特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

さまざまなメディアで執筆を続け、2021年1月に5作目の著書が発売。コロナ禍でも忙しく過ごす松原昌洙さんは2011年に株式会社中央プロパティーを立ちあげ、スタートダッシュを期して不動産大手のセンチュリー21にフランチャイズ加盟した。著作で取り扱うことの多い共有名義不動産と借地権に関わる仲介業を一番の強みとし、徐々に規模を拡大。2018年から3年連続でセンチュリー21の表彰店舗に選出されており、昨年4月に緊急事態宣言が発令されてからはオンライン対応を強化するなど、未曾有の状況にも迅速に適応している。

(取材・執筆・構成=安田勇斗)

株式会社中央プロパティー
(画像=株式会社中央プロパティー)
松原 昌洙(まつばら・まさあき)
株式会社中央プロパティー代表取締役
1970年静岡県生まれ。
不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有名義不動産のスペシャリストで、2021年1月に5作目となる著書『[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!』が発売された。

共有名義不動産と借地権のトラブルに精通

――2021年1月に自身5作目の著書が発売されました。執筆活動はいつ頃からされているのでしょうか?

記事やブログの執筆、書籍の制作はブランディングを兼ねて6年ぐらい前から続けています。幻冬舎ゴールドライフオンラインや朝日新聞で連載させていただいたり、週刊誌や専門誌でも執筆させていただいたりしています。

――テーマは得意としている共有名義不動産が多いのでしょうか?

相続をきっかけとした共有名義不動産と、借地権ですね。借地権は、地主さんに地代をお支払いして建物を建てるなどのお話ですが、権利が混在する難しい内容でトラブルになることも多く、そういう場合の対処法などを書いています。

――2011年の会社設立時から共有名義不動産と借地権を得意分野としていたのでしょうか?

そうですね。私は会社設立前も不動産会社に勤務していて、共有名義不動産や借地権に関するトラブルなどに関わっていました。そうした中、相続前後の対策、親族間や地主さんとの問題などは本当に大変なので、解決できるようにサポートする専門会社があったらなと思っていたんです。それで自分で会社を立ちあげました。

――ちなみに、創業時からセンチュリー21にフランチャイズ加盟していたのでしょうか?

はい、創業して間もなくです。知名度のない中央プロパティーよりも、センチュリー21と入っていたほうがお客さんに安心していただけますし、また同業者の情報をキャッチしやすいので加盟させていただきました。

――2018年から2020年まで3年連続で、全国の上位4%が選出されるセンチュリー21の表彰店舗に選出されています。

年間の売上や仲介手数料などで良い数字を残し、評価していただいたのでうれしく思います。ただ、自分たちから発信するのは少し偉そうな感じがして控えているんです(笑)。

――そうなんですね(笑)。御社は不動産の仲介を軸に、調査や投資戦略の提案なども請け負われていますが、共有名義不動産と借地権以外にも強みとしているところはありますか?

我々は仲介をメインとした売主と買主の間に立つマッチング業者で、取り引きを重ねてきたことで、独自の投資家ネットワークを構築しています。日本全国、海外も含めて幅広いネットワークがあるので、ニッチな物件であっても、入札によってマッチする買主をスピーディーに見つけることができます。

また不動産調査のプロである不動産鑑定士、法律のプロである弁護士の先生、家族信託などのスキームを作る司法書士の先生、税関係でしたら税理士の先生と、そういう方々とのネットワークを活用するために社団法人(一般社団法人相続総合支援協会)を立ちあげました。弊社にいらしたお客さんに税についても聞きたいと言われたら税理士の先生を紹介したり、すでに相続でトラブルが発生していたら弁護士の先生に同席していただいたり、トータルでサポートできるところも我々の強みだと思います。

[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!
5作目となる著書『[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!』(画像=クロスメディア・パブリッシング)

コロナ禍だから下火になったということはない

――現在コロナ禍にありますが、その影響や、実施している対策などはありますか?

オンラインでの面談を希望される方が増えたので、対応できる体制を早々に整えました。ただ、不動産の賃貸はオンラインだけで完結できるものの、売買契約は非対面だけではできないので、事務所での対面にあたって、サーキュレーターを回して換気をしながら、お客さんとはアクリル板越しにお話しています。

不動産業界全体で言うと、コロナ禍だから下火になったということはないですね。逆に、郊外なんかは活性化した印象もあります。リモートワークの普及をきっかけに、都内の狭小な部屋から、郊外の広々とした部屋に移った方がかなりいらして。

――郊外のにぎわいに反比例して、都心から離れていく人も増えているのでしょうか?

1月に大阪市の路線価の減額補正が発表されました。コロナだけでなくインバウンド需要の減少もあってだと思いますが、このタイミングで地価の見直しが入ることからも、そういう傾向にあるんじゃないかなと。ただし、決して大きな流れではなく、大勢に影響はないと思います。

――2020年4月に緊急事態宣言が発令された際、経済衰退が懸念されていましたが、すでに不動産業界は回復しつつあるのでしょうか?

あのときは、不動産業界全体が「いったいどうなるんだろう」と思ったんじゃないでしょうか。でも1カ月経った頃には「何も影響がなかったな」と。物件のご案内も、360度カメラでお客さんにイメージをつかんでいただけますし、オンラインでも十分にできます。賃貸の契約も、物件を見に行けないから契約しないではなく、見に行けなくても写真や映像で確認できるから契約する、という流れになってきました。

もともと不動産業界はいろいろなことがアナログでしたから、コロナはITに目を向ける、ある意味でいいきっかけになったと思います。

――最後に、この先の目標をお願いします。

漠然とした目標になりますが、相続問題のプロフェッショナルである我々のことをもっと多くの方に知っていただくことです。

親が亡くなったり、親族の身に何かが起きたり、あるいは自分が亡くなってしまったり、相続のトラブルは身近に必ずと言っていいほどよく起こる問題です。親族間でいろいろな感情が絡み合い、非常に大きなストレスにつながる可能性もあります。例えば2人兄弟が土地を相続したとして、単純に2分割はできません。そしてどちらか一方が住んでいるとしたらあえて引っ越そうとはしないですよね。

そうした難しい問題が起きたら、たくさんのトラブル解決に関わらせていただいた”専門会社“である我々にぜひお任せしてほしいです。仲介の立場だからこそ提案できること、解決に貢献できることがたくさんあるのでぜひご相談ください。