これまで20年近く、マーサージャパン、カルチュア・コンビニエンス・クラブなど様々な会社でリーダーとして組織を率いて成果を上げた経験を持つ柴田励司氏。

これまでの経験から、リーダーは独りよがりに仕事を進めるのではなく、自分の理想とするリーダー像を設定し、それを演じることで客観的に周囲の期待に応えながら仕事ができるという。うまく「演じる」コツをくわしくうかがった。(取材・構成:塚田有香)

※本稿は、雑誌『THE21』2020年5月号より一部抜粋・編集したものです。

リーダーの最も大事な仕事は"演技"

リーダーの在り方,柴田励司
(画像=THE21オンライン)

――目まぐるしく変化するビジネス環境や組織で働く人材の多様化によって、管理職の仕事は複雑化し、量も増える一方。しかも働き方改革による労働時間削減があらゆる企業で徹底される今、自分はどの仕事に集中すればいいか迷っているミドルリーダーも多いだろう。

38歳で外資系コンサルティング会社の日本法人社長になり、以降も複数の会社でリーダーを務めてきた柴田励司氏は、多忙な中でどのように自分がやるべき仕事を絞り込んできたのか。

「リーダーの方たちに、『まずはこれをやりなさい』と一つだけアドバイスするとしたら、それは"演技"です。リーダーの最も重要な仕事は、期待に応えること。

だから相手が自分に期待している姿をイメージして、それを演じなさいという意味です。優れたリーダーはスピーチが上手ですが、それはまさに聴衆が期待していることを、期待する姿で話すからです。

自分で脚本を書き、自分の言葉で演じる。つまり、リーダーとして自己演出すべきだということです」

――ただし、それを実践するには、「相手が自分に何を期待しているか」を理解する必要がある。では、どうやって相手の期待を把握すればいいのか。

「やるべきことは二つあります。一つは、相手が言っていることをきちんと理解する。コミュニケーションにおける基本中の基本ですが、部下や顧客と会話する場合、相手が必ずしも自分の言いたいことをわかりやすく話してくれるとは限りません。

話す側は自分のロジックや表現を使って話すので、相手が言っていることを自分が本当に理解できているのか、確認することが大事です。このとき役立つのが、『パラフレーズ』のスキルです。

相手が言ったことをわかりやすく要約し、『つまりこういうことですね』と確認する。優れたリーダーは、必ずパラフレーズによるチェックを行なっています。

しかし残念ながら、相手の言いたいことを確認せず、いきなり自分の考えを話し出すリーダーも少なくありません。もし相手が伝えたいことを誤解しても、部下から『それは違います』とは言いにくいので、相手は黙って聞くしかない。

その結果、上司と意思の疎通は図れず、次にどうすべきかのネクストステップも見えない。これでは部下が困ってしまいます」