肉
(画像=PIXTA)

イスラエルのスタートアップ企業アレフ・ファーム社(Aleph Farms)が世界初の「培養肉」のリブアイ・ステーキを「印刷」した(参考)。

日本では「サーロイン・ステーキ」の方が有名だが「リブアイ・ステーキ」といえばステーキの本場アメリカではステーキに最もふさわしい部位とも言われている。

培養肉はこれまでミンチ状でしか実現できていなかった。昨年シンガポールが世界で初めて販売を承認した培養肉もチキン・ナゲットであり「ステーキの食感」を実現するには技術的にあともう一歩の飛躍が必要だった。

それが今回実現した。どうやったのか。「3Dバイオ・プリンティング」で生きた細胞を作成し培養育成したのである。

「印刷」したリブアイ・ステーキは従前よりも厚めのカットで「屠殺肉」と同様の筋肉と脂肪を内蔵し、柔らかさとジューシーさを実現した。

アレフ・ファーム社の共同創業者で最高科学顧問のレヴェンバーグ教授によれば「3Dバイオ・プリンティング」の将来を考えればチャンスは無限大だという。

今後はあらゆるタイプのステーキを生産できるようにすることを計画している同社がターゲットにしている市場はアジア、特に日本である。販売基盤の確立のために三菱商事株式会社と提携を結んだ(参考)。

そして同社に出資をしているのが穀物メジャーのカーギルだ(参考)。世界のタンパク質の需要が今後30年間で70パーセント増加することを見越して2019年に同社に投資することを発表した。

国際連合(UN)において今後50 年間の人口増及び食糧や水の供給が課題となるとの予測が示されている。

食物の生産には水が大量に必要だ。1キログラムの小麦を生産するのに500~4000リットルの水が必要とされている。

水の消費量が飛びぬけて多いのが「チョコレート」「牛肉」そして「羊肉」である(参考)。1キログラムの牛肉を生産するために15,415リットルの水が必要となる。

それが「培養肉」であれば現在の食肉生産より10分の1の水、土地、エネルギーでできる(参考)。

世界各地で起こってきた紛争も実は「水」を巡るものであったことも多い。中東問題も然りである。中東勢における大きな騒動の1つである「ゴラン高原」を巡る本当の争点が「水」であったことはこれまで弊研究所が述べてきたとおりである(参考)。

そして、アメリカの「穀物メジャー」は世界の「食」を仕切ってきた。穀物、あるいはより広い意味での食糧は米国勢にとって文字どおりの「戦略物資」であり、国益にかなった形でそれを世界中に配分することにより、米国勢のパワーを保ってきたのが現実である(参考)。

「無屠殺」の牛肉であるかどうかという新たな「基準認証」ビジネスへと発展することになるだろうか。今後も注視して参りたい。

前回のコラム:「トルマ」の戦い ~「食」を巡る地政学的リスク~

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

グローバル・インテリジェンス・ユニット Senior Analyst
二宮美樹 記す