野口悠紀雄

ZUU onlineが開催している、 『資産家のニューノーマル資本戦略』をテーマにしたZoomによるウェビナー。2⽉8⽇(月)17時からは、経営者向けメディア「BUSINESS OWNER LOUNGE」と共催で、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄 氏に、『アフターコロナ デジタル時代の経済における勝者とは 〜AIからデジタル通貨まで最先端の世界経済予測〜』を聞いた。

野口悠紀雄
野口悠紀雄(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授)
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2017年9月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。 著書に『情報の経済理論』(日経経済図書文化賞)、『1940年体制―さらば戦時経済』、 『財政危機の構造』(サントリー学芸賞)(以上、東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、吉野作造賞)、『「超」整理法』(中公新書)、『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社:大川出版賞)など。 近著に、『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『経験なき経済危機』日本はこの試練を成長への転機になしうるか?(ダイヤモンド社)、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)などがある。

主なトピック

  • 2021年もっとも重要な経済トピック:なぜ今デジタル通貨が注目されているのか?
  • デジタル人民元やディエムの日本への影響は?
  • AI×ビッグデータの世界とは?
  • アント上場延期から見るデータ資本主義
  • ブロックチェーン技術の汎用性

こんな方におすすめ

  • 仮想通貨(暗号資産)やフィンテックに関心のある方
  • デジタル人民元やディエムが日本の金融に与える影響に関心のある方
  • ブロックチェーンを用いて新しい事業を展開したいと考えている方
  • AIやブロックチェーンが拓く未来社会に関心のある方

時間内に回答できなかった代表的な質問

当日、時間内に回答できなかった、参加者からいただいた質問のうち、複数寄せられたものについて、野口氏に追加で回答いただいた。

質問

AIブロックチェーンで代替できない、人間にしか出来ないものとは何かをお教えいただきたいです。

野口悠紀雄 氏の回答

AIは人間の単純労働だけではなく、知的労働も代替しつつあります。また、ブロックチェーンによって管理者がいない事業運営が可能になっています(ビットコインは、その例です)。

AIとブロックチェーンを組み合わせることによって、労働者も管理者もいない完全自動型組織を実現することが、原理的には可能になっています。では、そのような社会において人間が行なう仕事はなくなってしまうのでしょうか?これは未来に向かっての最も重要な問いです。私は、そうしたことにはならないと考えています。

まず、AIは、真に創造的な仕事をすることはできません。それは次のように考えれば納得できるでしょう。

疑問を抱くことは創造活動の出発点です。ニュートンは「りんごが木から落ちるのに月はなぜ落ちてこないのか」と疑問を抱きました。しかし、AIに同じものを見せても、「それは万有引力の法則と力学法則によって説明できる現象であり、何の不思議もない」と答えるだけでしょう。つまり、AIには真の意味での創造活動はできないと言うことになります。

ブロックチェーンは、ビットコインの運営に見られるように、ルーチン的な活動を人間の管理者なしに進めることができます。しかし、これまでなかった事態が生じたとき、どう対処したらよいかを判断することができません。実際、2018年には、ビットコンの仕様変更を巡って混乱が生じました。

疑問を抱くことによって真に創造的な活動をすること、ルーチンでは解決できない組織の問題に対処すること。これらは、AIやブロックチェーンにはできないことです。

以上の答えは、抽象的なものです。これらが具体的にどのようなことなのかは、皆さんがそれぞれなさっている仕事の中から見出していく必要があります。それに成功した人や組織が未来の勝者になるでしょう。

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