一般的にSDGsへ取り組むのは大手企業が多いイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、政府主催のジャパンSDGsアワードではバラエティに飛んだ団体や企業が表彰されています。その具体的な取り組み内容を見ると、SDGsの達成は身近なことがわかります。

ジャパンSDGsアワードとは

ESG
(画像=裕之 宮原/stock.adobe.com)

ジャパンSDGsアワードとは日本政府が主催する、持続可能な開発目標に向けた団体や企業の取り組みを促進するための表彰制度です。2017年から開催され、初回はおよそ280もの団体や企業が参加しました。

SDGsの目標と日本の取り組み

SDGsとは誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会実現のため、2015年の国連サミットで採択された17の国際的な貢献目標です。貧困や教育やジェンダー、資源など様々な項目で問題解決へ向けた取り組みが、2030年までの達成を目指し各国で進められています。

これに対し日本政府は内閣総理大臣を本部長としたSDGs推進本部を設置しました。ここでは有識者との意見交換や全閣僚を構成員とした実際の行動を促す取り組みをしており、その一環がジャパンSDGsアワードです。

これまでに受賞した団体や企業

SDGsへの取り組みが最も高く評価された場合に贈られる推進本部長賞を、これまでに受賞した団体や企業を紹介します。

2019年 魚町商店街振興組合

商店街としてSDGsを宣言し、さまざまなイベントやサービスを実施してきたのが福岡県北九州市の魚町商店街振興組合です。ホームレスの自立支援や障害者の自立生活支援などの社会的包括を重視した活動や、飲食店と協力して食品ロス(食べ残しや製造過程での食品廃棄)の削減、規格外野菜の販売などを通じた地産地消を推進しています。

また商店街のビルを改装し若手起業家やワーキングマザーのための仕事環境を整備したり、太陽光パネルで商店街の電力を作り出したりしています。他にも公共交通機関での来店を促し、商店街内の遊休不動産を再生するなど、その幅広い活動も大きな特徴になっています。

1つの団体や企業ではなく商店街という複数の事業主が協力し合って多方面に活動を広げている姿勢は、地域がSDGsへ取り組むお手本と言って良いでしょう。

2018年 株式会社日本フードエコロジーセンター

株式会社日本フードエコロジーセンターが評価された取り組みは、食品ロスに新たな価値をという企業理念に基づいた、食品廃棄物を活用したリキッド発酵飼料の開発です。食品ロスの削減はもちろん、廃棄物処理業と飼料製造業を併せ持つというビジネスモデルを構築した点も、大きく評価されました。

さらに同社の飼料を使用して飼育された豚肉をブランド化し、養豚業者や製造業者、小売業者、外食業者と一体となった、食品廃棄からスタートする持続性のある循環モデルを築いています。また輸入飼料に依存する日本の畜産業において、自給率向上と穀物相場に影響を受けにくい畜産経営という面で食料の安全保障にも貢献しています。

2017年 北海道下川町

北海道の下川町は人口が3,400人ほどの高齢化率約39%の小規模過疎地域であり、少子高齢化が顕著な課題先進地域です。下川町では次の3つを町の自治基本条例に据え、持続可能な地域社会実現を目指しています。

①森林総合産業の構築(経済)
②地域エネルギー自給と低炭素化(環境)
③超高齢化対応社会の創造(社会)

具体的には森林経営を中心に適性な木材や木製品を生産、供給するとともに、未利用森林資源の再生可能エネルギー活用も行っています。木質バイオマスによる熱供給施設を建設しバイオマスボイラーを導入して、燃料費を削減できた効果額を基金として積立てています。

町の基盤である森林を最大限に生かし、コンパクトタウン化の推進と持続可能な社会の実現に取り組んでいるのです。

こうした取り組みを発信することで、下川町には多様な人々が移住するようになりました。町内の高齢化集落再生事業として取り組まれている「一の橋バイオビレッジ」では、2009年に51.6%だった高齢化率が新たな人の移住で2016年には27.6%と大幅に減少しました。

下川町のこれらの取り組みは、日本各地で問題化している小規模自治体の少子高齢化問題に対しての、一つの模範解答と言えるでしょう。

ジャパンSDGsアワードの評価基準

ジャパンSDGsアワードではSDGsの実施指針における次の5つの原則と照らし合わせ、各団体や企業の取り組みを評価するとしています。

・普遍性=先進国を含め、すべての国が行動
・包摂性=人間の安全保障の理念を反映し誰一人残さない
・参画型=すべてのステークホルダーが役割を
・統合性=社会・経済・環境に統合的に取り組む
・透明性=定期的にフォローアップ

国連サミットの原則であるため世界各国に向けた言葉になっていますが、ジャパンSDGsアワードではそれを国内の活動にも当てはめているのです。

例えば北海道下川町の場合は、
普遍性:小規模自治体や国内における地方創生モデルになり得る
包摂性:既住民のみならず、女性を始め多様な人々が移住
などと5つの原則それぞれに照らし合わせて、取り組みや成果を評価しています。

SDGsの取り組みというと代表的な17の原則のうちどれに取り組んでいるかに目が行きがちですが、日本政府はその根本理念の理解が大切であると訴えているようです。

団体や企業がSDGsに取り組む理由

さまざまな団体や企業がSDGsに取り組む理由はどこにあるのでしょうか。

企業はイメージアップとESG投資に期待

企業はSDGsに取り組むことで持続可能な社会へ貢献し、さらに企業のクリーンなイメージを世間にアピールする狙いもあるでしょう。さらに年々増加するESG投資を呼び込みたいという思惑があるかもしれません。

ESG投資とはEnvironment(環境)Social(社会)Governance(企業統治)に配慮をしている企業に対する投資で、将来性や安定性が期待できるとして近年注目されている投資基準です。このESG投資を行う投資家にとってSDGsの達成目標は投資先の企業を判断する基準にしやすくなっています。このためSDGsに取り組む企業は自然と、ESG投資先として評価されるようになっているのです。

世界最大規模の年金投資機関であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、今後積極的にESG投資を行うと表明しています。世界的にもESG投資は大きな潮流になると考えられ、SDGsに取り組むことはESG投資先として注目されるメリットもありそうです。

地域や自治体は問題解決のために

魚町商店街振興組合や北海道下川町のような地域や自治体には、地域社会や経済を活性化させたいという目的が前提にあります。そしてそれを実現するための取り組みが、結果的にSDGsへとつながっているようです。

下川町の一の橋地区は2009年に住民が95人となり、病院や商店もなく高齢化率は50%を超え、翌年から町が再生に着手しました。そして行政や住民の熱心な取り組みの結果、集住化とエネルギー自給化を実現した「一の橋バイオビレッジ」が誕生しました。そこでは給湯や暖房はすべて木質バイオマスボイラーで行われ、電力の一部は太陽光発電によって賄われています。

地域問題を解決する方法をゼロから考えることは非常に難しいことですが、SDGsの貢献目標が一つの指針になったのではないでしょうか。

ジャパンSDGsアワードの意義

SDGsは国際社会にとって意義ある宣言ですが、日本ではまだまだ馴染みが薄く実際の取り組みも少ないように感じます。しかし政府がジャパンSDGsアワードを開催することで、その認知度が高まることは確かでしょう。

そして今回紹介したような実際の取り組みが広く知られれば、同じような問題を抱える地域や自治体の参考になることも期待できそうです。今後もジャパンSDGsアワードを受賞する団体や企業の取り組みに注目していきましょう。(提供:Renergy Online


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