2020年6月に金融庁が公表したレポートで「老後2,000万円不足問題」が指摘されました。公的年金だけで老後の生活をまかなうのは難しいと、すでに多くの人が認識しているのではないでしょうか。そこで注目されているのが、公的年金とは別に老後の収入源を確保する「自分年金」です。「自分年金」には、実にさまざまな種類があります。

  • 単純に貯金をして老後に取り崩すもの
  • 個人年金として積み立てたお金を老後に受け取るもの
  • 養老保険など貯蓄型のものなど

ニーズが高い分野ということもあって、その種類も多彩です。今回は、その中でもJ-REITを活用して「自分年金」を構築し、老後に毎月不労所得を確保する方法を解説します。公的資金だけでは足りないと感じている人にとって毎月安定的に一定金額を受け取れる仕組みは大きな安心につながるでしょう。

しかも貯蓄を基本とした他の方法と異なり、「自分年金」は元本を減らさずに収入の継続が期待できるため、長寿にも強いメリットがあります。本記事では、以下のようなリアルな疑問に答えつつ解説を進めます。

  • そのための方法がなぜJ-REITなのか?
  • そもそもJ-REITとはどんな金融商品なのか?
  • この方法を実践すると老後になってどれくらいのお金を受け取ることができるのか?

J-REITの分配金利回りは平均で4%超え

J-REIT
(画像=ranta-images/stock.adobe.com)

J-REITとは、上場不動産投資信託のことです。運用資産を不動産に限定した投資信託のことをREITといいますが、その中でも東証に上場している銘柄群のことを「J-REIT」といいます。2020年11月11日現在、J-REIT全体の平均分配金利回りは約4.1%です。銀行の定期預金金利が限りなくゼロに近い時代において年利約4%は実に魅力的な利回りといえるでしょう。

年度予想分配金利回り
2015年3.42%
2016年3.52%
2017年4.19%
2018年4.18%
2019年3.60%

出典:一般社団法人不動産証券化協会「ARES J-REIT Databook」

しかもJ-REITの運用資産は優良不動産であることが多く、株式のように突然暴落したり紙切れ同然になってしまったりといったリスクが低いため、ミドルリスクの金融商品として人気を集めています。J-REITが持つ実力を味方につけるのが、これから解説する「自分年金」づくりの基本的な考え方です。

個別のJ-REIT銘柄は勢力図が変化しやすい

J-REITには、運用している不動産の種類によって以下のようなカテゴリーがあります。

  • 住居型
  • 物流施設型
  • 商業施設型
  • ホテル型
  • ヘルスケア型など

それぞれの名称からどんな不動産で運用しているかが想像しやすいのではないでしょうか。またカテゴリーの中から複数のカテゴリーにまたがって不動産を運用している銘柄も少なくありません。またJ-REITは、個別銘柄として東証に上場していますが、不動産業界もカテゴリーによって浮沈があります。例えばインバウンド景気で盛り上がっていたころはホテル型や商業施設型は好調でした。

しかしコロナ禍によって「巣ごもり需要」が増大し、これらのカテゴリーに取って代わるように通販を支える物流施設型が好調となっています。個別銘柄への投資だと経済の情勢や景気変動の影響を受けやすいため、長期的かつ安定的な資産形成には不向きです。そこで提案したいのがJ-REIT全体への投資すること。

J-REIT全体への投資であれば、個別銘柄の浮沈による影響を受けにくくリスクの分散を図りながら魅力的な利回りを獲得することができます。J-REIT全体へ投資するといっても全銘柄を購入する必要はありません。なぜならJ-REITが上場している東証には、J-REIT全体の値動きを示す「東証REIT指数」という指数(インデックス)があるからです。

東証REIT指数連動型ETFは3つある

東証REIT指数は、市場全体の騰落を示す指数で東証REIT指数そのものに投資することができます。例えば東証REIT指数連動型のETFです。ETFとは上場投資信託のことで東証に上場しています。つまり「東証に上場しているJ-REIT全体の値動きに投資ができるETFがあるのです。東証REIT指数と連動するETFには、以下の3つの銘柄があります。

証券コード銘柄名
2556One ETF 東証REIT指数
1343NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信
1488ダイワ上場投信―東証REIT指数

3つのETFは、すべて東証REIT指数に連動しているため売買単位に多少の違いはあっても同じ値動きをしています。しかしなぜ同じ指数に連動するETFが3つもあるのでしょうか。これがJ-REITによる「自分年金」づくりの大きなポイントとなります。3本のETFは、いずれも決算が行われ分配金が支払われるのは年4回のため、3ヵ月に1回です。

3ヵ月に1回では毎月の副収入にはなりませんが、3つのETFはそれぞれ決算月がずれています。そのためすべてのEFTを保有することにより、毎月いずれかのETFから分配金が支払われる仕組みを作ることが可能です。なお先述した3つのETFの決算月をまとめたのが以下の表です。

One ETF 東証REIT指数<2556>NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信<1343>ダイワ上場投信―東証REIT指数<1488>
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月

※〇が決算月

東証REIT指数連動型ETFの積立シミュレーション

2020年11月現在の東証REIT指数から算出すると、3つのETFを同時に積立購入していくには毎月5万円程度の資金が必要です。仮に5万円と仮定して3つのETFに均等積立を20年間行い、それが同時期の配当利回りである4%と仮定してシミュレーションをしてみると以下のような結果になりました。

参照:金融庁「資産運用シミュレーション」
参照:金融庁「資産運用シミュレーション」

仮に40歳から始めて60歳時には総額約1,833万円となりました。この資産規模で4%の分配金収入が毎月入ってくるとすると、「自分年金」は約6万1,000円です。貯蓄を取り崩すことなく毎月これだけの収入が見込めると、公的年金だけの生活とはまるで違うものになるのではないでしょうか。もちろんこの期間を長くしたり毎月の購入額を多くしたりすることで、資産はより大きく成長する可能性が高くなります。

その分だけ老後に受け取れる毎月の分配金額は増加が見込めるのです。もちろん積み立てをしている期間の途中から増額することも有効。それぞれの年齢時の経済状況によって積立額を調節できることも「自分年金」ならではの自由度です。

積立投資は早く始めるほど効果が大きくなる

先ほどのシミュレーションでは、時間が経つほど運用収益の黄色部分が大きくなっています。これは投資の「複利効果」によるものです。複利効果とは、投資によって得られた運用益をさらに再投資することで加速度的に資産が増えていく仕組みのこと。20年という長期間を活用した積立投資では、かなりの威力を発揮していることが理解できるでしょう。

このように時間を味方につけるためには、少しでも早い時期から投資を始めることが大切です。若いうちは、積立運用に回せるお金がそれほどたくさん捻出できないかもしれません。しかしたとえ少額であっても早くから始めて複利効果を味方につけることで老後に受け取れる「自分年金」の金額がより魅力的なものになります。

老後資金づくりのために収益性や成長性の観点から海外への投資を検討することも方法の一つです。しかし海外への投資はカントリーリスクや為替リスクがあったり税金面で不利になったりする(外国と日本で2度課税される)デメリットがあります。二重課税については、確定申告によって控除することで還付を受けることが可能です。

しかし所得額によっては還付も少なくなってしまいます。こうした事情も踏まえて国内での資産運用に魅力を感じる人にとってはJ-REITが有望な選択肢になるでしょう。J-REITは東証に上場しているため、証券会社の口座を開設すれば誰でも簡単に売買できることも魅力の一つです。(提供:Incomepress


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