衣料品の大量廃棄が問題になっています。一方で大量の商品が過剰に消費される「ブラックフライデー」に対抗して大量生産を抑制する「グリーンフライデー」の動きも国内外で広がっている傾向です。企業は、SDGsの12番目の目標「つくる責任つかう責任」をどのように果たすのか過剰消費問題の現状を探ります。
メルカリが「サステナブルファッションショー」を開催
2020年11月26日、国内最大のフリマアプリ運営会社メルカリがオンラインを通してメルカリグリーンフライデープロジェクト新作ゼロの「サステナブルファッションショー」を開催。ショーの中で人気ファッションスタイリストや人気ファッションアドバイザーが一般参加者から募集した不要の服やメルカリで購入した服を活用してコーディネートしたファッションが披露されました。
観葉植物を配したステージに、参加者がプロにコーディネートされた服を着こなして次々に登場。一般のファッションショーの華やかなイメージとは違うサステナブルらしい落ち着いた雰囲気のファッションショーになりました。もとは古着なのに、コーディネートにより新作のように生まれ変わったファッションに参加者も満足気味のコメントを発表していました。
ファッションショーのあとは、以下のファッション専門家とメルカリ・ブランディングチーム・マネージャーによるトークセッションを実施。
・ファッションデザイナーの丸山敬太氏
・ファッションスタイリストの小山田早織氏
・ファッションアドバイザーのMB氏
トークセッションでは「これからのサステナブルな消費のあり方」と題してそれぞれの見解が述べられました。ファッションショーの模様は「メルカリYouTube公式チャンネル」で配信されているため、誰でも見ることができます。
欧州を中心に広がる「グリーンフライデー」の波
欧州を中心に広がっているのが「グリーンフライデー」です。このプロジェクトは、過剰消費の要因になっているとされる「ブラックフライデー」(11月第4金曜日開催)に対抗し大量消費を抑制することを目指して行われています。メルカリが「サステナブルファッションショー」を開催したのも家に眠っているモノの活用を促すことが目的です。
サステナブル系Webサイト「alterna(オルタナ)」によると、米国を発祥とする「ブラックフライデー」に対抗してフランスでは政府が国会に「無駄防止法案」を提出しています。買い控えを促し捨てないで長く使うことを国が法的に支援する形です。フランスでも2013年から「ブラックフライデー」が始まっています。
2019年の「ブラックフライデー」では、史上最高となる5,600万件のクレジットカード決済が行われました。同イベントが過剰消費の象徴を表す状況といってよいでしょう。2018年には、フェアトレード企業やNGOがパリ市の支援を得てNGO「グリーンフライデー」を立ち上げました。エリザベート・ボルヌ環境連帯移行大臣が「ブラックフライデー」の問題点として、フランス中に大量の段ボールが配送されることで交通渋滞が起こって温室効果ガスが増えることを挙げています。
さらにゴミになる包装も問題だと付け加え環境への悪影響を指摘しています。またプリュヌ・ポワルソン環境連帯移行副大臣も「消費のしかたを変えるべき」「本当に必要なものだけを買って」と訴えました。副大臣の言葉は「ブラックフライデー」が企業側だけの問題ではなく消費者の行動にも問題があることを示しています。
衣料が大量に廃棄されている現実
「グリーンフライデー」が広がっている背景には、衣料が大量に廃棄されている現実があります。2020年1月28日に放送された経済テレビ番組『ガイアの夜明け』の報道によると、日本では1年間に約29億着の衣服が供給され実に半分の約15億着が売れ残っているといわれています。売れ残った服は「ブランド価値を保つために廃棄処分になる」というのです。
その背景には、得意先とのルールによってブランド価値を下げないために廃棄にせざるを得ない事情があります。アパレルブランドで売る服がキャンセルされたり売れ残ったりした場合は、業者が抱え込むことになるのです。
SDGsが問う「つくる責任つかう責任」
SDGsの12番目の目標は「つくる責任つかう責任」です。モノを作るメーカーの責任と使用する消費者の責任が同等に位置づけられているのが注目できます。廃棄が増えるのは、メーカーと消費者のそれぞれに原因があるのが実情です。消費者側による原因に「ファストファッションの大量消費」という行動があります。
ユニクロに代表される最先端の流行を取り入れた低価格の衣料品は、多くの人に人気です。その結果、メーカー側は短いサイクルで大量生産し消費者も飽きたら気軽に新しい服を購入する「大量生産・大量消費」のアパレル文化が生まれています。多店舗展開のメーカーにとっては、大量に生産することでコストを下げ消費を促す戦略をとるのが一般的なため、方向性を変えるのは容易ではありません。
メルカリが2020年10月に行ったインターネット調査によると、45.7%の人が「購入したもののその後ほとんど使わなくなったモノ」があると回答しています。またそのうちの58.5%が「洋服」となっている状況です。洋服は、流行に左右されるのに加えて「途中でサイズが合わなくなる」という特殊事情もあるため、やむを得ない側面もありますが衝動買いを抑える努力をする余地はあるのではないでしょうか。
大量生産を防ぐ企業の取り組み
企業も大量生産・大量消費の状況に何も対策をしていないわけではありません。チャリティー的な活用や新しいビジネスモデルの構築が行われており状況の改善に努力しています。大量生産を防ぐ企業の取り組みを3つ紹介しましょう。
ファーストリテイリング
ファストファッションのリーダーともいえる「ユニクロ」や「GU」を展開するファーストリテイリングは、「全商品リサイクル活動」に取り組んでいます。顧客が不要になった服を店舗で回収し必要な人たちに届ける一方、着られない服は廃棄物固形燃料として利用しているのです。まさに全商品リサイクルという名にふさわしい仕組みといえるでしょう。
ファーストリテイリングがこの取り組みを開始したのは2006年です。ユニクロとGUの世界各地にある店舗で回収しリサイクルを行っています。回収した服の中で着られるものは、難民・避難民に寄贈しておりSDGsの1番目の目標「貧困をなくそう」という目標の一助にもなっています。
ストライプインターナショナル
最近流行しているサブスクリプションでも洋服をレンタルするサービスが登場しました。ファッションサブスクリプションサービス「メチャカリ」では、好きな服を定額制でレンタルできます。例えばレンタル料金は、ライトプランで月額2,980円と手ごろな値段です。現代は「断捨離」や「ミニマリスト」の影響で「余分なものは持ちたくない」という人が増えています。
洋服を捨てることなく繰り返し利用されるこの仕組みは、大量廃棄を減らす一つの方法になりそうです。
ショーイチ
2020年1月28日に放映された『ガイアの夜明け』でも紹介された激安アパレルショップの「カラーズ」では、メーカーの過剰生産や納期遅れでキャンセルになった商品を並べています。新品のほとんどを1,000円以下で販売し飛ぶように売れているそうです。山本昌一社長は「廃棄ロスをなくそうと立ち上げたビジネスなので必ず売り切る」と自信を持って話しています。
このようなアパレル企業の救済と廃棄ロスの削減を両立できるビジネスが登場したのは頼もしい限りです。メルカリの発信によって日本でも広がることが期待される「グリーンフライデープロジェクト」ですが、これからもモノを作るメーカーと使用する消費者がともに責任を持ってSDGsのゴール12達成に向かうことが望まれます。(提供:Renergy Online)
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