省エネや再生エネルギーが重視されるなか、太陽光発電を導入したマンションが増えています。太陽光発電マンションのメリット・導入方法・補助金などをわかりやすく解説します。

太陽光発電を導入するマンションが増えている

戸建住宅の太陽光発電の導入事情 現在の普及率から初期コスト0円の新サービスまで
(画像=oka/stock.adobe.com)

マンションの太陽光発電の導入は、すでに入居者のいる既存物件、これから建てられる新築物件どちらでも可能です。

まず、既存マンションでは、屋上などへの太陽光パネルの設置が広がっています。発電した電力を電力会社に売って利益を得たり、共用部の電力に使ったりすることで電気代を抑えたりできます。自治体によっては、マンションの太陽光発電設置の費用を補助するところもあります。

一方、新築マンションでは、太陽光発電と高断熱性能などとの組み合わせによってエネルギー収支の実質ゼロを目指す「ZEH( ゼロ・エネルギー・ハウス)」対応物件の建設が増えています。

ZEHは、政府が「2050年までに温暖化ガスの実質ゼロ」を打ち出す以前から進められていました。国が再生可能エネルギー分野を成長戦略の柱に打ち出した今、さらにマンションの太陽光発電の導入が加速していくと予測されます。

マンションの太陽光発電の3大メリットとは

マンションの太陽光発電の導入は、オーナーと入居者の双方にとってメリットがあります。

メリット 1: 売電収入で賃貸経営が安定する

マンションの屋上などに設置した太陽光パネルで発電した電力を、電力会社に売電することで「家賃収入プラス売電収入」が入ってきます。これにより、賃貸経営の安定化につながります。

マンションの家賃収入は「空室リスク」や「家賃の下落リスク」があります。これに対して太陽光発電は、  余った電気を国が決まった期間、決まった価格で買い取ってくれる「固定価格買取制度(通称:FIT)」があるため安定的です。搭載している太陽光が10kW未満の場合は10年、10kW以上の場合は20年ですが、10kW以上の場合は発電量の30%を自家消費するという条件が着きます。

メリット2:共用空間や入居者の電気代が安くなる

マンションで発電した電力を建物内で利用することで「電気代を安くできる」メリットもあります。

具体的な電力の利用方法は2つあります。1つ目は、マンション敷地内の照明や共用空間の電灯などで利用する方法です。この選択では、オーナーの電気代の負担が軽減できます。2つ目の活用方法は、電力を入居者に割安で提供するというものです。入居者満足度がアップし、空室リスクが減る効果が期待できます。

国内のLNG不足などにより、2021年1月から電気代が急騰しました。このことをきっかけに、「電気代を安定的に安くしたい」というオーナーや入居者のニーズはさらに高まると予想されます。この流れは、マンションの太陽光発電に追い風になりそうです

メリット3:入居者の災害対策になる

最近では、豪雨や台風の影響で大規模停電が相次いでいます。また、電力不足や大地震なども大規模停電のリスクになります。電力会社からの電力供給がストップしてもマンション内に太陽光発電があれば、非常用の電力として使うこともできます。

一例では、 大京が手がけたZEH対応のマンションでは、災害による停電時でもエレベーターや館内の電気を7日間に渡って維持することが可能です。

マンションの太陽光発電の導入方法や具体例

マンションの太陽光発電の導入は、新築物件・既存物件どちらでも可能です。

新築マンションへの太陽光発電導入

新築マンションで太陽光発電を導入する場合は、経済産業省が2014年から推奨している 「ZEH(ゼッチ)」のスキームを使うケースが増えています。ZEHとは「ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、次の3つを組み合わせることでエネルギー収支の実質ゼロを目指すものです。

  1. 太陽光発電などの創エネ
  2. 最新機器による省エネ
  3. 高断熱性能

ZEH対応の住宅はこれまで戸建が中心でしたが、マンションなど集合住宅にも広がっています。ZEHの基準をクリアしたマンションは、国の補助金制度を利用することが可能です。

ZEH対応のマンション例としては、大京が2019年5月に完成させた「ライオンズ芦屋グランフォート」、三菱地所レジデンスが2021年11月に完成(第1工区)させる予定の「ザ・パークハウス 新浦安マリンヴィラ」などがあります。現時点でZEH対応のマンションは大手不動産会社の物件が中心ですが、今後は中小規模の物件にも広がっていく可能性があります。

既存マンションに 太陽光発電導入

太陽光発電用 のパネルや蓄電池などは、すでに建っている既存マンションへの設置も可能です。設置場所で多いのは新築マンションと同様に屋上です。発電した電力は、余った分の電力を販売する「売電」と、建物内の共有スペースや敷地内で利用する「自家消費」で利用可能です。

太陽光発電マンションに関連する補助金解説

マンションに太陽光発電を導入する建築主(オーナーや法人)のデメリットとしては 「初期費用の負担」が挙げられます。ただこの部分については、国や自治体の補助金を利用することで解消することが可能です。

「ZEH対応新築マンション」の補助金制度

ZEH対応の新築マンションを建てたい場合は、「経済産業省と環境省のZEH-M (ゼッチ・マンション)補助金」が対象になります。マンション向けのZEH-Mは、階層によって次の3つに分かれます。

名称階層※1補助割合※2補助上限
超高層ZEH-M21階建て以上2/3以内年間3億円(総額10億円)
高層ZEH-M6〜20階建て1/2以内年間4億円(総額8億円)
低中層ZEH-M1〜5階建て1戸あたり50万円年間3億円(総額6億円)

※1 住宅用途部分の階層です。
※2 補助対象経費に対する補助割合です。建設費などは含まれません。
※2020年公募の内容です。2021年以降、内容の変更または廃止になる可能性もあります。

ZEH-Mでは、太陽光パネルそのものは助成の対象になりませんが、その効果を高める高断熱窓、高断熱外壁、高効率の空調・換気・照明などが対象になります。間接的な助成ではありますが、結果的にコストを抑えることが可能です。

SII「ZEH補助金について」資料
(引用:SII「ZEH補助金について」資料)

ちなみにこのZEH-M補助金は、事前に公募して採択された場合のみ利用できます。なお2020年の公募開始は、低中層ZEH-M(1次公募)は5月上旬開始、超高層と高層のZEH-Mは7月上旬開始でした。申請件数が予算額を超えた場合、審査によって採択案件が決定されます。

注意点としては、建築主が個人の場合、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)の「ZEHデベロッパー」に登録している業者に発注しなくてはならないことです。「ZEHデベロッパー登録業者」や「ZEH-M補助金」の最新情報については、こちらのSIIの公式サイトでチェックできます。

それ以外のマンションの補助金制度例

ZEH-M対応以外のマンションについては、各自治体の補助金制度などをチェックするのがよいでしょう。対象の自治体に必ずしも該当する制度があるとは限りませんが、マンションに使える太陽光発電の補助金制度は増えている感があります。

一例としては、神奈川県ではマンションに導入する太陽光発電システムに対する補助金制度を実施しています。補助対象となるのは、分譲マンションの管理組合や賃貸マンションを所有する個人や法人です。補助割合は対象経費の1/3(上限100万円)。ただし、発電した電力を売電せずに、マンション内の共有部分で消費することが条件です。

また、東京都では新築マンション(床面積2,000平方メートル未満)において1戸あたり30万円の助成制度を設けています(名称:「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」)。また、同じく東京都では、集合住宅・一般住宅の太陽光発電設置の初期コストを0円(事業者負担)にする制度も行っています。

※いずれも2020年に実施の制度です。今後、継続するかは未定です。

「2050年温暖化ガス実質ゼロ」達成には太陽光マンション増加が必須

マンションやオフィスビルなどの大型の建物は電気使用量が多いため、温暖化ガスの発生量が多いといわれます。日本が国際的に公約した「2050年までに温暖化ガス実質ゼロ」を達成するためには 、太陽光発電を導入したマンションやオフィスビルを増やしていくことが必須といえます。そう考えると近い将来、「マンションに太陽光発電設備があるのが当たり前」という時代がやってくるのかもしれません。(提供:Renergy Online


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