SDGsやパリ協定など環境保護についての方針はいくつかあります。しかし名前は知っているものの「内容はよく分からない」という人が多いのではないでしょうか。これからの時代は、環境保護がビジネスのみならず、私生活でも重視される時代になっていく可能性が高いです。今のうちに主要な環境保護方針についてしっかりと理解しておきましょう。

SDGs

環境保護方針はどうなっている?主要な方針の趣旨と進捗まとめ
(画像=sdecoret/stock.adobe.com)

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で2015年9月の国連サミットにより採択された国際目標のことです。「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現」するため、17のゴールを定めて2030年までの実現を目指しています。17のゴールの中に以下のような環境保護を目指したものがあります。

13:気候変動に具体的対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう

これらの目標に、企業や世界はどのような働きをしているのか、ご紹介したいと思います。

日本企業のSDGsへの取り組み

トヨタ自動車株式会社が公表している「Environmental Report 2020」によると、同社が行っている「トヨタ環境チャレンジ2050」を通じてSDGsの目標に貢献すると表明しています。トヨタ環境チャレンジ2050では、2050年までに新車1台あたりのCO2排出量を「2010年比で90%削減する」という目標を掲げています。

さらに電気自動車普及にも意欲的で、2025年までに累計3,000万台以上、2030年には年間550万台の販売が目標です。また生産する世界の工場では「2050年までにCO2排出をゼロにする」というチャレンジも行っています。短期的には、2025年までにCO2排出量を2013年比で30%削減、再生可能エネルギーによる電力導入率を25%にすることが目標です。

政府もSDGsに積極的

日本政府は、2016年に総理大臣を本部長とするSDGs推進本部を設置し、有識者との意見交換などを行っています。またジャパンSDGsアワードを創設し、目標に積極的に取り組む企業や地域を表彰する活動も実施。さらに自治体によるSDGs達成に向けた取り組みを公募し、優れた計画を立案した都市を「SDGs未来都市」と選定し各省庁から支援や資金的支援を行うとしています。

COP

COP(コップ)とはもともとConference of Partiesの略で「締約国の会議」という意味です。しかし環境保護の場では、1992年に国連で採択された大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる「国連気候変動枠組条約」に基づき毎年開催されている国連気候変動枠組条約締約国会議をCOPと呼んでいます。またCOPの後に番号を付け開催された特定の会議を指す場合も多い傾向です。

例えばCOP3は1997年に京都で行われた会議、COP21は2015年にパリで行われた会議を指しています。

温室効果ガス排出の実態

地球温暖化は大気中に含まれるCO2などの温室効果ガスによって引き起こされ、海面上昇や生態系、食料生産などへの悪影響が懸念されています。2019年度のCO2の排出量の多さを国別に見ると上位は以下の通りです。

順位国名排出量(トン)
1中国93億200万
2米国47億6,130万
3インド21億6,160万
4ロシア15億3,690万
5日本11億3,240万

パリ協定

パリ協定は、2015年にフランスのパリで行われました。COP21で採択された気候変動抑制に関する多国間の国際協定で、京都議定書に続く2020年以降の温暖化対策についての取り決めです。当時は、温室効果ガス排出大国の米国と中国も批准しました。しかし米国はのちに大統領となったトランプ氏の意向もあり離脱しています。

その内容は「地球上の平均気温上昇を、産業革命前と比べて2度より十分に抑え1.5度未満を目指す」というものです。各国が削減目標を作成して提出し、それを達成するための国内対策を行う義務を負っています。

日本の削減目標と進捗

日本は、2030年までに2013年時点と比べて温室効果ガス排出量を26%削減する目標を掲げ、2018年時点で12%の削減となっています。また2020年までに自然エネルギーの発電量を8%に引き上げるとの目標を掲げていました。しかし2017年時点で水力を除いた再生可能エネルギーの割合が16%となり、太陽光発電市場の活況を背景に目標を達成しました。

さらに政府は「2030年までに再生可能エネルギーの発電量割合を22~20%にする」という見通しも示しています。

各国の進捗状況

世界各国の進捗状況を資源エネルギー庁がまとめた資料で見ると、英国は堅調に目標ラインに沿う形で達成水準を保っています。一方フランスやドイツなどは、目標ラインよりやや上振れです。フランスはすでに電源の非化石化が進んでいるため大幅な削減要素がなく、ドイツは原子力比率を減らしたため、石炭依存から脱しきれていないことなどが原因と考えられています。

しかし欧州は他地域に比べて積極的に目標達成に取り組んでいることがうかがえ、EU全体で見ると目標ラインと同水準です。

京都議定書

1997年に京都で行われたCOP3で、先進国の温室効果ガス排出量を法的拘束力がある削減目標となる京都議定書が採択されました。温室効果ガスを2008~2012年の間に1990年比で約5%削減することを要求しています。さらに国ごとの削減目標も定めており、日本は6%、米国は7%、EUは8%の削減を取り決めました。

しかし2001年3月に米国が京都議定書に参加しないことを表明。さらに現在は世界最大のCO2排出国となった中国が、当時は途上国として対象となっていなかったことから実効性が危ぶむ声も多く聞かれました。

京都議定書の混乱からパリ協定へ

結局2004年にロシアが批准して2005年に京都議定書は発効することになり、日本をはじめ参加した国々は削減目標に取り組むことになります。米国が京都議定書に参加しなかったのは、中国やインドの経済発展に伴うCO2排出量の急増を見ると、途上国として京都議定書の枠組みから外されているのは「実情に沿っていない」と考えたからかもしれません。

しかし、現在の地球温暖化を招いたのは先進国が排出したCO2が原因です。まずは、そうした国が率先して温暖化対策に取り組むべきと議定書の中で合意されています。こうした各国の思惑の違いが京都議定書の混乱を招いたとの反省からか、この後に取り組むパリ協定に向けては各国の交渉が慎重に行われたようです。結果として各国が協調した実効性の高いパリ協定が生まれたといえるでしょう。

モントリオール議定書

モントリオール議定書は、オゾン層を破壊する恐れのある物質を製造したり消費したりすることを規制する目的で1987年にカナダのモントリオールで採択されました。これにより特定フロンなどの対象物質が1996年までに全廃されることが定められ、日本は1988年に生産および輸入を規制しています。ここで指定された物質は、ほぼ全廃となりました。

しかし、毎年行われているこの議定書の締約国会議においてオゾン層破壊が想像以上に進んでいることが問題となり、定期的に改正が行われています。新しいものでは、2019年に議定書のキガリ改正が発効され、各国は約30年をかけて代替フロンの使用率を8割以上削減することになりました。

環境保護方針は継続され続けるもの

環境保護方針は発効されたときに大きな注目を集めますが、時間の経過に伴い話題となることが少なくなります。しかし、問題が解決していない限りは継続して実施や検証が行われているのです。モントリオール議定書が採択から30年以上たった2021年現在も改正され続けている理由は、その問題がまだ解消されていないからです。

現在のSDGsやパリ協定も時間とともに忘れてしまうのではなく、その進捗をしっかりと見守るべきといえるでしょう。(提供:Renergy Online


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