4/1(木)から新年度相場が始まりましたが、新年度はどのような株式相場になるのでしょうか。

国内金融機関や多くの上場企業は3月末が決算期末となります。旧年度の決算をまとめ、新しい年度の計画を投資家に示す季節となります。

そこで今回は3月決算企業に絞り、新年度(2022/3期)の業績が大きく拡大しそうな銘柄を抽出し、新年度相場の方向感に迫ります。

当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。

日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール

鈴木英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長 
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん

新年度にアナリストが大幅営業増益を予想する銘柄

日本株投資戦略,上方修正期待銘柄
(画像=PIXTA)

本業の儲けを示す“営業利益”が急拡大しそうな銘柄を抽出します。

スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)時価総額(3/31現在)が1千億円以上の銘柄であること。
(3)銀行、証券・商品先物、保険など広義の金融に属さない銘柄であること。
(4)3月決算銘柄であること。
(5)前期(2021/3期)の営業利益が増益と推定(市場予想)されている銘柄であること。

上記のすべての条件を満たす銘柄を新年度(2022/3)の市場予想営業増益率が大きい順に掲載した表が図表1になります。

なお、新年度の市場予想営業増益率の大きい銘柄をご紹介することが目的ですが、前期に減益となり、大きく落ち込んだ後の銘柄の方が、新年度の予想増益率が大きくなってしまうことが想定されるため、増益条件として(5)を加えました。

上位には、トヨタ系の自動車部品大手が並びます。

景気回復をリードするのみならず、EV(電気自動車)化への流れの中で大きな役割を求められそうです。ただ、ルネサスエレクトロニクス(6723)の工場火災の影響が出る可能性があるため、今後決算発表の局面では一応の注意が必要と考えられます。

また、半導体業界は好況のタイミングになっているのにとどまらず、5G、IoT、AIなど、半導体を必要とする市場の飛躍的な拡大見込みが背景にあり、関連する多くの銘柄について、大幅増益が期待できそうです。

新年度にアナリストが大幅営業増益を予想する銘柄
(画像=SBI証券)

図表1 新年度にアナリストが大幅営業増益を予想する銘柄
コード / 銘柄 / 株価(2021/4/1) / 過去1年上昇率 / 市場予想営業増益率2021/3期 / 市場予想営業増益率2022/3期
<6902> / デンソー / 7,110 / 111.3% / 177.9% / 149.0%
<7259> / アイシン / 4,145 / 60.0% / 82.0% / 104.4%
<5713> / 住友金属鉱山 / 4,780 / 118.3% / 38.0% / 62.3%
<6954> / ファナック / 27,515 / 101.0% / 15.6% / 61.6%
<7735> / SCREENホールディングス / 10,330 / 175.1% / 78.6% / 53.9%
<6963> / ローム / 11,100 / 90.7% / 14.1% / 48.4%
<6923> / スタンレー電気 / 3,285 / 58.2% / 41.2% / 41.4%
<9766> / コナミホールディングス / 6,760 / 110.3% / 45.0% / 38.5%
<1963> / 日揮ホールディングス / 1,327 / 55.6% / 10.5% / 38.2%
<6762> / TDK / 15,700 / 95.8% / 21.7% / 36.5%
<7282> / 豊田合成 / 2,856 / 60.6% / 112.1% / 35.8%
<6967> / 新光電気工業 / 3,570 / 267.7% / 563.7% / 34.8%
<4552> / JCRファーマ / 3,575 / 61.0% / 108.9% / 34.8%
<3116> / トヨタ紡織 / 1,832 / 50.0% / 0.3% / 34.4%>
<4005> / 住友化学 / 568 / 86.2% / 0.3% / 32.9%
<5332> / TOTO / 6,840 / 96.8% / 5.7% / 32.5%
<9962> / ミスミグループ本社 / 3,230 / 43.4% / 4.3% / 31.5%
<7832> / バンダイナムコホールディングス / 7,988 / 55.1% / 3.0% / 31.4%
<4183> / 三井化学 / 3,500 / 77.3% / 3.8% / 31.3%
  /   /   /   / 日経平均株価 / 29,388.87 / 62.7% /   /  

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。 ※「過去1年上昇率」は、2021/4/1終値が2020/4/1終値から何%変動したかを示しています。

掲載銘柄の投資ポイント

ここでは図表1に掲載した銘柄について、いくつか投資ポイントを考えてみたいと思います。

デンソー(6902) 電動化やADAS(先進運転支援システム)の実現を担う

トヨタ自動車が24%、豊田自動織機が8.8%の株式を握るトヨタ系の自動車部品最大手。グループ外への販売も拡大傾向。

バイデン米新政権が環境政策重視へ舵を切ったこともあり、世界でEV化や電動化への流れが加速。同社の電動化システムやADAS(先進運転支援システム)への注目度も高まりつつあります。

市場予想営業利益は2020/3期611億円(実績)に対し、2021/3期は1,697億円、2022/3期は4,226億円と予想されます。足元進行中の円安も追い風になりそうです。

ただ、足元はルネサスエレクトロニクスの火災による自動車業界の減産リスクを織り込む過程にあるとみられ、押し目を形成中です。

デンソー(6902)
(画像=SBI証券)

住友金属鉱山(5713) 住友グループの源流事業を引き継ぐ。資源価格上昇は追い風か。

創業以来430年以上の歴史をもつ住友グループの源流事業を引き継ぐ企業です。

ニッケル、銅、金などの鉱山開発・運営を行う「資源」、資源を鉱物素材(非鉄金属)にする「精錬」、鉱物素材に付加価値を付けて販売する「材料」の3分野を連携させて展開しているのが強みです。

株価はニッケル、銅、金などの相場に連動する傾向があり、特にニッケル価格と連動しやすいように見受けられます。金が一時最高値を付けた他、銅やニッケルも久方ぶりの高値を形成し、その後一服となっています。

車載用電池の正極材大手としての側面もあり、パナソニックやトヨタが納入先(推定)とみられます。2020/3期の営業利益は651億円。以降は2021/3期899億円、2022/3期は1,458億円が市場予想です。

住友金属鉱山(5713)
(画像=SBI証券)

ファナック(6954) 設備投資関連の代表的存在

工作機械のNC(数値制御)装置システムや、産業用ロボットで世界最大手の企業。 世界4大産業用ロボットメーカーの1つです。

2020年の工作機械受注は新型コロナウイルスの影響により、10年ぶりに1兆円を下回りました。一方、2021年の受注見通しは3年ぶりに拡大し、1兆2,000億円を見込みます。

2020/3期の営業利益は884億円。以降は2021/3期1,021億円、2022/3期は1,650億円と推移し、2023/3期以降は2,000億円台をうかがうというのが市場予想です。

日経平均株価に占めるウェイトは4/1(木)現在で3.37%となり、日経平均株価高寄与度銘柄のひとつになっています。

ファナック(6954)
(画像=SBI証券)

新光電気工業(6967) おもにインテル向けに半導体パッケージを提供

イビデン(4062)と並ぶ「半導体パッケージ」の大手企業です。主要納入先はインテル。足元の業績はサーバーやPC向け半導体需要の拡大を受け好調。営業利益は前期(2020/3期)の前期比94%増に続き、今期も同80%増の計画です。

インテルは開発から生産・販売まで自社で完結する垂直統合型モデルの半導体メーカーですが、競争力の決め手になる微細化で韓国サムスン電子や台湾TSMCの後塵を拝しています。そうした中、雇用と製品供給の両面から危機感を抱く米政府は半導体産業を支援する方針。 そうした中、同社は3/23(火)に今後数年をかけ、約2兆円を投資し、半導体工場を米アリゾナに新設する方針を発表しました。

インテルは微細化の遅れを半導体パッケージ技術による小型化、高密度化、薄型化で補う方針であり、新光電気工業のビジネスチャンスは拡大が続きそうです。

営業利益は2020/3期32億円から2021/3期は214億円、2022/3期は289億円と市場では予想しています。

新光電気工業(6967) 
(画像=SBI証券)

三井化学(4183) 基礎素材の採算改善と数量増で業績拡大へ

日本を代表する総合化学メーカーのひとつです。樹脂製品や半導体材料など自動車向けの部材が復調傾向のようです。

会社側は2/9(火)、2021/3期のコア営業利益を500億円から770億円に増額修正。基盤素材の採算改善、販売数量の増加や在庫受払差の減少が主因としています。営業利益については2021/3期744億円から2022/3期は976億円と市場は予想しています。

SBI証券 企業調査部 澤砥アナリストの3/4(木)付同社レポートでは、自動車生産の回復と石化製品の海外市況上昇継続で4Qも高水準の利益を確保と予想。業績予想の増額修正と目標株価の引き上げ(3,250円→3,900円)を行っています。同アナリストの予想では2022/3期の営業利益は1,000億円の予想になっています。

三井化学(4183)
(画像=SBI証券)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。期間1年(週足)で表示。住友金属鉱山(5713) についてはBloombergデータをもとにSBI証券が作成。期間2016/5/1~2021/4/1(月足)で表示。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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