今年も残すところあとわずかとなりました。
日銀金融政策決定会合が12/18(金)に終わり、世界の主要中央銀行が金融政策を決める年内の会合はすべて終了しました。主な経済指標の発表もおおむね終了し、株式市場では投資家がきたる2021年(令和3年)に思いをはせる年末を迎えることになります。
投資家としてはやはり、2021年の株式市場では、どのような投資テーマや銘柄が活躍するのか、自分なりの予想を固めておきたいところです。そこで!日本株投資戦略では2回にわたり、2021年の株式市場で“主役”をはれそうな銘柄や投資テーマについて考えていきたいと思います。
第1回は「環境」銘柄です。
16日(水)の新興株ウィークリーでは、ジャスダック市場やマザーズ市場に上場する中小型株をご紹介しましたが、今回は東証1部に上場する主力銘柄から幅広く、やや網羅的にご紹介していきます。
世界で活躍期待の「環境」関連銘柄
株式市場では、投資家の「環境」に対する関心が高まっています。
環境保全に関連するキーワード(投資テーマ)としては、「水素」、「電気自動車」、「再生可能エネルギー」などが挙げられますが、これらはSBI証券WEBサイト上の投資ツール“テーマキラー!”において、アクセスランキングのトップ3を独占(12/18現在)しています。こうした背景からも、年明け以降も環境関連銘柄は株式市場で高い関心を集め続けそうです。
環境保全はそもそも、株式市場のテーマ以前に、地球に住む我々人類の大きな課題と言えます。
現状のまま、温室効果ガスの排出を続けていくと、平均気温の上昇や海面の上昇など、人類の生存そのものを脅かされることになります。
こうした温室効果ガス排出削減の世界的な取り組みとして2017/8に合意・発効となったのが「パリ協定」です。昨年11月に、世界最大の経済大国である米国が離脱を表明したことから、世界の国々にとって大きな打撃となり、株式市場において「環境」が話題になる機会は大きく減少していました。
しかし、2020/11/3(火)投票の米国大統領選挙の結果、環境保全を重視する民主党のバイデン氏が当選確実となり、再び米国が環境保全や温室効果ガス削減の枠組みに戻ることが期待されています。このため、株式市場でも、「環境」が再びクローズアップされるようになりました。日本でも、菅首相が、本年10/26(月)開会の国会の所信表明演説で、国内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロとする方針(カーボンニュートラル宣言)を打ち出し、「環境」は、重要な国策としてクローズアップされるようになりました。
株式市場には「国策に売りなし」という相場格言がありますが、ここにきて、「水素」、「電気自動車」、「再生可能エネルギー」など、環境関連銘柄は、株式市場の“主役”になりつつあります。
図表では、今後も活躍が期待される環境関連銘柄を幅広く抽出し、以下の抽出条件すべて満たす銘柄をコード番号順に並べました。
(1)東証上場銘柄であること。
(2)当社Webサイトの「テーマキラー!」で「水素」、「電気自動車」、「再生可能エネルギー」などに関連する銘柄として紹介されている銘柄であること。
(3)来期営業増益が予想(市場予想)される銘柄であること。
(4)来期予想PERが100倍を超えていないこと。
(5)「継続企業の前提」に疑義が生じている銘柄でないこと。
図表 世界で活躍期待の「環境」銘柄
コード / 銘柄 / 株価(12/17) / 52週高値株価 / 52週高値年月日 / 来期予想PER(倍)
<1407> / ウエストホールディングス / 4,585 / 4,665 / 2020/12/17 / 24.1
<1963> / 日揮ホールディングス / 966 / 1,822 / 2019/12/18 / 12.9
<3407> / 旭化成 / 1,022.5 / 1,285 / 2019/12/18 / 13.2
<4088> / エア・ウォーター / 1,811 / 1,881 / 2020/12/14 / 12.5
<4091> > / 日本酸素ホールディングス / 1,939 / 2,506 / 2020/01/20 / 15.5
<4970> / 東洋合成工業 / 11,740 / 12,150 / 2020/12/09 / 47.1
<5333> / 日本碍子 / 1,614 / 2,015 / 2020/02/25 / 12.5
<5801> / 古河電気工業 / 2,901 / 3,025 / 2019/12/18 / 15.4
<5802> / 住友電気工業 / 1,292.5 / 1,689.5 / 2019/12/20 / 11.2
<5805> / 昭和電線ホールディングス / 1,748 / 1,898 / 2020/12/10 / 8.3
<6005> / 三浦工業 / 5,590 / 5,750 / 2020/12/09 / 44.9
<6255> / エヌ・ピー・シー / 841 / 1,029 / 2020/12/04 / 23.1
<6367> / ダイキン工業 / 22,335 / 24,440 / 2020/12/02 / 32.0
<6501> / 日立製作所 / 4,190 / 4,693 / 2019/12/20 / 9.7
<6503> / 三菱電機 / 1,553.5 / 1,658 / 2020/02/06 / 16.2
<6504> / 富士電機 / 3,645 / 3,810 / 2020/11/30 / 14.8
<6506> / 安川電機 / 4,795 / 5,230 / 2020/12/02 / 43.8
<6508> / 明電舎 / 2,193 / 2,434 / 2019/12/27 / 14.0
<6594> / 日本電産 / 12,885 / 13,585 / 2020/11/30 / 51.5
<6644> / 大崎電気工業 / 579 / 734 / 2019/12/18 / 18.0
<6752> / パナソニック / 1,181.5 / 1,264 / 2020/02/06 / 15.3
<6902> / デンソー / 5,873 / 5,926 / 2020/12/17 / 16.6
<6963> / ローム / 10,010 / 10,090 / 2020/12/10 / 29.7
<6966> / 三井ハイテック / 3,915 / 4,095 / 2020/12/16 / 42.0
<6981> / 村田製作所 / 8,978 / 9,293 / 2020/11/30 / 25.0
<6996> / ニチコン / 1,310 / 1,407 / 2020/12/17 / 21.4
<7011> / 三菱重工業 / 3,003 / 4,346 / 2019/12/27 / 13.9
<7012> / 川崎重工業 / 2,010 / 2,547 / 2019/12/18 / 54.1
<7203> / トヨタ自動車 / 8,000 / 8,045 / 2020/12/17 / 11.4
<7259> / アイシン精機 / 3,125 / 4,220 / 2019/12/18 / 8.5
<7267> / 本田技研工業 / 3,024 / 3,224 / 2019/12/18 / 8.7
<8088> / 岩谷産業 / 6,160 / 6,480 / 2020/12/14 / 16.2
<9517> / イーレックス / 1,958 / 1,999 / 2020/11/30 / 17.2
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。コード番号順に掲載。来期予想PERは市場コンセンサス。
「環境」関連銘柄の投資ポイントは?
●EV(電気自動車)関連する銘柄
今後、既存の自動車メーカーの電動化をリードしていくことが期待されるトヨタ自動車(7203)が挙げられます。同社は電動化を前倒しする方針で、12/9(水)には、全面改良版の燃料電池車(FCV)である「ミライ」の発売に踏み切るなど、話題を集めました。今年度上半期は、新型コロナウイルス流行拡大の影響で減益決算を余儀なくされましたが、当初予想からは増額修正され、足元も中国販売が高水準で推移しているようです。
なお、政府はすべての新車を2030年に「電動化」する方針を示しており、「電動化」の中に同社が得意とするハイブリッド車(HV)も含まれている点が同社の収益予想にポジティブに働くと考えられます。
また、米電気自動車最大手のテスラ社にリチウムイオン電池を供給しているのがパナソニック(6752)で、足元ではリチウムイオン電池の増産や次世代電池の開発など、前向きな動きが目立っているように見受けられます。
この他、EV(電気自動車)関連株としては、自動車全体の電子制御で強みをもつデンソー(6902)、車載用モーターコア(モーターを構成するローターやステーターの鉄心部分)でシェア7割の三井ハイテック(6966)、自動車向けに幅広く半導体を供給するローム(6963)、高級EVで積層セラミックスの搭載増加が期待される村田製作所(6981)なども活躍が期待されます。
●水素や燃料電池に関連する銘柄
液化水素で国内唯一のメーカーであり、水素ステーションに展開する岩谷産業(8088)が中核的な存在になっており、川崎重工業(7012)は国内メーカーで初の水素液化機を販売し、水素サプライチェーンの早期構築に取り組んでいます。この他、エア・ウォーター(4088)は水素ガス発生装置に展開しています。
●再生エネルギーに関連する銘柄
太陽光発電など再生可能エネルギー事業に展開するウエストホールディングス(1407)や、古河電気工業(5801)、住友電気工業(5802)、昭和電線ホールディングス(5805)などの取り組みも温暖化防止策として期待されます。
また、モーターによる電力消費の削減に貢献が期待される日本電産(6594)や安川電機(6506)も環境関連銘柄と考えられます。
蓄電池は太陽光、風力など再生可能エネルギーやEVの普及などには必須の技術になるとみられ、日本碍子(5333)やパナソニック、住友電気工業の活躍などが期待されます。なお、多くの機器のエネルギー効率を向上させるパワーエテクトロニクス分野では安川電機や三菱電機(6503)の活躍が有望とみられます。
この他、住宅やビル、地域内でネットワークを駆使して計測・管理を行う省エネ技術により二酸化炭素の排出量を10~15%削減することが可能とされるダイキン工業(6367)や、大崎電気工業(6644)の活躍領域が広がりそうです。なお、ダイキン工業はパナソニック、三菱電機などと共に、ヒートポンプの分野でも活躍が見込まれます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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