要旨

● 10‐12月期の法人企業景気予測調査を見ると、20年度計画では、売上高が前回調査からさらに下方修正も、海外経済の持ち直し等により、経常利益が製造業では前回調査から小幅上方修正。

● 前回調査から売上高の上方修正率が大きかった業種は「その他の物品賃貸」「繊維工業」と続く。「その他の物品賃貸」には新型コロナに関連する医療・福祉用具賃貸に関連する業種が含まれている可能性がある。「繊維工業」は、新型コロナの感染予防対応に関連した不織布の増産等で上方修正されたと推察される。「職業紹介・労働者派遣」や「石油・石炭製品」「宿泊・飲食サービス」も小幅の上方修正。GoToキャンペーン実施に伴う移動や接触を伴うビジネスの需要が持ち直したことが予想される。

● 前回調査から経常利益の上方修正率が大きかった業種は「農林水産」「その他物品賃貸」「職業紹介・労働者派遣」「その他サービス」と続く。「農林水産」は、今年は12年ぶりの台風上陸ゼロ等により自然災害が少なかったことが影響している可能性がある。「その他サービス」は、新型コロナの感染予防対応に関連した建物の除菌等で建物サービス業等が上方修正されたと推察される。また、これ以外にも、製造業では金属市況好転の恩恵を受けた「金属製品」、デジタル化の恩恵を受けた「情報通信機械」、非製造業では巣籠の恩恵を受けた「小売」等が上方修正されていることにも注目。

● 12月短観の収益計画(大企業)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

情報
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製造業で利益計画が上方修正

12月10日に公表された10-12月期法人企業景気予測調査は、 11月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期業績計画の修正度合いを予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、1月下旬からの四半期決算発表でコロナ渦でも今年度計画 の上方修正 が見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業(全産業、除く金融)の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、 20年度は前回調査から下方修正計画となっている。このことから、四半期決算でも売上高が上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益は、製造業で 前回調査では前年比▲31.4%の減益計画となっていたものの、 海外経済の持ち直しなどにより、 今回は▲31. 3%と前回調査から小幅に上方修正されている。このことから、1月下旬からの四半期決算発表では、多くの業種で減益計画が出てくることが予想される中、計画が上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。

第一生命経済研究所
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上方修正期待の「その他物品賃貸」「繊維」「職業紹介・労働者派遣」「非鉄金属」

以下では、1月下旬からの四半期決算で売上高の上方修正が期待される業種を見通してみたい。下表は 20年度の業種別売上高計画前年比を前回7-9月調査と今回10-12月調査で比較し、この3ヶ月の修正状況を見たものである。

結果を見ると、 20 年度に増収計画の業種はないものの、前回調査から最も上方修正率が大きかった業種は「その他の物品賃貸」であり、前年比で+5.5ptの上方修正となっている。それに続くのが「繊維工業」で同+3.8ptの上方修正となっている。

そこで「その他の物品賃貸」を詳細に見てみると、 映画・演劇洋書道具、映写機、映画フィルム、貸衣装、レンタルブティック、テレビ、本、楽器、美術品、布団、植木、花環、ピアノ、医療・福祉用具、車いす、等の賃貸業が含まれる。 したがって、新型コロナに関連する医療・福祉用具賃貸に関連する業種が上方修正となっている可能性が推察される。また「繊維工業」については、各種報道から類推するに、新型コロナの感染予防対応に関連した不織布の増産等で上方修正された可能性がある。

さらに、「石油・石炭製品」や「宿泊・飲食サービス」「職業紹介・労働者派遣」も減益ではあるが、小幅の上方修正となっている。これは、GoToキャンペーン実施に伴う移動や接触を伴うビジネスの需要が持ち直したことが予想される。なお、「非鉄金属」の上方修正は金属市況の回復が貢献してることが推察される。

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増益計画は「金融・保険」のみ

続いて、経常利益計画から20年度の業績上方修正を牽引することが期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、増益計画となっているのは「金融・保険」のみであり、業務効率化等に伴うコスト減が主因と推察される。なお、黒字転換の「石油・石炭製品」は、原油価格反転に伴うマージン改善や在庫評価損が縮小したことが予想される。

そこで、20年度に減益計画も前回調査から最も上方修正率が大きかった業種を見ると「農林水産」であり、前年比で+44.3ptの上方修正となっている。それに続くのが「その他物品賃貸」「職業紹介・労働者派遣」「その他サービス」となっている。

まず「農林水産」について詳細に見てみると、 今年は本来秋に多い台風上陸が12年ぶりにゼロとなるなど自然災害が少なかったことが影響している可能性が推察される。また「その他サービス」については、「速記・ワープロ入力・複写」「建物サービス」「警備」等が含まれることからすれば、新型コロナの感染予防対応に関連した建物の除菌等で建物サービス業等が上方修正された可能性がある。さらに、これ以外にも製造業では金属市況好転の恩恵を受けた「金属製品」、デジタル化進展の恩恵を受けた「情報通信機械」、非製造業ではステイホーム等の恩恵を受けた「小売」等が上方修正されていることにも注目だろう。

なお、日銀が本日公表した12月短観の収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、12月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。(提供:第一生命経済研究所

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第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
首席エコノミスト 永濱 利廣