省エネ住宅として国が普及を目指しているのが「ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」です。エネルギーをつくることができるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)は、補助金も支給されるなど個人にとってもメリットが多い住宅です。本記事では、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の概要と普及すべきエコ商品について紹介します。
ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)のエネルギー削減事情とは?
はじめにZEHのエネルギー削減事情を確認しておきましょう。ZEHとは、ゼロ・エネルギー・ハウスの頭文字をとったもので、資源エネルギー庁では以下のように定義しています。
「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」
出典:資源エネルギー庁
経済産業省が2020年11月30日に発表した「2030年目標とZEHの普及推進策」によると、ZEHの目標と進捗状況については以下の通りです。
【目標】
・2020年までにハウスメーカーなどが新築する注文戸建住宅の半数以上
・2030年までに新築住宅の平均
【進捗】
・2019年度の新築注文戸建住宅(約28万戸)におけるZEH供給戸数実績は5.7万戸(20.5%)で、目標達成にはさらなる努力が必要
出典:経済産業省 資源エネルギー庁
新築注文戸建のZEH化率の推移
2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | |
---|---|---|---|---|
ハウスメーカー | 27.4% | 34.4% | 42.4% | 47.9% |
一般工務店 | 4.7% | 6.2% | 7.6% | 8.5% |
全体 | 11.9% | 15.4% | 19.2% | 20.5% |
※経済産業省資料を基に作成
ZEH化率は、年々向上しているのが分かります。しかし全体では20.5%で「2020年までに新築注文戸建住宅の半数以上に普及させる」という目標には遠く及ばないのが現状です。
ZEH化住宅補助金の概要
ZEH化住宅の建築を目指している人は、条件によって各種の補助金が用意されているため、活用するとよいでしょう。経済産業省・国土交通省連携事業「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化支援事業」の2021年度予算案における事業内容と補助金額は以下の通りです。
(1)戸建住宅(注文・建売)において、ZEHの交付要件を満たす住宅を新築・改修する者に対する補助:60万円/戸
(2)ZEH以上の省エネ、設備の効率的運用等により再エネの自家消費率拡大を目指した戸建住宅(ZEH+)に対する定額補助:105万円/戸
(3)1と2に系統連系(編注:一般的な電気を運ぶ電線網につなぐこと)対応型蓄電池を設置、低炭素化に資する素材(CLT(直交集成板)等)を一定量以上使用、又は先進的再エネ熱利用技術を活用する場合に別途補助:蓄電池2万円/kWh(上限額20万円/台)等
(4)既存戸建住宅の断熱リフォームに対し1/3補助(上限120万円/戸。蓄電池、電気ヒートポンプ式給湯器、熱交換型換気設備等への別途補助)
出典:戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化支援事業
事業の実施期間は、2021~2025年度までです。それでは、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)のエネルギー削減に役立つ主なエコ商品を紹介します。
HEMS
HEMS(ヘムス)とは、Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメントシステム)の頭文字をとった言葉です。電気の使用量を「見える化」し、家電機器を自動制御することによりエネルギーを節約できる管理システムのことを指します。政府は、2030年までにすべての住宅にHEMSを設置することが目標です。
ZEH化住宅にもHEMSは欠かせません。具体的な活用方法は、建物の遮断性を高めることによってエアコンの消費量を減らし効率の高い給湯器やHEMSを活用してエネルギー消費量を削減します。減らした分を太陽光発電や燃料電池で生産した電気を使用し、トータルでゼロエネルギー住宅を目指します。
太陽光発電システム
太陽光発電システムは、今後の再生可能エネルギーの中心を担うエコ商品です。ZEH化住宅に必要な住宅用太陽光発電協会公式サイトによると太陽光発電システムは、以下のような仕組みと説明されています。
「太陽の光エネルギーを受けて太陽電池が発電した直流電力を、パワーコンディショナにより電力会社と同じ交流電力に変換し、家庭内のさまざまな家電製品に電気を供給する」
出典:太陽光発電協会
発電電力が消費電力を上回れば、逆に電力会社に送電することによって電気を買い取ってもらうことができます(余剰売電といいます)。反対に悪天候により発電した電力では足りない場合や夜間などは、従来通り電力会社の電気を使うことが可能です。電気のやり取りは、自動的に行われるので大変便利なシステムといえます。
家庭用蓄電池
携帯電話やノートパソコンにも入っている蓄電池を大型化した家庭用蓄電池は、電気をバッテリーに貯めておき、好きなときに使用できます。蓄電池は、太陽光パネルと組み合わせることによって、効果が高くなる点がメリットです。また台風や地震などの災害で停電が起きたときも、家庭向け非常用バッテリーとして使うことができます。
災害時は、地域により長期間にわたって電気が使えない場合もあるため、いざというときの備えにもなるでしょう。蓄電池の購入には、補助金を支給する自治体もあります。補助金は、市区町村別に募集が行われ予算の上限に達した場合はその時点で終了となるため、年度が変わったら早めに購入して申請することが大事です。
例えば東京都の2020年度の補助金は、2020年9月15日~2021年3月31日までが申請期間になっています。補助対象機器は蓄電池システムかつ補助率は機器費の2分の1です。
電気自動車
電気自動車は、今後世界的に普及していく可能性が高いエコ商品の一つです。米国のバイデン大統領が4年で2兆米ドル(1米ドル105円のレートで210兆円)の環境投資を表明し、その対象に電気自動車が含まれています。日本では、2020年10月26日に菅首相が所信表明演説で2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする目標を掲げました。
この目標を達成するため「電動車両の割合を2030年までに50~70%にする」としていた政府目標を「2030年代半ばに100%」とする意向を表明しています。グローバルインフォメーションが発表した市場調査レポートによると、世界の電気自動車インフラ市場は2020年の342万台から2021年には418万台に達する予測です。
ZEH化住宅に、電気自動車の充電設備を付ければ、自宅で生産した電気で充電することも可能になります。ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の駐車スペースに電気自動車を収納すれば、エコ社会に相応しい理想的な形になるでしょう。
エコキュート
エコキュートとは、電気を使ってお湯を沸かす給湯器のことです。これまでお湯を沸かすのに一般的にガスが使用されていましたが、ランニングコストが安いエコキュートが近年人気を集めています。エコキュートは、大気熱をヒートポンプ内にある自然冷媒に集め、その熱でお湯を沸かす仕組みです。パナソニックのホームページによると以下のような手順でお湯がつくられます。
- 吸い込まれた大気熱を、空気熱交換機で自然冷媒が吸収する
- 熱を吸収した自然冷媒は圧縮機で圧力をかけられ高温になる
- 水熱交換機では高温になった自然冷媒が熱を水に伝え、お湯をつくる
- 熱を伝えられた水はお湯に変化し、貯湯ユニットへ貯められる。キッチンやお風呂でたっぷりのお湯を使える
- 水熱交換機で熱を水に奪われた自然冷媒は膨張し、空気熱交換機で大気熱を吸収する。1.に戻る
2019年度のZEHにおける給湯器別導入状況では、エコキュートが64.2%を占めています。
ここまで、ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)のエネルギー削減事情と普及すべきエコ商品について見てきました。ZEH化住宅の普及は、まだ道半ばです。2020年の目標は達成できませんでしたが、次の目標となる2030年に向けて官民および個人が一体となって普及に努力することが求められます。エネルギーの削減に役立つエコ商品も順次登場する可能性が高いため、期待したいところです。(提供:Renergy Online)
【オススメ記事 Renergy Online】
・太陽光発電投資の利回りとリスク対策、メリット、儲かる仕組みを解説
・セブン-イレブン、スタバなど企業の紙ストロー導入が意味するもの
・Googleが取り組む再生可能エネルギー対策とは
・RE100とは?Apple、Google、IKEAなど世界的企業が参画する理由と実例
・ESG投資とは?注目される理由と太陽光発電投資との関係性