NISA口座の開設数は、ネット証券の中ではSBI証券と楽天証券が多い。SBI証券は約540万口座、楽天証券は約400万口座だ(2020年6月時点)。両社は提供サービスで競い合っているが、どのような違いがあるだろうか。NISA口座には一般NISAとつみたてNISAがあるが、今回は一般NISA(以後NISAと表記)について両者を比較していきたい。
1.NISAにおける株式売買手数料をSBI証券と楽天証券で比較
NISAで取引できるのは、主に国内外の株式や投資信託である。投資信託はSBI証券も楽天証券もすべてノーロード(購入手数料無料)になっているため、比較しておきたいのは株式の売買手数料だ。
通常、株式の売買手数料がかかるのは買付と売却の時だが、SBI証券と楽天証券のNISAでは無料化されている取引が多い。国内株式、国内ETF、米国株式、海外ETFの手数料を以下にまとめた(2020年6月時点の手数料で比較)。
取引 | SBI証券 | 楽天証券 | ||
買付 | 売却 | 買付 | 売却 | |
国内株式 | 0円 | 0円 | ||
国内ETF | 0円 | 0円 | ||
米国株式 | 約定代金の 0.495% 最低手数料0ドル 上限手数料22ドル |
約定代金の 0.495% 最低手数料0ドル 上限手数料22ドル |
||
海外ETF | 0円 | 外国株式 と同じ |
全額 キャッシュ バック |
外国株式 と同じ |
SBI証券と楽天証券のNISAは国内株式売買手数料と海外ETF購入手数料が無料
SBI証券と楽天証券の手数料体系はほとんど同じで、NISAにおいても大きな違いはない。SBI証券と楽天証券のNISAでは、国内株式や国内ETFなら買付、売却ともに手数料無料だ。米国株式は通常通りの手数料がかかるが、海外ETFは買付のみ無料である。海外ETFの対象国などに細かい違いはあるが、実質的には大差はない。海外ETFではバンガード社など世界的に評価の高いETFにも投資できるため、活用したいところだ。
購入手数料が無料の海外ETF対象国 | |
SBI証券 | 米国、中国、韓国 |
楽天証券 | 米国、中国、シンガポール |
SBI証券は為替交換手数料が安く外国株式投資に有利
SBI証券でも楽天証券でも株式の売買手数料は変わらないが、外国株式に投資する時は為替の交換手数料がかかる。外国株式の中で最も人気があるのは米国株式だ。
順位 | 今後、投資してみたい国(地域) | 割合 |
1位 | アメリカ | 60.57% |
2位 | 日本 | 33.23% |
3位 | インド | 24.43% |
4位 | 東南アジア | 21.72% |
5位 | 中国 | 8.75% |
海外株式の為替の交換手数料は通貨によって異なるため、いくら手数料がかかるのかは事前に確認しておこう。米国株式に投資する場合は、SBI証券も楽天証券も1ドルにつき25銭の手数料だ。ただし、SBI証券では為替交換手数料を4銭に抑えられる方法もある。SBI系列の銀行を使う方法だ。
住信SBIネット銀行で円から米ドルへの交換を行うと4銭の手数料で済む。為替交換手数料が約6分の1になるのは大きなメリットだ。交換した外貨は無料でSBI証券への口座振替ができるため、米国株式を始めとした外国株式への投資をするならSBI証券を選ぶのがいいだろう。
2.NISAの取扱銘柄数をSBI証券と楽天証券で比較
NISAで株式投資をする場合、SBI証券も楽天証券も売買手数料は同じだが、投資できる銘柄数には違いがある。NISAにおける両社の取り扱い銘柄を以下の表にまとめた。
NISAでの取扱銘柄 | SBI証券 | 楽天証券 | |
国内株式 | 市場売買 | 同じ | |
IPO(2019年) | 84本 | 非対応 | |
投資信託 | 取扱本数 | 2,569本 | 2,582本 |
外国株式 | 取扱国数 | 9ヵ国 | 6ヵ国 |
NISAでIPO銘柄や外国株式に投資したいならSBI証券
NISAで投資対象になる株式や投資信託について、楽天証券とSBI証券を比較していこう。
取扱銘柄数は、株式ならSBI証券、投資信託なら楽天証券のほうが多い。投資信託の取扱本数はそれほど変わらないが、違いが鮮明なのは、IPO(新規上場株式)の取扱数だ。楽天証券のNISAではIPO銘柄に投資できない。SBI証券はIPOに力を入れているネット証券であるため、新規上場銘柄に投資したい場合はSBI証券を選びたい。
外国株式においてもSBI証券のほうが取扱国数が多く、楽天証券で投資できる国をすべてカバーしている。米国株式に投資できれば問題ない投資家も多いだろうが、先ほどの為替交換手数料や選択肢の多さを考えればSBI証券のほうが有利だろう。
取扱外国株式 | SBI証券 | 楽天証券 |
米国 | ○ | ○ |
中国 | ○ | ○ |
インドネシア | ○ | ○ |
シンガポール | ○ | ○ |
タイ | ○ | ○ |
マレーシア | ○ | ○ |
韓国 | ○ | ✕ |
ロシア | ○ | ✕ |
ベトナム | ○ | ✕ |
3.NISAの人気株式銘柄ランキングをSBI証券と楽天証券で比較
SBI証券と楽天証券のNISAでの株式投資では、どのような銘柄が人気なのだろうか。比較してみよう。
NISAで買える国内株式買付代金ランキングTOP10
まずは、SBI証券と楽天証券のNISAにおける国内株式買付代金ランキングを見てみよう(データは2021年1月13日時点)。
順位 | SBI証券 | 楽天証券 |
1位 | 日本たばこ産業 | 日本たばこ産業 |
2位 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 三菱UFJフィナンシャル・グループ |
3位 | 武田薬品工業 | ANAホールディングス |
4位 | ソフトバンク | 日本航空 |
5位 | ANAホールディングス | ENEOSホールディングス |
6位 | ENEOSホールディングス | 楽天 |
7位 | 三井住友フィナンシャル・グループ | ソフトバンク |
8位 | 日本航空 | オリックス |
9位 | みずほフィナンシャルホールディングス | 三菱商事 |
10位 | 三菱商事 | 三井住友フィナンシャル・グループ |
日本株は世界的な景気回復期待や、海外に比べて新型コロナウイルスの感染者数が少ないことなどを背景に買い進められてきた。2020年1月8日には、日経平均株価が30年ぶりに2万8,000円台を回復したことが話題になり、世界の景気敏感株である日本株は海外投資家からも注目されている。2回目の緊急事態宣言が発令されたが、株式市場はそれをすでに織り込んでいるようだ。
2020年はコロナ禍でも業績拡大が期待できるIT関連株に資金が集中していたが、2021年はワクチンの効果や米国バイデン政権の大規模な財政出動期待を材料に個別株が物色されている。その一つが銀行株だ。ランキングでは、国内トップの三菱UFJフィナンシャル・グループがSBI証券と楽天証券で2位に入っている。
銀行株は業績が景気に左右されやすい景気敏感株であると同時に、実際の株価が理論上の株価よりも低い割安株でもある。株式市場ではすでに海運株や鉄鋼株などの景気敏感株が買われており、その流れで銀行株にも資金が流入しつつある。銀行株の代表格である三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクは配当利回りが5%程度あり、個人投資家が配当と値上がりを同時に狙える株といえるだろう。
NISAで買える米国株式買付代金ランキングTOP10
SBI証券と楽天証券のNISAで、どのような米国株式が買われているかも確認しておこう(2021年1月13日時点)。
順位 | SBI証券 | 楽天証券 |
1位 | テスラ | テスラ |
2位 | アップル | アップル |
3位 | ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ | AT&T |
4位 | AT&T | パランティア・テクノロジーズ |
5位 | クラウドストライク | ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ |
6位 | コカ・コーラ | ファイザー |
7位 | ロイヤルティ・ファーマ | シースリー・エーアイ |
8位 | プラグ・パワー | ユニティ・ソフトウェア |
9位 | アマゾン・ドットコム | クラウドストライク |
10位 | ユニティ・ソフトウェア | アリババ・グループ・ホールディングス |
米国株式市場は、新型コロナウイルスのワクチンやバイデン政権の政策への期待から上昇が続いている。バイデン政権の政策は株式市場でも注目されており、「クリーンエネルギー革命」として環境対策を最優先課題の一つに掲げている。クリーンエネルギーには風力発電や太陽光発電もあるが、自動車業界ではEV(電気自動車)が急速に普及する可能性がある。
すでにカリフォルニア州が2035年までにガソリン車の新車販売を禁止するとしており、バイデン政権の誕生で他の州が追随する可能性もある。この政策が追い風になるのが、新興EVメーカーのテスラやアップルカー(EV)の発売が期待されるアップルだ。
テスラはEVメーカーの代表格であり株価も高いが、自動車市場に占めるEVの割合はまだまだ低い。EV市場がさらに拡大していくことを考えれば、しばらくは高い株価が続くのではないだろうか。
アップルカーの発売時期は未定だが、携帯電話の概念を壊したアップルは、EV市場でも新たな価値を生み出し、そのブランド力がさらに評価される可能性がある。
4.NISAで使えるポイント制度をSBI証券と楽天証券で比較
SBI証券と楽天証券でNISAを検討するなら、ポイント制度も見逃せない。SBI証券でも楽天証券でも共通してポイント獲得ができる商品は投資信託だ。
投資信託の ポイント獲得 |
SBI証券 | 楽天証券 |
買付時 | ― | 積立で 楽天カード 決済額の1% (楽天カードより付与) |
保有中 | 銘柄により 月間平均 保有残高の 0.01%~ 0.20% |
残高10万円 ごとに4ポイント |
投資信託のNISA取引でポイント獲得機会が多いのは楽天証券
SBI証券ではTポイントが貯まり、楽天証券では楽天スーパーポイントが貯まる。どちらもネットショッピングなど日常生活で使いやすいポイントだ。SBI証券なら投資信託の保有中に、楽天証券なら投資信託の積立買付時と保有中どちらでも獲得できる。
楽天証券では投信積立時(買付時)に楽天クレジットカード決済を選ぶと、決済額に応じ楽天スーパーポイントが付与される。
楽天証券で投資信託の保有中にポイントを獲得するには、楽天証券と楽天銀行を口座連携させる「マネーブリッジ」に申し込んだうえで、「ハッピープログラム」にエントリーが必要だ。口座連携と言っても入金時などに楽天銀行を利用しなければいけないわけではない。口座連携は無料で申し込め、投資信託残高10万円ごとに4ポイントを獲得可能だ。還元率で表すと0.004%だが、口座連携することで楽天銀行の普通預金金利が通常0.02%(税引前)から常時0.1%(税引前)にアップする。普通預金の通常金利より5倍も高く、楽天証券でNISAをするなら楽天銀行も活用したほうがお得だ。
マネーブリッジ利用していない場合は、投資信託の残高50万円以上あれば、月々の保有額に応じてポイントが受け取れる。NISAでのポイント獲得機会の多さから考えれば、SBI証券よりも楽天証券のほうが魅力的かもしれない。
5.NISA口座の開設をSBI証券と楽天証券のどちらですべきか
NISA口座を開設する金融機関で、SBI証券と楽天証券のどちらが正解だという答えはない。何を重視するのかで選ぼう。
IPO投資や外国株投資で選ぶならSBI証券
SBI証券はIPO銘柄が多かったり、外国株式の投資先が豊富だったりと、主にNISAで株式投資をしたい人に向いている。外国株式に投資する時は、住信SBIネット銀行を利用すれば為替手数料を抑えられるメリットもある。売買手数料はSBI証券も楽天証券も変わらないため、株式投資がメインなら選択肢の多いSBI証券を選ぼう。
ポイント制度で選ぶなら楽天証券
楽天証券の強みは、ポイント制度だ。SBI証券よりポイント獲得の機会が多く、還元率が変わることもないためわかりやすい。SBI証券のTポイントも使い勝手はいいが、日本最大級のECモールである楽天市場でポイントを使えることに魅力を感じる人もいるのではないだろうか。
6.自分にとってのメリットを考えてNISA口座を選ぶ
SBI証券も楽天証券もそれぞれに特徴があるので、どちらでNISA口座を開設するほうが自分にとってメリットがあるのか考えよう。NISAは1人1口座までしか開設できないため、よく比較して検討することが大切だ。
執筆・國村功志
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®、証券外務員一種保有。
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