日経平均株価は、1990/8/3(金)以来およそ30年5ヵ月ぶりに高値水準を回復し、平成バブル高値からその後の安値に至る下げ幅の3分の2戻し水準(28,295円)を上回りました。また、1/14(木)の終値は、ドル換算した日経平均でみると274ドル台となり、1989/12のバブル高値を更新してきました。

今後、日経平均株価の割安感は後退し、物色対象が大きく変わってくる可能性もあり、注意が必要です。

そこで今回は、来期の業績回復・拡大が期待でき、割安感の強い日経平均採用銘柄を抽出しました。

日経平均株価が“ドル建てで高値更新”株価上昇をリードしてきた銘柄とは?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

日経平均株価の2021年は好スタートになりました。

昨年末終値は27,444円17銭でしたが、1/14(木)には取引時間中一時28,979円53銭まで上昇し、年初来の上昇率は5.6%に達しました。

日経平均株価は、新型コロナウイルスの感染が深刻化しはじめた2020/3/19(木)に、16,552円83銭まで下げましたが、そこが52週安値になり、その後は上昇基調となりました。1/14(木)の高値までの上昇率は73.4%に達しています。図表2はその過程で上昇率が大きかった日経平均採用銘柄です。

日経平均株価が大きく上昇した結果、図表1にあるように、予想PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が上昇し、割安感は後退しつつあります。また、本年の日経平均株価予想では、市場参加者の多くが高値を30,000円としており、その意味では、多くの市場関係者の目標株価に接近してきたことになります。

そろそろ、上昇一服感が指摘される可能性や、仮に日経平均株価が30,000円を超える展開になっても、リードする主役銘柄のタイプが変化してくる可能性が大きいとみられます。

図表1 「アベノミクス相場」以降の日経平均株価PBRと予想PER

「アベノミクス相場」以降の日経平均株価PBRと予想PER
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。 期間:2012/11/15~2021/1/14(画像=SBI証券)

図表2 日経平均採用銘柄~52週安値からの上昇率が大きい銘柄
コード / 名称 / 1/14終値 / 安値比上昇率 / 予想PER / PBR
<2413> / エムスリー / 10,285 / 343.5% / 214.2 / 39.24
<5631> / 日本製鋼所 / 3,155 / 248.2% / 29.3 / 1.71
<9984> / ソフトバンクグループ / 8,569 / 228.4% / 9.0 / 2.37
<9107> / 川崎汽船 / 2,110 / 195.5% / 6.5 / 1.82
<5713> / 住友金属鉱山 / 5,039 / 171.1% / 24.7 / 1.37
<5706> / 三井金属鉱業 / 4,050 / 168.0% / 17.7 / 1.22
<6674> / ジーエス・ユアサ コーポレーション / 3,120 / 167.6% / 34.6 / 1.42
<9766> / コナミホールディングス / 6,470 / 162.9% / 31.0 / 3.05
<7735> / SCREENホールディングス / 8,320 / 161.2% / 30.3 / 2.22
<3659> / ネクソン / 3,400 / 161.1% / 29.2 / 4.17
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

日経平均採用銘柄~52週安値からの上昇率が大きい銘柄
(画像=SBI証券)

図表3 日経平均採用銘柄52週安値からの上昇率が小さい銘柄
コード / 名称 / 1/14終値 / 安値比上昇率 / 予想PER / PBR
<7912> / 大日本印刷 / 1910 / 6.6% / 21.2 / 0.55
<9005> / 東急 / 1274 / 9.4% / -- / 1.07
<1803> / 清水建設 / 779 / 9.6% / 7.8 / 0.79
<9001> / 東武鉄道 / 3065 / 10.5% / -- / 1.46
<9202> / ANAホールディングス / 2281.5 / 10.8% / -- / 0.86
<5232> / 住友大阪セメント / 3175 / 11.1% / 12.0 / 0.63
<1332> / 日本水産 / 446 / 12.1% / 11.3 / 0.87
<9503> / 関西電力 / 1025.5 / 12.4% / 9.3 / 0.54
<4452> / 花王 / 7873 / 12.9% / 29.5 / 4.34
<2768> / 双日 / 250 / 13.1% / 9.4 / 0.52
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。予想PERが赤字の企業は「--」としています。

日経平均採用銘柄52週安値からの上昇率が小さい銘柄
(画像=SBI証券)

出遅れ修正が期待できる銘柄は!?

上記の図表2と図表3は、これまでの株価上昇局面での物色の特徴を顕著に示しているとみられます。

値上がりが目立つのはPBRや予想PERが高いグロース系の銘柄が多く、値上りが鈍い銘柄はPBRや予想PERが低いバリュー系の銘柄が多いようです。

今後はこうした傾向が逆転するかもしれません。

それでも、物色対象(母集団)を日経平均採用銘柄に絞っているのは、2021年もNT倍率の上昇が続いており、今後も上昇が続くと、考えるためです。東京株式市場は、2022/4にプライム市場が創設されるなど、再編が予定されており、それにしたがって、TOPIXも見直されると思われます。NT倍率の上昇、すなわち日経平均株価のTOPIXに対する相対的優位は2021年内程度は続くのではないでしょうか。

こうしたことを踏まえ、図表4では「出遅れ修正が期待できる銘柄」の抽出を行いました。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)日経平均採用銘柄であること。

(2)来期ベースの予想PER(株価収益率)が15倍未満の銘柄であること。

(3)PBR(株価純資産倍率)が0.9倍未満の銘柄であること。

(4)市場予想EPS(1株利益)が過去4週間、下落していない銘柄であること。

(5)来期の市場予想営業増益率が10%以上の銘柄であること。

(6)年初来の株価上昇率が0%以上、10%未満の銘柄であること。

これらの条件をすべて満たす銘柄(日経平均採用銘柄)を、来期予想増益率の大きい順に並べたものが図表4になります。株式市場は今後、来期の業績見通しを基準とした銘柄選びを本格化させると考えられ、その意味でも、これらの銘柄は選好されやすい銘柄であると考えられます。

なお、スクリーニング条件(6)を加えた理由については、この上昇相場でさすがに下がっている銘柄には問題や課題が内包されている可能性が大きいと考えたことに加え、株価上昇に過熱感の強まっている銘柄も除外しようと考えたためです。

図表4 出遅れ修正が期待できる日経平均採用銘柄は!?
コード / 銘柄 / 株価(円)(1/14) / 年初来上昇率 / 来期市場予想営業増益率 / 来期市場予想PER(倍)
<4188> / 三菱ケミカルホールディングス / 662.8 / 6.18% / 339.0% / 10.9
<5019> / 出光興産 / 2,453 / 8.06% / 124.7% / 9.4
<5802> / 住友電気工業 / 1,494.5 / 9.37% / 103.2% / 12.8
<5201> / AGC / 3,730 / 3.61% / 69.7% / 14.6
<7202> / いすゞ自動車 / 1,020 / 4.08% / 61.9% / 10.4
<7267> / 本田技研工業 / 2,919 / 1.44% / 53.8% / 8.2
<3863> / 日本製紙 / 1,269 / 6.28% / 49.0% / 11.7
<5101> / 横浜ゴム / 1,634 / 6.52% / 41.6% / 9.3
<4208> / 宇部興産 / 1,955 / 4.43% / 39.8% / 9.5
<1332> / 日本水産 / 446 / 4.69% / 25.8% / 9.0
<3861> / 王子ホールディングス / 635 / 8.18% / 22.4% / 11.4
<1803> / 清水建設 / 779 / 3.87% / 11.9% / 7.2
<5232> / 住友大阪セメント / 3,175 / 5.31% / 10.8% / 11.0
※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。

出遅れ修正が期待できる日経平均採用銘柄
(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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