「株は確定申告が必要なの?」と疑問に思う人もいるでしょう。株で得た利益には税金がかかるため、原則確定申告は必要です。ただし利益があったとしても、確定申告が不要のケースがあります。逆に確定申告が不要な人でも、確定申告をしたほうが得になるケースもあります。

制度が少し複雑なので、初心者だけでなく経験者でも分かりにくいかもしれません。本記事では株の確定申告にまつわる制度を整理し、わかりやすく解説します。

株の確定申告には3つのパターンがある

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(画像=PIXTA)

株で得た利益には、税金がかかります。そのため、原則確定申告は必要です。ただし、株の確定申告は、大きく以下の3パターンに分かれます。

【株の確定申告 3つのパターン】
1.確定申告が必須のパターン
2.確定申告が不要のパターン
3.確定申告は不要だが、したほうが得するパターン

それぞれのパターンについて、詳しく見ていきましょう。

1.株の確定申告 「必須のパターン」

株の「確定申告が必須」になるパターンは次のとおり。

・「一般口座」もしくは「特定口座(源泉徴収なし)」で取引をしている
・かつ「一定以上の利益」が出ている

それぞれ詳しく解説していきましょう。

「一般口座」・「特定口座(源泉徴収なし)」で取引をしている

証券会社の口座には以下の3種類があります。この中で、「一般口座」か「特定口座(源泉徴収なし)」を利用していると、確定申告が必要になる可能性があります。

証券口座の種類 確定申告について
一般口座 一定以上の利益で申告が必要
特定口座(源泉徴収なし) 一定以上の利益で申告が必要
特定口座(源泉徴収あり) 確定申告は不要

「一定以上の利益」が出ている

「一般口座」もしくは「特定口座(源泉徴収なし)」で取引をしていて、かつ一定以上の利益がある場合に確定申告が必要になります。

もちろん利益がなければ申告は不要です。また利益がある場合でも必ず確定申告が必要になるわけではなく、「一定以上の利益」を超えるまでは確定申告は不要です。

なお、「一定以上の利益」は人によって異なりますが、年収2,000万円未満の給与所得者だと、給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告が不要になる「申告不要制度」を利用できます。あまりに少額な利益の場合は、確定申告はしなくてもよいということですね。

【FPからのワンポイントアドバイス】
上述した「申告不要制度」はあくまで所得税(国税)上の制度。住民税は対象外になります。

つまり「一般口座」「特定口座(源泉徴収なし)」を持っている方は、株の利益が20万円以下であっても住民税については申告が必要になるので注意しましょう。

なお、「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、住民税の申告も不要です。

2.株の確定申告 「不要のパターン」

「確定申告が不要」になるパターンは次のとおりです。

・「特定口座(源泉徴収あり)」で取引している
・年間を通して損失になっている
・株の利益が「一定以下の利益」に収まる

それぞれ解説します。

「特定口座(源泉徴収あり)」で取引している

「特定口座(源泉徴収あり)」で取引している場合は、利益額にかかわらず確定申告は必要ありません。

利益を証券会社が計算し、自動的に所得税と住民税を源泉徴収しているからです。

年間を通して損失になっている

年間で損失になっている場合は、口座の種類にかかわらず確定申告は不要です。

株の利益が「一定以下の利益」に収まる

前述のとおり、「一般口座」や「特定口座(源泉徴収なし)」で取引し利益がある場合でも、「一定以下の利益」なら確定申告は不要です。

3.株の確定申告 「不要だが、したほうが得するパターン」

最後に、「確定申告は必須ではないが、したほうがよい」パターンを見てみましょう。

・特定口座でプラス&他の証券会社でマイナスの場合
・過去3年以内に損失がある

【FPからのワンポイントアドバイス】
確定申告をしたほうが有利になるかどうかは、人によって異なります。ここでは一般的なケースを紹介しますが、確定申告をするかしないかは慎重に判断してください。

特定口座でプラス&他の証券会社でマイナス

「特定口座」は利益や税金を自動的に計算してくれますが、他の証券会社の取引までは計算してくれません。そのため、複数の証券会社で取引する場合は税金を取られすぎてしまうことがあります。

取られすぎた税金は、確定申告をすると還付されます。

なお損益通算は、「一般口座」や「特定口座(源泉徴収なし)」でも可能です。

過去3年以内に損失がある

過去3年以内に損失が出ている場合、株の利益から損失を差し引くことで税金を減らす方法があります。これを「損失の繰越控除」といいます。

「損失の繰越控除」を受けるには、原則損失が出た年分の確定申告をしておく必要があります。「特定口座(源泉徴収あり)」でも適用を受けられるので、損失が出た年は確定申告しておくとよいでしょう。

確定申告をしていない場合でも、遡って「期限後申告」ができる場合があります。詳しくは税務署員や税理士に相談しましょう。

要注意!株の確定申告で気をつけたい3つのポイント

ここからは、株の確定申告で気をつけたいポイントを確認しましょう。代表的なものを3つ解説します。

①扶養から外れる可能性がある 

株の利益を申告すると、その利益は「合計所得金額」に含まれます。

合計所得金額は、以下のような所得控除の判定に用いられます。

・扶養控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除

上記の所得控除は、「扶養される人」の合計所得金額が一定以下でないと適用されません。

したがって「扶養される人」が株の利益を申告し、合計所得金額が一定以上になってしまうと、これらの所得控除が適用されなくなってしまうのです。

特に、先述した「損失の繰越控除」を行う場合は注意が必要です。合計所得金額に含まれる金額は、繰越控除した損失と相殺する前の利益がそのまま加算されるため、合計所得金額が上がりやすくなります。

扶養控除や配偶者控除などを利用したい場合は注意しましょう。

②国民健康保険料が上がる可能性がある 

自営業者などが加入している「国民健康保険」の保険料は、主に住民税の所得額で決まります。したがって株の利益を申告すると所得が上がり、国民健康保険料も上がる可能性があるのです。

【FPからのワンポイントアドバイス】
国民健康保険料が上がる可能性がある場合は、住民税のみ「申告不要制度」を選択する方法があります。

所得税で還付を受け、住民税については還付を受けない方法です。これによって、国民健康保険料が上がることを防ぐことができます。

住民税のみ申告不要を選択する場合は、確定申告後に、「住民税の納税通知書」が発送される(5月中旬頃)までに住所地の「市県民税申告書」を提出し、申告不要を選択しましょう。

③保育料が上がる可能性がある

幼稚園などの保育料も、国民健康保険料と同様に住民税の所得額で決まります。そのため、株の利益の申告により所得が上がり、保育料も上がってしまう可能性があります。

②で説明した住民税の申告不要制度を選択すれば、保育料が上がるのを防ぐことにつながります。

「配当」はどうする?株の確定申告で見落としがちな配当の取り扱い

株の利益は売却益だけではなく、企業から受け取る「配当」もあります。配当の確定申告はどのようにすればよいのでしょうか。

基本は「売却損」との損益通算

株式などに「売却損」がある場合は配当益との「損益通算」が可能です。それによって配当から源泉徴収された税金が還付される可能性があります。

「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は配当と売却損の損益通算を証券会社が自動的に行いますが、「一般口座」や「特定口座(源泉徴収なし)」の場合は確定申告が必要です。

「配当控除」を選択 本業の所得税・住民税を節税できる

ここからは応用編です。配当を受け取った場合、「配当控除」を選択できます。これは、所得税からは配当の10%または5%を、住民税からは配当の2.8%または1.4%を直接引ける制度です。

配当控除を受けるには口座の種類にかかわらず確定申告が必要で、しかも配当を本業の収入に含める「総合課税」で申告する必要があります。

本来配当や株の売却益には20.315%の税金がかかりますが、総合課税は「累進課税」なので所得が多くなるほど税率が上がります。どちらが有利かは所得によって変わるため、一概にはいえません。

配当控除を選択する場合は、本当に節税につながるかどうかを慎重に判断しましょう。

株の確定申告の方法

ここからは、株の確定申告の方法を確認します。大まかな流れは以下のとおりです。

【株の確定申告 大まかな流れ】
1.書類の準備
2.申告書類の作成
3.申告書類を期限までに提出 

それぞれ確認しましょう。

1.必要書類の準備

確定申告に必要な書類を確認しましょう。証券会社や税務署から受け取る書類で申告書を作成します。

✔︎証券会社から受け取る書類
証券会社から受け取る書類のうち、申告書の作成に必要な書類は以下のとおりです。

【証券会社から受け取る 確定申告に必要な書類】
〇「特定口座」:年間取引報告書
〇「一般口座」:取引ごとの取引報告書

「特定口座」では、源泉徴収あり・なしのどちらでも1年間の損益を計算した「年間取引報告書」を受け取れます。

一方で「一般口座」の利益の計算は自分で行う必要があるので、取引ごとに発行される「取引報告書」をまとめておきましょう。

ネット証券などで「電子交付」を選択している場合は、画面を見ながら書類を作成します。なお証券会社で発行される書類は、確定申告で提出する必要はありません。

✔︎税務署から受け取る書類
手書きで申告書を作成する場合は、税務署から以下の書類を受け取りましょう。

【税務署から受け取る 確定申告に必要な書類】
<共通>
〇申告書B(第一表、第二表)
〇申告書第三表(分離課税用)
〇株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(1面、2面)

<損失の繰越控除を行う場合>
〇申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の繰越用)

上記の書類は、国税庁HPからダウンロードすることもできます。

✔︎マイナンバー確認書類と本人確認書類
申告書を提出する際は、「マイナンバー確認書類」と「本人確認書類」の提出も必要です。

マイナンバーカードは「本人確認書類」を兼ねます。マイナンバーカードを持っていない場合は、以下のような書類を用意しましょう。

マイナンバー確認書類 〇通知カード(指名、住所などに変更がない場合)
〇マイナンバー記載の住民票
〇マイナンバー記載の住民票記載事項証明書
※いずれか1点
本人確認書類 〇運転免許証
〇パスポート
〇健康保険証
※いずれか1点。顔写真がない場合は2点必要。

2.申告書類の作成 国税庁HPの「申告書作成コーナー」がおすすめ

書類を用意したら、申告書を作成しましょう。

申告書は手書きでも作成できますが、国税庁HPの「申告書作成コーナー」の利用をおすすめします。申告書を事前に用意する必要がなく、画面の案内にしたがって申告書を作成できるからです。

作成した申告書は印刷できるので、郵送で提出することもできます。

3.申告書類の提出 確定申告の時期をチェック 

申告書を作成したら、税務署に提出します。確定申告の時期は以下のように決まっているので、期限内に忘れずに提出しましょう。

【確定申告の時期】
〇翌年の2月中旬~3月中旬
(例)2020年分の確定申告期間:2021年2月16日~3月15日

なお確定申告の義務がない人が還付を受けるために行う「還付申告」の場合は、翌年から5年間提出できます。

ただし還付申告にも条件があるため、上記の期限内に提出するほうがよいでしょう。

株の確定申告の判断は慎重に

株の確定申告が面倒な人は「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すると、確定申告が原則不要になります。しかしあえて確定申告をすることで、税金が還付されるといったメリットもあります。ただし、メリットがあるかどうかはさまざまな要因により決まります。株の確定申告は慎重に行いましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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