米国でバイデン新大統領が正式に就任し、世界的な株高の傾向が続いています。 そうした中、米国では本格的な決算発表シーズンを迎え、投資家の関心は、マクロからミクロへ移ろうとしています。日本でも1/25(月)から本格的な決算発表シーズンを迎えることになります。

そこで今回は、決算発表シーズンを前に、業績の計画超過や、見通しの上方修正を通じ、株価上昇が期待できる銘柄の抽出を行いました。直前四半期まで、市場予想を上回るペースで利益が拡大し、市場予想EPSが上昇している銘柄は好決算が期待できると考えられます。

好業績・株価上昇が期待できる銘柄を抽出

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

時価総額が1千億円を超える3月決算企業として先陣を切り、医療用不織布で最大手のホギメディカル(3593)が1/14(木)に決算発表を行いました。

日経平均採用銘柄で決算発表がもっとも早い企業は、1/26(火)に予定する日東電工(6988)です。なお、2/8(月)にはソフトバンクグループ(9984)、2/10(水)はトヨタ自動車(7203)の決算発表が予定され、発表社数ベースでは775社が予定される、2/12(金)が決算発表のピークになりそうです。

日経平均採用銘柄の今期予想純利益は会社予想ベースで前年比2割弱程度の減益になっています。ただ、市場予想ベースでは1割に満たない減益にとどまっており、仮に決算発表がその見通し通りに進捗した場合、計画を上回る利益となり、業績見通しを上方修正する銘柄が増えるものと予想されます。したがって、決算発表の時期は様子見ではなく、“期待を先取りする動きが優位”となり、日経平均株価は上昇基調に転じるのではないでしょうか。

そこで今回は、決算発表シーズンで計画超過や見通し上方修正が期待される主力銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行いました。条件は以下の通りです。

(1)東証上場銘柄であること。
(2)時価総額1千億円以上であること。
(3)3月決算、または12月決算の銘柄であること。
(4)1/25(月)~2/15(月)に第3四半期決算、または本決算を発表する予定の銘柄であること。
(5)業績予想を公表しているアナリストが3人以上付いている銘柄であること。
(6)今期予想EPSの市場コンセンサスが過去4週間で上昇している銘柄であること。
(7)今期予想営業利益の市場コンセンサスが増益であること。
(8)来期予想営業利益の市場コンセンサスが10%超の増益であること。
(9)直前中間期または第3四半期累計の営業増益率が(7)の予想増益率を上回っている(黒字転換はすべて優先)こと。

上記のすべての条件を満たす銘柄を、(9)の営業増益率が高い順に並べたものが図表1になります。

なお、“今期”は2021/3期(通期)、“来期”は2022/3期(同)で、(9)の“直前中間期”は2020/4~9期を分析対象にしています。また、12月決算銘柄について、ここでは“今期”を2020/12期(通期)、“来期”は2021/12期(同)とし、(9)の直前第3四半期累計は2020/1~9期を対象にしています。

計画超過や業績予想上方修正、株価上昇が期待される主力銘柄 計画超過や業績予想上方修正、株価上昇が期待される主力銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 計画超過や業績予想上方修正、株価上昇が期待される主力銘柄は!?
コード / 銘柄(3月決算) / 株価(円)(1/21) / 2020/4~9期営業増益率 / 通期市場予想営業増益率2021/3期 / 通期市場予想営業増益率2022/3期
< 9064> / ヤマトホールディングス / 2,579 / 333.2% / 65.9% / 13.9%
< 6407> / CKD / 2,577 / 112.8% / 0.1% / 95.9%
< 1963> / 日揮ホールディングス / 1,207 / 59.8% / 10.4% / 39.8%
< 4062> / イビデン / 5,080 / 98.5% / 65.9% / 27.9%
< 6013> / タクマ / 2,126 / 56.2% / 24.7% / 11.1%
< 7735> / SCREENホールディングス / 8,740 / 88.6% / 63.7% / 42.1%
< 8035> / 東京エレクトロン / 44,210 / 43.9% / 23.8% / 19.5%
< 3774> / インターネットイニシアティブ / 2,210 / 56.3% / 42.7% / 12.7%
< 6622> / ダイヘン / 5,030 / 20.8% / 7.3% / 20.0%
< 6146> / ディスコ / 36,850 / 35.6% / 29.0% / 17.6%
< 7729> / 東京精密 / 5,100 / 12.4% / 8.5% / 25.3%
< 4528> / 小野薬品工業 / 3,095 / 25.1% / 22.2% / 24.9%
< 6981> / 村田製作所 / 10,555 / 8.3% / 5.6% / 20.3%

コード / 銘柄(12月決算) / 株価(円)(1/21) / 2020/1~9期営業増益率 / 通期市場予想営業増益率2020/12期 / 通期市場予想営業増益率2021/12期
< 6723> / ルネサスエレクトロニクス / 1,309 / 黒字転換 / 851.1% / 41.9%
< 3064> / MonotaRO / 5,190 / 27.1% / 20.9% / 19.3%

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。

決算発表での注目ポイント

投資家として決算発表では、どのような点に注目すべきでしょうか。

そもそも、図表1の銘柄はなぜ、計画超過や業績予想の上方修正を期待できるのでしょうか。図表1で最上位のヤマトホールディングス(9064)を例にご説明したいと思います。

ヤマトホールディングス(9064)は1/21(木)現在、2021/3期の売上高として1兆6,460億円(前期比1.0%増)、営業利益は680億円(同52.1%増)の会社予想を公表しています。

Bloomberg調べでは、同社には12人のアナリストが各々独自に業績予想を公表し、2021/3期の営業利益予想は平均で741億円(前期比65.9%増)となっています。なお、この営業利益予想の741億円を、営業利益の「市場予想」や、「市場コンセンサス」、「市場平均」などと表現します。 株価はアナリストが付いている銘柄であれば、「市場予想」を前提に、ない場合は「会社予想」を前提に、動くことがあります。仮に、春に本決算が発表された時、通期の営業利益が「市場予想」の741億円を上回った場合、“計画超過”となり、その金額が大きいほど、株価は上昇しやすくなると考えられます。

図表1にあるように、同社は2021/3期(通期)の営業利益は市場予想では、前期比65.9%増とされていますが、上半期を終えた時点では、前年同期比333.2%増と、市場予想を上回る増益率になっており、実績が超過する可能性はその分大きいと考えられる訳です。ただ、今回発表される決算は第3四半期です。図表2にあるように、第3四半期累計(2020/4~12期)の市場予想営業利益は794億円弱(前年同期比58.5%増)であることから、まずは第3四半期の実績が、この市場予想を上回るかどうかが注目されることになります。

あとは、現在会社が公表している通期営業利益680億円が上方修正されるか否か、上方修正後の営業利益額が市場予想である741億円を上回るか否かが注目されることになります。

ちなみに、12月決算の銘柄について、今回発表されるのは本決算数値です。したがって、図表2のMonotaRO(3064)であれば、市場予想営業利益の前期比20.9%増以上の実績をあげられるか否かが大きなポイントになります。さらに、決算発表と共に多くの会社が次の年度の業績予想を公表しますが、同社であれば2021/12期の会社予想営業利益が、228億円(2020/12期の市場平均に対し19.3%増)を上回るか否かが重要になります。

なお、会社予想の営業利益は、ある意味「千差万別」です。実勢の見通しに対し慎重に出す会社が多いようですが、中には強気な数字を出す傾向の会社もあります。部門ごとの計画を積み上げた数字に近い場合もあれば、それに経営側の判断で数字が加減される場合もあります。したがって、期初の予想数字が市場予想を下回った場合、株価が下がるケースが多いですが、その銘柄の業績見通しをネガティブに考える必要のない場合もあり、注意が必要です。

また、業績の「発表」は会社側からだけとは限りません。日経新聞等のメディアが観測記事を出す場合もあります。特に決算発表シーズンが近づいてくると、それらの観測記事で株価が大きく動く場合があります。

今回ご紹介した銘柄のうち、インターネットイニシアティブ(3774)について、1/20(水)付日経新聞・朝刊で「営業益5割増(約90億円)、4~12月最高」という記事が掲載されました。典型的な観測記事です。図表2にあるように、同社の第3四半期累計営業利益の市場コンセンサスは87億円弱であり、記事の見通しはこれをやや上回る金額でした。このため、株価もやや上昇するという反応を示しました。

ここで重要なのは、5割増という見通しは確かに大幅増益予想ですが、市場予想との比較でみた場合、限定的であり、その分株価上昇も抑制される形になりました。また、今回の記事で90億円という営業利益がいったん織り込まれた形になったため、2/8(月)の決算発表後に株価が上昇しやすくなるには、(1)2020/4~12期の営業利益が90億円以上、(2)2021/3期の予想営業利益が前期比42.7%増以上の水準に上方修正となる等、少しハードルが上がった印象です。

1/22(金)の取引では、納入先である米インテル社の決算が予想を上回ったことを受け、イビデン(4062)が買い先行になりました。半導体需要の高まりは関連する企業業績にも追い風になると見られ、同社の他、SCREENホールディングス(7735)、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、東京精密(7729)、ルネサスエレクトロニクス(6723)などの半導体関連の決算発表も注目を集めそうです。

掲載銘柄の決算発表予定日および予想営業利益 掲載銘柄の決算発表予定日および予想営業利益
(画像=SBI証券)

図表2 掲載銘柄の決算発表予定日および予想営業利益
コード / 銘柄(3月決算) / 決算発表予定日 / 今上半期営業増益率 / 第3四半期累計(4~12月期)営業利益(百万円)2020/3期 / 第3四半期累計(4~12月期)営業利益(百万円)2021/3期予想 / 第3四半期累計(4~12月期)営業利益(百万円)増減
< 9064> / ヤマトホールディングス / 1/29(金) / 333.2% / 50,077 / 79,395 / 58.5%
< 6407> / CKD / 2/12(金) / 112.8% / 3,167 / 3,538 / 11.7%
< 1963> / 日揮ホールディングス / 2/12(金) / 59.8% / 13,451 / 17,758 / 32.0%
< 4062> / イビデン / 2/4(木) / 98.5% / 13,166 / 23,978 / 82.1%
< 6013> / タクマ / 2/10(水) / 56.2% / 6,108 / - / -
< 7735> / SCREENホールディングス / 1/28(木) / 88.6% / 7,397 / 12,629 / 70.7%
< 8035> / 東京エレクトロン / 1/28(木) / 43.9% / 167,164 / 216,894 / 29.7%
< 3774> / インターネットイニシアティブ / 2/8(月) / 56.3% / 6,060 / 8,688 / 43.4%
< 6622> / ダイヘン / 2/4(木) / 20.8% / 4,544 / 5,432 / 19.5%
< 6146> > / ディスコ / 1/26(火) / 35.6% / 25,669 / 34,790 / 35.5%
< 7729> / 東京精密 / 2/2(火) / 12.4% / 8,965 / 9,544 / 6.5%
< 4528> / 小野薬品工業 / 2/1(月) / 25.1% / 66,044 / 94,034 / 42.4%
< 6981> / 村田製作所 / 1/29(金) / 8.3% / 200,896 / 214,274 / 6.7%

コード / 銘柄(12月決算) / 決算発表予定日 / 今第3四半期営業増益率 / 通期営業利益(百万円)2020/12期 / 通期営業利益(百万円)2021/12期予想 / 通期営業利益(百万円)増減
< 6723> / ルネサスエレクトロニクス / 2/10(水) / 黒字転換 / 6,845 / 65,103 / 851.1%
< 3064> / MonotaRO / 2/2(火) / 27.1% / 15,839 / 19,147 / 20.9%

※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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