「不動産業界のITパートナー」を掲げ、不動産業界に特化したITソリューションを提供しているのが日本情報クリエイトだ。賃貸物件の管理業務支援サービス「賃貸革命」を主力とし、仲介業務支援サービス、業者間物件流通サービスと顧客支援の幅を広げてきた。
20年7月に東証マザーズに上場。創業以来26期連続増収を達成し堅調に業績を拡大している。
賃貸物件を一元管理する
「賃貸革命」主力に成長
日本情報クリエイトは1994年8月、「進化する情報技術を生かして付加価値の高い新たなプロダクトを創り社会に貢献したい」との思いで米津健一社長が設立。不動産業界に特化し、業務のフローに合わせた様々なITソリューションをワンストップで提供している。
同社の20年6月期の業績は、売上高が23億7500万円(前期比10・6%増)。セグメントは管理ソリューション、仲介ソリューションの2つに大別され、それぞれの売上は管理ソリューションが15億6301万円、仲介ソリューションが7億8925万円とほぼ2対1の比率を占めている。
創業間もなく開発したのが管理ソリューションの主力商品である賃貸物件総合管理システム「賃貸革命」だ。管理業務の入退去管理から家賃管理までを一元管理できるシステムであり、約4500社が導入している。
現在、新規で同製品のパッケージソフトを導入する場合の初期費用は平均で約120万円、月々の保守料が1万3000円ほど。一方、最近はコロナ禍でテレワークのニーズが発生しており、自宅などからアクセスできるクラウドサービスの引き合いが増えているという。
「導入企業は300〜1000戸の賃貸物件を扱っている中堅の会社が中心です。新規導入のときは300〜500戸ぐらいの規模の会社が多いのですが、賃貸革命を導入した結果、管理戸数を増やしているお客さんが多いです。今後は賃貸革命クラウドへの移行を推進し、導入社数を1万社に増やしていきます」(米津健一社長)
無償サービスで顧客数増やし
有償顧客を拡大
売上の約三分の一を占める仲介ソリューションは、「Web Manager Pro(ウェブマネージャープロ)」と「不動産BB」を主力とする。
ウェブマネージャープロは、集客に特化した不動産ホームページ制作ツールであり、
「賃貸革命」と連動しているので更新の手間が省け業務の効率化を図ることができる。スーモやアットホームなど大手不動産情報サイトとの連動も可能だ。
一方の不動産BBは、物件情報の他社への共有や仕入れを支援するサービス。FAXや電話でのやり取りが主流だった物件情報の共有をインターネット上で行うことができ、元付会社、客付会社の双方が効率的に仲介を行える業者間物件流通のプラットフォームとなっている。
「大手と違い中小業者はIT化が遅れており、物件情報がデジタル化されていなかったので空室確認の業務に非常に手間がかかっていました。物件情報が一元化された不動産BBを使うことにより、大幅な効率化が可能となりました」(同氏)
同社はこの不動産BBを無償で提供して顧客を増やし、その先の有償サービスの顧客数を拡大するフリーミアムモデルに注力している。
「例えば仲介会社さんがウェブマネージャーを導入すると、不動産BBに登録されている物件情報を2次利用して自社ホームページを作ることができます。現在は戦略的に無償にしており会員数1万5000社を3万社に増やしたいと考えています」(同氏)
コロナ禍でも接客業務が可能な
「非対面仲介サービス」を発売
同社の20 年6月期の売上におけるストック比率は61%であり、低い解約率によりストック売上が積み上がり安定的に増益している。今後は賃貸革命クラウドなどの既存商品をより拡大させるとともに、新商品の拡大にも注力していく。
その1つが今年5月にリリースした「非対面仲介サービス」だ。これは不動産会社の集客、内見、入居申込、重要事項説明(重説)業務を一気通貫で提供するオンライン接客システム。コロナ禍の影響で非対面での接客業務のニーズが高まっており、早い段階で約200社の申し込みがあったという。
また、現在は賃貸物件をメインに21万戸以上を掲載している不動産BBにおいて、今後は売買物件も扱える仕組みを構築する計画だ。
「首都圏においては賃貸専業が多くありますが、地方都市では賃貸と売買を兼務している業者が多いので、ここ2〜3年は売買を深掘りしていきたい。また、いずれは不動産BBを有償化して売上を増やしたいと考えています」(同氏)
国はデジタル庁を創設するなど、官民のデジタル化を強力に推し進めていく方向にあり、同社においても不動産テック企業として不動産業界のIT化を支援する様々なサービスを展開していく。
「当社は全国に11拠点を展開し、地域に密着した安心のサポート体制を敷いています。宅建業者数は全国12万社前後で安定し、毎年5000社以上が開業していて新陳代謝で常に新しい顧客が生まれています。国による電子化推進を追い風に、不動産業界のデジタル化に貢献し成長を続けていきたいと考えています」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)