株式投資における投資先の選定基準として、近年急速に存在感を示しているのがESGという評価基準です。ESG投資の格付け機関は、日本企業をどの程度評価しているのでしょうか。日本企業の現状評価と、ESG投資格付けでAAA(トリプルA)評価を受けた8社のESGの取り組みを紹介します。

ESG投資格付けで日本企業はどう評価されているか

国内最大の機関投資家GPIFはESG投資にどのように取り組んでいるのか
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

ESG投資とは、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3つのテーマに対する取り組みが高いと評価された企業に投資することです。ESG投資格付け機関として有名なのが、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)とFTSE Russellです。この2社は、日本企業をESG投資格付けにおいてどのように評価しているのでしょうか。

▽FTSEによる世界地域別ESG平均スコア

国・地域環境(E)社会(S)ガバナンス(G)総合スコア
欧州3.43.33.93.5
アメリカ2.52.43.72.8
カナダ2.82.64.13.1
オーストラリア2.82.94.23.3
アジア22.81.82.2
日本2.21.82.52.2

出典:野村総合研究所(2018年6月時点の数値)

まずFTSE Russellによる日本企業の格付けは世界に比べて低く評価されています。総合スコアではアジアと並び最下位です。とくに社会スコアが1ポイント台と低迷しています。欧州諸国がESGに熱心なことは知られていますが、日・米・中3ヵ国はさらに努力が求められる水準といえます。

一方、MSCIジャパンによる個別企業の評価は、最上位AAAに評価された企業が全体のわずか3%にとどまっています。以下、AAが11%、Aが24%、BBBが27%、BBが23%、Bが11%、CCCが2%と続きます。中間のBBBが最も多くなっており、日本企業の今後の努力によってはまだまだ伸びる可能性はありそうです。

AAA評価を受けた8社のESG活動の概要

では、代表的なESG指数である「MSCIジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数」でAAA評価を受けた8社(2020年12月時点)のESGに対する具体的な取り組み方を、各企業の公式サイト情報を参考にみてみましょう。(株価は2021年2月15日終値)

ソニー(6758)

電気機器大手ソニーは、トリプルA企業に相応しいさまざまなESG活動を展開しています。「環境」では、「Road to Zero」と題する計画を策定し、2050年までに環境の負荷をゼロにすることを目標にしています。

「Green Management 2020」というプロジェクトでは、事業所での温室効果ガス総排出量の削減や、再生可能エネルギーの国内外での積極的な導入を表明しています。プロジェクトは5年ごとに見直され、「Green Management 2025」では、事業所の温室効果ガス5%削減や、再生可能エネルギーに由来する電力の使用率を15%に引き上げる目標を設定しています。

「社会」では、「新型コロナウィルス・ソニーグローバル基金」を設立し、医療や教育を支援。「ガバナンス」では社外取締役を積極的に導入するなど、日本を代表する企業として相応しい活動ぶりです。
【株価】1万1,970円【配当金】50円(2021年3月期予想)【配当利回り】0.42%

オムロン(6645)

精密機器大手オムロンは環境ビジョン・方針に則り、気候変動への取り組みを強化しています。「環境ビジョン グリーンオムロン2020」というプロジェクトでは、「地球環境に貢献する商品・サービスの提供」をはじめとする5つのオムロングループ環境方針や、「温室効果ガス排出削減」など6つのオムロングループ環境目標を策定しています。

「ガバナンス」では、監督機能の強化を目的に、取締役会の下に「コーポレート・ガバナンス委員会」を設置し、コーポレート・ガバナンスの継続的進化を目指すとしています。
【株価】9,750円【配当金】84円(2021年3月期予想)【配当利回り】0.86%

積水化学工業(4204)

化学大手の積水化学工業は、「環境」への貢献として「気候変動への対応」「資源の有効活用」「水資源の保全」を目標テーマに掲げています。また「社会」への貢献では「ダイバーシティマネジメント」「検査薬システム」「高齢者向け住宅」「介護・自立支援設備 wells」、「ガバナンス」ではリスクマネジメントやCS品質の強化などを打ち出しています。

住宅を手掛ける積水グループならではの貢献の仕方が垣間見えます。
【株価】2,041円【配当金】47円(2021年3月期予想)【配当利回り】2.30%

アズビル(6845)

電気機器大手アズビルは、「環境」への取り組みがとくに評価されています。同社の温室効果ガス削減量は2018年で13%削減していますが、2030年には30%削減、2050年に100%削減と、具体的な数値目標を公表しています。

さらに省エネへの取り組みを広く知ってもらうために、藤沢テクノセンターで省エネ見学会を実施している点がユニークです。また船舶事業で培ったノウハウを生かし、生物多様性保全にも貢献しています。
【株価】5,000円【配当金】50円(2021年3月期予想)【配当利回り】1.0%

国際石油開発帝石(1605)

原油・ガス開発生産国内最大手の国際石油開発帝石は、「2050ネットゼロカーボン社会に向けた経営の基本方針」を策定しています。基本方針に絡む5つの事業の柱として、「上流事業のCO2低減」「水素事業の展開」「再生可能エネルギーの取組強化と重点化」「カーボンリサイクルの展開と新分野事業の開拓」「森林保全によるCO2吸収の推進」を掲げています。

気候変動対策については2050年までに絶対量ネットゼロが目標です。
【株価】769円【配当金】24円(2021年12月期予想)【配当利回り】3.12%

住友化学(4005)

老舗化学メーカーの住友化学は、「環境」では温室効果ガス削減に積極的に取り組み、気候変動問題の解決に向け、「リスクへの対応」と「機会の獲得」の両面から取り組んでいます。「社会」では、関係会社に大日本住友製薬があることから、「医療アクセス向上への取り組み」や「医療機関・患者団体との適切な関係性」を重視しています。

「ガバナンス」では、税の透明性を重要課題としています。租税回避を目的としたタックスヘイブンは利用せず、事業を行っている国や地域で適切に納税することで地域の経済発展に貢献したいという考え方です。
【株価】516円【配当金】12円(2021年3月期予想)【配当利回り】2.33%

イビデン(4062)

イビデンは、CSR(企業の社会的責任)の向上を目指してきましたが、2018年にESG経営を始め、環境・社会・ガバナンスの視点で、外部から高い評価を受けられるレベルまで活動を進めています。さらに同社は、グループの事業領域を生かし、SDGsへも積極的に貢献しています。

例えば、ゴール7の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」という目標に対しては、同社の起源である水力発電所、および太陽光発電などのソリューション事業で再生可能エネルギーの供給に貢献しています。
【株価】5,040円【配当金】35円(2021年3月期予想)【配当利回り】0.69%

ダスキン(4665)

清掃・衛生用品レンタル大手のダスキンは、「安全・安心・品質」「人材」「環境」「地域・社会貢献」の4つを重点テーマに定めて、CSR/ESG活動に取り組んでいます。環境マネジメントの分野では、環境負荷の少ない商品・サービスの設計・開発・選択を行っています。

「ガバナンス」では、2017年に取締役評価検討会を設置し、執行役員制度を導入しました。ガバナンス強化が実を結び、現在では社外取締役が取締役の33%、取締役に占める女性の割合が22%となっています。
【株価】2,881円【配当金】40円(2021年3月期予想)【配当利回り】1.39%

日本株式市場におけるESG投資の今後

地球環境の悪化が顕著になり、ESGやSDGsへの企業の取り組み強化が世界的に求められています。その流れから、これからの株式市場でESGが重要な物色テーマになることは間違いないでしょう。ここにあげたトリプルA評価8銘柄が市場でどのように評価されるのか注目したいところです。

※本記事はESG投資の格付けで評価が高い企業を紹介したものであり、当該銘柄への投資を推奨するものではありません。(提供:Renergy Online


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