東京株式市場が波乱の動きです。

日経平均株価は3/18(木)には30,485円まで値を回復しましたが、3/19(金)~3/24(水)は4営業日続落で計1,811円安となりました。米長期金利が上昇して世界的に株価の動きが不安定となる中、日銀がETF(上場投資信託)の購入計画を変更したため、不安心理が増幅する形になりました。

日経平均株価の先行きが気になる所ですが、3/26(金)時点で一目均衡表は下値支持ラインから反発しています。景気や企業業績の回復はこれからが本番とみられるため、そろそろ狙いを定めて押し目買いに出るタイミングといえるかもしれません。

そこで今回は、“中期的な視点”からみた銘柄戦略として、“買いチャンス到来”となりそうな銘柄を探ります。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

業績相場を控えた“買いチャンス”で、物色対象の考え方は?

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

株式市場で時折、大幅安の場面が訪れる大きな理由は、“金融相場”が終わろうとしているからだと考えられます。

もっとも、これまでの金融相場に乗り遅れ、株式市場への参入を狙っている投資家にとっては“買いチャンス到来”と映っているかもしれません。

今回の金融相場は、新型コロナウイルスの感染拡大により、日経平均株価が16,552円83銭の安値を付けた昨年3/19(木)を起点にスタート。多くの企業が需要の喪失に苦しむ厳しい経済状態の中、世界的な低金利を追い風に、本年2/16(火)には昨年来高値30,467円75銭まで上昇し、3/18(木)には30,485円まで値を回復しました。

しかし、その後は株価下落局面に突入。米長期金利の急ピッチな上昇もあり、冒頭で触れたように金融相場が終わり、業績相場へのシフトを控え、株価が調整局面に入っているように思われます。

そこで今後、多くの企業で業績が拡大、回復し、株式相場も反転上昇が予想されることから、図表1と2で、買いチャンス到来に期待したい銘柄をご紹介します。

特に図表2は、“ディフェンシブ的な銘柄”が多く、非常に興味深い結果を示しています。

図表1 「コロナ1年」で時価総額を増やし、アナリストの成長期待も大きい銘柄

「コロナ1年」で時価総額を増やし、アナリストの成長期待も大きい銘柄
(画像=SBI証券)

コード / 銘柄 / 株価(2021/3/24) / 騰落率(2020/3/19~) / 3年予想営業増益率 / 3年後予想PER(倍)
<3031> / ラクーンホールディングス / 2,291 / 624.7% / 209.7% / 36.1
<7816> / スノーピーク / 3,400 / 463.8% / 141.8% / 29.2
<6095> / メドピア / 6,200 / 437.1% / 308.4% / 44.5
<3902> / メディカル・データ・ビジョン / 2,024 / 356.9% / 111.7% / 50.6
<6967> / 新光電気工業 / 3,225 / 327.2% / 983.8% / 17.4
<6966> / 三井ハイテック / 4,160 / 325.8% / 140.1% / 24.7

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※東証1部銘柄(時価総額300億円以上)で、期間2020/3/19~2021/3/24の中で実質的に300%超(4倍超)値上がりした銘柄で、3年先まで営業増益基調が予想(アナリスト予想)される銘柄。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

図表2 「コロナ1年」で時価総額を減らしたものの、アナリストが増益基調を予想の銘柄

この「コロナ1年」の間、結局株式市場全般は上昇してきました。市場では、グロース銘柄や情報通信関連銘柄が主役でしたが、インバウンド関連銘柄のように、新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化した企業も、期待感の先行により、多くの株価が上昇しました。一方、冴えなかったのはそのどちらでもないディフェンシブ的な銘柄でした。

図表2の銘柄は、アナリストによる堅実な業績拡大が予想されながらも事業環境が逆風となり、株価が下がってしまったようです。「コロナ1年」が過ぎ、緊急事態宣言が解除された後、出遅れ感から狙われるのは、すでに業績回復を織り込み始めてしまったインバウンド関連等ではなく、意外にも、これらディフェンシブ銘柄かもしれません。

「コロナ1年」で時価総額を減らしたものの、アナリストが増益基調を予想の銘柄
(画像=SBI証券)

コード / 銘柄 / 株価(2021/3/24) / 騰落率(2020/3/19~) / 3年予想営業増益率 / 3年後予想PER(倍)
<4452> / 花王 / 7,163 / -13.05% / 24.2% / 22.0
<4536> / 参天製薬 / 1,540 / -11.53% / 37.8% / 18.3
<9470> / 学研ホールディングス / 1,417 / -11.48% / 56.7% / 14.2
<9729> / トーカイ / 2,411 / -8.78% / 3.9% / 15.7
<2212> / 山崎製パン / 1,914 / -8.55% / 38.5% / 29.7

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※東証1部銘柄(時価総額300億円以上)で、期間2020/3/19~2021/3/24の中で実質的に5%超値下がりした銘柄で、3年先まで営業増益基調が予想(アナリスト予想)される銘柄。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

掲載銘柄の投資ポイント

ここでは図表1、2に掲載した銘柄について、いくつか投資ポイントを考えてみたいと思います。

ラクーンホールディングス(3031) 卸売市場の潜在需要は約3兆円

売上高(第3四半期累計)の62%はメーカーや小売店を結び、ECの立ち上げなどの運営が円滑に行われるようにする「EC事業」で、残りは売掛保証や、家賃保証、企業間決済など中小企業の資金繰りを支える「ファイナンシャル事業」になっています。

2012/4期以降、9期連続で営業増益となっています。今期(2021/4期)は新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要でEC市場が強い追い風を受け、「EC事業」が好調なことに加え、「ファイナンシャル事業」の増益ペースも加速しています。

営業利益は前期7億円台から、今期12億円超、来期16億円超、再来期21億円超と増益が続く予想(市場コンセンサス)です。アパレルなど卸売市場の規模は3兆円と推測される中、ネット化されたのはその1%(300億円)に過ぎず、成長余地は大きそうです。

ラクーンホールディングス(3031)
(画像=SBI証券)

スノーピーク(7816) 拡大するアウトドア市場の大手ブランド

オートキャンプ製品を中心に、ハイエンドなアウトドア製品の開発、製造、販売を行っています。前期(2020/12)は、「密」を避けられるレジャーとして「アウトドア」に注目が集まり、売上高167億円(前期比17%増)・営業利益15億円弱(同61%増)と大幅増収・増益でした。

2020年のアウトドア市場はブーム的な拡大となり、市場規模は2,700億円程度(前年比4%増)と、初めてゴルフ用品市場(2,300億円)を抜きました。アウトドア業界は、ワークマンもウェアを販売する市場参加者で、ビックカメラ、ヨドバシカメラも参入しています。

今期の会社予想は売上高前期比22%増、営業利益同37%増を見込みます。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大が一巡した場合、ブームも一巡するリスクは残りそうです。

スノーピーク(7816)
(画像=SBI証券)

メドピア(6095) 医師向けコミュニティーサイト「MedPeer」が成長

医師や医療現場を支援する目的で作られ、12万人の医師会員を擁する医師向けコミュニティーサイト「MedPeer」の運営等が主力ビジネスです。

製薬会社のマーケティング活動もオンライン化、DX化が加速し、薬剤評価掲示板やWeb講演会等のビジネスが伸びているようです。

業績は好調で、2021/9期第1四半期(2020/10~12期)の売上高は前年同期比106%増、営業利益は同242%増と大幅に加速しました。

会社側計画では前期53億円の事業規模を2023年には150億円規模に増やす方針。 市場では2023/9期の売上高を同程度、営業利益は45億円(前期の4倍程度)と予想しています。3/24(水)終値ベースの予想PER(2023/9期)で44.5倍の計算です。

メドピア(6095)
(画像=SBI証券)

新光電気工業(6967) おもにインテル向けに半導体パッケージを提供

イビデン(4062)と並ぶ「半導体パッケージ」の大手企業です。主要納入先はインテル。足元の業績はサーバーやPC向け半導体需要の拡大を受け好調。営業利益は前期(2020/3期)の前期比94%増に続き、今期も同80%増の計画です。

インテルは開発から生産・販売まで自社で完結する垂直統合型モデルの半導体メーカーですが、競争力の決め手になる微細化で韓国サムスン電子や台湾TSMCの後塵を拝しています。そうした中、雇用と製品供給の両面から危機感を抱く米政府は半導体産業を支援する方針。 そうした中、同社は3/23(火)に今後数年をかけ、約2兆円を投資し、半導体工場を米アリゾナに新設する方針を発表しました。

インテルは微細化の遅れを半導体パッケージ技術による小型化、高密度化、薄型化で補う方針であり、新光電気工業のビジネスチャンスは拡大が続きそうです。営業利益は前期32億円から今期201億円、再来期は349億円と市場では予想しています。

新光電気工業(6967)
(画像=SBI証券)

花王(4452) 家庭用品最大手も、化粧品の不調が痛手

日本の家庭用品最大手です。 新型コロナウイルスの感染拡大により、衣料用洗剤やハンドソープなどが好調です。

それでも前期は営業利益が前期比17%減でした。 カネボウ化粧品を買収して15年が経過。ライバル他社と比べてメーキャップ商品の構成比が大きいのが特徴ですが、それが新型コロナウイルスの感染拡大で強い逆風を受けました。業績不調で、昨年3月末に8,830円であった株価は3/11(木)7,022円まで下落しました。

会社側は2025年に売上高1.8兆円(前期は1.38兆円)、営業利益2,500億円(前期は1,755億円)を目指します。ブランドの「選択と集中」や、スキンケア商品の育成により、その達成に現実味が出てくれば、株価が切り返すチャンスが出てきそうです。

花王(4452)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。 ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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