日経平均株価は上昇基調が続き、11/25(水)には一時、29年7ヵ月ぶりの高値水準を回復しました。過剰流動性が強まったことで、息の長い相場上昇につながっていますが、米大統領選挙も終わったことや、新型コロナウイルス向けワクチンの実現性が高まり、投資家のリスク許容度が回復したことで、相場上昇が加速する形になっています。
そうした中、東京株式市場では、日経平均株価が近い将来3万円台を回復するとの見方が台頭しています。24,000円台前半の強い上値抵抗ラインを突破することができたので、相場上昇力の強さが感じられるところです。今回の「日本株投資戦略」では、日経平均株価が3万円を目指すというシナリオの中、好パフォーマンスが期待できる銘柄について考えてみました。
“日経平均3万円”は可能なのか
日経平均株価の上昇基調が続いています。11/25(水)には一時、26,706円まで上昇しましたが、これは1991/4/19(金)の取引時間中に付けた高値26,753円以来29年7ヵ月ぶりの高値水準となります。
世界的に金融緩和が長期化し、過剰流動性が強まったことで、息の長い株式相場の上昇につながっているとみられます。欧米を中心に新型コロナウイルスの感染が再び拡大しましたが、それによってむしろ、金融緩和状態の長期化を期待する見方が強まっています。そうした中、2020年最大のイベントとみられていた米大統領選挙も終わる一方、新型コロナウイルス向けワクチンの実現性が高まり、投資家のリスク許容度が回復したことで、相場上昇が加速する形になっています。
東京株式市場では、日経平均株価が近い将来3万円台を回復するとの見方が台頭しています。今後日経平均株価の予想EPS(1株利益)は新型コロナウイルス不況からの回復に加え、自社株買いなどの増加等により、戻りを試すことになると考えられるためです。来期から再来期にかけ、仮に予想EPSが1,500円まで回復し、予想PER20倍の評価ならば、日経平均株価は3万円(1,500円×20倍)と計算されますが、決して“夢物語”ではないように思われます。
2018年以降、日経平均株価は24,000円台前半の強い上値抵抗ラインを3度トライし、上抜くことができませんでしたが、今回はそこを突破することができたので、相場上昇力の強さが感じられます。経済を覆う危機で金融緩和が長期化せざるを得ない状況では、株式相場に「バブル」が発生しやすくなりますが、今回もそのパターンになっている可能性があります。
ただ、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)が上昇する環境だからといって、個人投資家の多くが利益を確保できるとは限りません。とくに、平成バブル相場の後期は、日経平均株価は上昇しているのに、投資家の多くは儲かっていないという現象が生じていました。相場上昇のけん引役に偏りが強まった時、同様の現象が生じる可能性もあります。
図 日経平均株価(週足)~24,000円台前半の強い上値抵抗線を突破
割安で品薄な日経平均採用銘柄は?
日経平均株価の上昇が期待される局面において、投資家としては出遅れ銘柄を物色したくなるものです。株式相場においては一時的に生じた偏りは中長期的には修正され、平準化しやすいという考え方があり、出遅れ株の物色は確かにそれに沿った発想ではあります。現在、グロース株の上昇は行き過ぎであり、今後はバリュー株の出遅れが修正されると予想する投資家が増えていますが、そうした考え方の一例と言えます。
そこで、今後日経平均株価が3万円まで上昇すると予想したとき、好パフォーマンスを期待できる10銘柄の抽出を試みてみました。抽出条件は以下の通りです。
(1)日経平均採用銘柄であること。
(2)PBR0.8倍未満の銘柄であること。
(3)来期予想PER(市場予想ベース)が18倍未満の銘柄であること。
(4)前期、今期市場予想、来期市場予想とも営業黒字の銘柄でないこと。
(5)継続企業の前提に疑義が生じた銘柄でないこと。
(6)広義の金融に属していない銘柄であること。
(7)来期予想営業利益(同上)が増益見通しの銘柄であること。
これらの条件を満たす銘柄について、浮動株数の少ない順に10銘柄を選んだのが下表の銘柄です。
掲載された銘柄はPERおよびPBRの観点から、割安感が強く、出遅れ感の強い銘柄(バリュー株)と言えそうです。ただし、日経平均採用銘柄であり、日経平均株価が先物主導にせよ、上昇する時はその追い風を受けやすくなると考えられます。
なお、平成バブルの後期には、日経平均採用の“品薄銘柄”のパフォーマンスが上昇しました。“品薄銘柄”とは、浮動株数の少ない銘柄であり、ここでは発行済み株数に浮動株比率を乗じて求めています。もし、今後過剰流動性相場が成熟すると考えるならば、平成バブルと似たような現象が起こるかもしれません。
ファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)、東京エレク(8035)、ソニー(6758)など、日経平均株価の上昇に追従するならば、日経平均高寄与度銘柄を買うのが「正攻法」と言えるかもしれません。ただ、これらの銘柄の多くはすでに大きく上昇しています。下表のような銘柄と循環物色が進んだ方が、日経平均株価の上昇は持続しやすいのではないでしょうか。
表 好業績予想で割安感も強い日経平均採用“品薄”銘柄
取引 / チャート / ポートフォリオ / コード / 銘柄(日経平均採用銘柄) / 株価11/25(水) / PBR前期実績 / 来期市場予想PER / 来期市場予想営業増益率 / 浮動株数(百万株)
<5232> / 住友大阪セメント / 3,295 / 0.64 / 11.2 / +11.8% / 34.80
<5703> / 日本軽金属ホールディングス / 1,808 / 0.58 / 8.7 / +24.5% / 58.52
<5801> / 古河電気工業 / 2,550 / 0.76 / 13.4 / +290.3% / 65.60
<5214> / 日本電気硝子 / 2,251 / 0.46 / 16.8 / +22.3% / 83.63
<3101> / 東洋紡 / 1,353 / 0.65 / 11.0 / +16.4% / 83.89
<4208> / 宇部興産 / 1,827 / 0.55 / 8.9 / +39.2% / 99.61
<3863> / 日本製紙 / 1,185 / 0.37 / 10.9 / +45.3% / 105.91
<6302> / 住友重機械工業 / 2,359 / 0.61 / 10.6 / +25.9% / 114.57
<5711> / 三菱マテリアル / 2,053 / 0.53 / 12.1 / +1339.0% / 116.30>
<5233> / 太平洋セメント / 2,971 / 0.78 / 7.3 / +8.8% / 117.81
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。PERおよび営業増益率は来期市場予想ベース。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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