行しています。
非接触型サービス開発への取り組みも行われており、LCCエアアジアとVision-Boxが協業し、空港におけるデジタル認証システム「F.A.C.E.S (Fast Airport Clearance Experience System)」の導入を目指しています。
本稿では、「テンセント(Tencent)」と「ShareRing」の事例を参考に旅行業界のデジタル化について解説していきます。
テンセント(Tencent)ブロックチェーン技術を活用したデジタルIDでアジアの旅行業界を支援へ
アジアの旅行業界の活性化に向けて「テンセント(Tencent)」はブロックチェーン技術を活用した旅行アプリの開発を手がける「ShareRing」との協業を発表。
今回の協業は、ShareRingが提供する自己主権型IDアプリの技術改善を図り、旅行時の予約(ホテル、レンタカー、フライト、ツアーパッケージ)、保険契約の効率的な手続きを実現することを目的としています。
両社は、テンセントクラウドが提供するOCR(画像認識)を「ShareRing」のブロックチェーン技術と組み合わせることでデータ入力の効率化を図り、顔認証を活用したeKYC/データ管理サービスの強化も予定しています。
また、国境を越えた人々の往来を再開を促し、経済的打撃からの回復を支援することを目指し、まずは東南アジアを対象にアップデートされた自己主権型IDアプリサービスの提供を開始するとしています。
アジアの旅行業界は、2020年4~9月期にて日本航空、ANAホールディングスの減収率が70%を超え、エアアジア・ジャパンの破産などの事例が確認されており、観光産業の再生に向けた取り組みが最重要課題と考えられます。
海外旅行におけるデジタルIDアプリの必要性が高まることが想定され、ドキュメントのデジタルな管理方法、顔認証による非接触型のサービスとの組み合わせによる利便性の高いシステム設計/開発が見込まれます。
テンセント(Tencent)について
外出制限によるゲーム・エンターテインメント事業の成長を背景にテンセントの2020年7-9月(第3四半期)の売上高は、1,254億5,000万元、純利益は385億元を記録。
収益性の高い事業が好調であったことやビデオ会議ツール「騰訊会議」のユーザー数増加など、テンセントは市場でも高い評価を受けています。
最近ではバーチャルコンサート制作/配信企業「Wave」への出資を子会社であるテンセント・ミュージックが行っており、さらなる事業拡大が見込まれます。
テンセント・ミュージックは、テンセントとSpotifyの合弁会社であり、音楽配信サービス「QQ音楽」を提供しています。
「Wave」のバーチャルコンサート制作/配信技術を活用することで、音楽業界のデジタル化を促進し、「QQ音楽」の新たな収益性の確保が見込まれます。
テンセントは旅行のみならず、音楽業界においても最新技術を活用した新たなビジネスモデルを構築し、その先進的な取り組みには今後も大きな注目が集まることでしょう。
ShareRingについて
ShareRingは、海外の旅行業者向けオンライン予約サービス「楽天トラベルエクスチェンジ(Rakuten Travel Xchange)」とも協業を実現しており、日本企業との結びつきも深めています。
パスポートをはじめとして旅行に関する様々な書類や情報をShareRingのセルフソブリンIDアプリには格納できることから旅行の利便性向上に向けて利活用が見込まれています。
「ShareRingプラットフォームは分散型台帳テクノロジーに基づいて構築されています。つまり、すべてのトランザクションが安全であり、契約が行われる前にユーザーのIDが確認および承認されます。これにより、より迅速で安全な予約プロセスも可能になります。ShareRingは、シームレスな国境を越えた支払いとともに事業者とユーザーの両方にコスト削減によるサービスの低価格化を提供します。」
ShareRingのCEOであるTim Bosはこのように述べており、セルフソブリンIDアプリの普及によってより安全な旅行業界の設計/構築が期待されます。(提供:STOnline)