11月に入り、日本株の上昇が加速し、日経平均株価は11/17(火)におよそ29年半ぶりに26,000円の大台を回復しました。しかし、その後は上昇一服となっています。 世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、日本でも東京をはじめ、第3波とされる感染拡大が深刻な状況になってきたためです。
ここにきて、新型コロナウイルス向けのワクチンで高い有効性を示す治験データの発表が続き、新型コロナウイルス克服に向けた展望が明るさを増してきたことは確かです。一方で、WHO(世界保健機関)が指摘しているように、我々がその恩恵を受けるのは年明け以降とみられ、ワクチンだけですべてを解決することは困難なようです。
東京株式市場では、「ワクチンの治験で高い有効性が確認された」ニュースをきっかけに“ウィズ・コロナ”で買われた銘柄の多くで、利益確定売りが増えてきましたが、事情は再び変わってきたようです。今後、株式市場ではどのような銘柄が注目されるのでしょうか。
“いま”こうした状況だからこそ、注目したい銘柄をチェックしてみましょう。
新型コロナウイルスの感染が「第3波」の拡大期に
11月に入り、日本株の上昇が加速し、日経平均株価は11/17(火)におよそ29年半ぶりに26,000円の大台を回復しました。過剰流動性相場が続く中、米大統領選挙が終了し、リスクマネーが株式市場に戻ってきたことが要因とみられます。米国のファイザー社やモデルナ社が新型コロナウイルス向けのワクチン開発で高い有効性を示したことを発表し、新型コロナウイルスの収束に向け、明るい兆しが出たこともプラス材料になりました。
しかし、その後は上昇一服となっています。世界的に新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、日本でも東京をはじめ、第3波とされる感染拡大が深刻な状況になってきたためです。
図1は新型コロナウイルスについて、世界の新規感染者の状況をまとめたものです。
11/18(水)現在の累計感染者数は5,562万人、死亡者数は133万人となっています。1日当たりの新規感染者数は10月には40万人弱でしたが、11月には56万人弱と感染拡大が加速しています。世界の感染者の2割を抱える米国では、1日当たりの新規感染者数は10月には約6万人でしたが、11月には13万人弱と増加。欧州では、フランスの累計感染者数が9月末の59万人から11/18(水)には約209万人と急増しています。図2は、新型コロナウイルスについて、世界の死亡者数をまとめたものですが、やはり足元で急増に転じています。
図3は日本の新型コロナウイルスの新規感染者数・回復者数・死亡者数をみたものです。世界的な傾向と同様、新規感染者数は急増しており、11/18(水)には1日で2,200人超と過去最高を記録し、第3波到来ともいえる状況になっています。
ただ、依然死亡者数の推移は低水準にとどまっています。回復者数も着実に増え、11/18(水)には1,000人を超しており、我が国では治療のノウハウが蓄積され、新型コロナウイルス感染後も比較的短期間で退院可能な傾向が強いといえます。観光や外食、イベント業等を支援すべく、Go To政策が動いており、当面は感染拡大が見込まれますが、回復者数増加も続き、死亡者の増加が抑えられれば、投資家の懸念がさらに深まることも考えにくいといえます。
図1 世界の新型コロナウイルスの新規感染者数(日次・7日移動)
図2 世界の新型コロナウイルスの死亡者数(日次・7日移動)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「欧州他」は欧州に中東・アフリカも含めた地域を含む概念となっています。
図3 日本の新型コロナウイルスの新規感染者数・回復者数・死亡者数(日次・7日移動)
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。日次データの7日移動をグラフ化。
「第3波」拡大で再注目の主要テーマ株は?
株式市場では、「ワクチンの治験で高い有効性が確認された」ニュースをきっかけに“ウィズ・コロナ”で買われた銘柄の多くで、利益確定売りが増えました。言い換えれば、株式市場のテーマは一気に“ウィズ・コロナ”から“アフター・コロナ”へとシフトしていく過程にあったと考えられます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が再加速したことで、事情は再び変わり、“ウィズ・コロナ”で買われた銘柄に見直し買いが入ると予想されます。
投資テーマでみると、「遠隔医療」や「DX」、「巣ごもり」、「ゲーム」、「テレワーク」などに関連する銘柄が再び買い直されるチャンスがありそうです。もっとも、「アフター・コロナ」へのシフトを目指す流れも始まったことを考えると、選別が必要になると考えられます。新型コロナウイルスの感染拡大はキッカケに過ぎず、今後も成長が見込まれる銘柄を選別すべきであると、「日本株投資戦略」では考えています。
そこで、新型コロナウイルス再拡大で再注目すべき銘柄は、以下の条件を満たす銘柄としました。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)「遠隔医療」や「DX」、「巣ごもり」、「ゲーム」、「テレワーク」などの投資テーマに関連する銘柄であること。
(3)直近四半期(9月決算銘柄の場合は「前期」)までの累計営業利益が10%超の営業増益となっていること。
(4)2名以上のアナリストが業績予想を公表している銘柄であること。
(5)今後3期の営業利益について、連続増益が見込まれる銘柄であること。
上記のすべての条件を満たす銘柄について、3年後の営業利益が前期より何%成長すると予想されているのか、その数字が高い順に並べたものが下表となります。
ここで、(2)については、当社のテーマ株投資を容易にするツールである「テーマキラー!」で紹介されている銘柄をベースに考えました。今後3期の予想営業利益は、Bloombergが集計した市場コンセンサスを分析対象にしています。印象としては「遠隔医療」に属する銘柄について、足元の業績が良く、将来も増益が見込まれる銘柄が多かったように思われます。
表 新型コロナウイルスの感染拡大第3波で再注目の主要テーマ株は!?
取引 / チャート / ポートフォリオ / コード / 銘柄(決算月日) / 株価 11/19(木) / 営業増益率(前年同期比)前期・直前Q / 営業増益率(前年同期比)3年増益率
<4480> / メドレー(12) / 5,560 / +26.4% / +1632.6%
<6095> / メドピア(9) / 5,440 / +97.9% / +186.6%
<3902> / メディカル・データ・ビジョン(12) / 2,503 / +69.4% / +150.7%
<2413> / エムスリー / 8,139 / +44.6% / +140.1%
<3635> / コーエーテクモホールディングス / 5,290 / +145.6% / +125.4%
<9684> / スクウェア・エニックス・ホールディングス / 5,490 / +98.9% / +71.1%
<9697> / カプコン / 5,340 / +27.7% / +69.5%
<3774> / インターネットイニシアティブ / 4,925 / +56.3% / +60.2%
<3762> / テクマトリックス / 2,078 / +25.2% / +55.2%
<1973> / NECネッツエスアイ / 1,831 / +54.1% / +42.4%
<8086> / ニプロ / 1,149 / +13.8% / +29.1%
※Bloombergデータおよび会社公表データを用いてSBI証券が作成。銘柄名横のカッコ付数字は決算月で、カッコがない銘柄は3月決算銘柄。「前期・直前Q」は、9月決算銘柄の場合は前期、他の銘柄は直前四半期までの累計。3年増益率は、再来期の営業利益を前期の営業利益で割って算出した数字。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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