不動産ファンドには、いくつかの種類があります。そのなかで、個人投資家が親しみやすいのは「J−REIT(日本版・不動産投資信託)」と「不動産クラウドファンディング」でしょう。
両者には、「ネットで手軽に投資できる」「手間をかけずに不動産を運用できる」という特徴があります。ここでは、どちらの不動産ファンドが儲かるかというテーマで考えていきます。
単純な利回り比較では、不動産クラウドファンディングの方が儲かる
はじめに、タイトルに掲げた「不動産ファンドはどれくらい儲かる?」という問いに対する回答からお話します。
日本経済新聞・電子版(2021年3月10日付)では、不動産クラウドファンディングの平均分配金利回りを「5〜10%」と解説しています。これに対して、投資家向けのポータルサイトJAPAN REIT(2021年3月21日現在)では、J−REITの平均利回りは「3.62%」と算出しています。
つまり、2つの不動産ファンドを単純に「平均利回り」で比べると、不動産クラウドファンディングのほうが儲かるということになります。両者の間には、1.4〜6.3%程度の開きがあります。
とはいえ、この結果だけを見て、「不動産クラウドファンディングのほうが儲かる」と飛びつくのは早計です。J−REITの平均利回りは変動が激しいため、不動産クラウドファンディングに匹敵することもあります。ご参考までに、下記はここ10年のJ−REITの平均分配金利回りです。かつては5〜6%台だったこともあります。
さらに、平均利回り以外の複眼的な視点から見て、J−REITと不動産クラウドファンディング、どちらのファンドが儲かるかを判断するのが賢い選択でしょう。ここから先は、そのための判断材料を提示していきます。
儲かる不動産ファンドはどっち? J-REITのアドバンテージ
不動産クラウドファンディングに対するJ-REITのアドバンテージは次の3点です。
- 投資口価格の値上がり益を狙える
- NISAで税金を抑えられる
- 運用期間を自由に選べる
それぞれの内容を見ていきましょう。
投資口価格の値上がり益を狙える
「投資口価格の値上がり益を狙える」というのは、J−REITにはあって不動産クラウドファンディングにはない魅力です。投資口価格とは株式投資でいうところの「株価」です。J-REITは証券取引所の立会時間中に売買され、株式と同じように需給によって投資口価格が上下しています。
この「投資口価格」の値上がり益と「分配金」の利回りを合わせると(※)、不動産クラウドファンディングのリターンを上回る可能性もあります。ただし、判断が難しいのはJ-REITの投資口価格が上がると分配金の利回りが下がる傾向があることです。そのため、J-REITを運用する際は、この2つのバランスを考えながら銘柄を選ぶ必要があります。
※投資口価格は、株価のように値下がりするリスクもあります
NISAで税金を抑えられる
NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託などの金融商品から得られるリターンのうち、毎年一定額が非課税になる制度です。J−REITもNISAの対象になっているため「分配金」と「売却益」にかかる税金が非課税になります。この仕組みをうまく使うことで、税引き後の実質利回りを増やすことが可能です。
NISAの非課税枠は年間120万円×5年間=600万円です。これに事例をあてはめてみましょう。
仮に、分配金利回り5%のJ−REITを100万円分購入すると分配金は5万円です。通常、この分配金には20%の税金がかかるため、1万円(5万円×20%)の税金をとられます。NISA口座を経由していればこの1万円が非課税になります。
運用期間を自由に選べる
いくら利回りがよくても、運用期間が短いと得られるリターンは限定的になってしまいます。その点、J-REITの運用期間は原則、無期限です。長期運用したいのであれば、そのまま保有するだけで済みます。つまり、運用期間を決めるのは投資家自身というわけです。
これに対して、不動産クラウドファンディングでは、投資案件(ファンド)ごとに稼げる運用期間が決まっています。例えば、あるファンドの運用期間が6ヶ月であれば、いくら出資者が「運用を継続したい」と思ってもこの期間以上は稼げません。
儲かる不動産ファンドはどっち? 不動産クラウドファンディングのアドバンテージ
不動産クラウドファンディングのJ-REITに対するアドバンテージは次の3点です。
- ムリのない投資金額で稼げる
- ファンドの選択肢が多い
- 高利回り案件がある
それぞれの内容を見ていきましょう。
ムリのない投資金額で稼げる
不動産クラウドファンディングの一番の特徴は、1口1万円など少額から投資ができることです。そのため、ムリのない範囲内で投資を行い、それなりの儲けを出したい人に向いている投資方法といえます。
これに対してJ-REITは、大半の銘柄が1口数十万円以上です。さらに50万円以上する銘柄も多数含まれます。なかには、5万円以下で購入できる銘柄もありますが一部でしかありません。
ファンドの選択肢が多い
J−REITの上場銘柄数は2021年3月現在で60超です。これに対して、不動産クラウドファンディングは事業者数だけで40あり(参照:日本経済新聞・電子版2021年3月10日付)、それぞれが数多くのファンドを設定しています。そのため、選択肢の多さで見ると不動産クラウドファンディングが優位です。
ただし、不動産クラウドファンディングの人気プラットフォームには、短時間で申込み締め切りになる(先着方式)、あるいは、なかなか抽選に当たらない(抽選方式)といったケースもあるので注意が必要です。
高利回り案件がある
本稿の冒頭で触れたように、不動産クラウドファンディングの平均分配金利回りは「5〜10%」です。実際に人気プラットフォームの利回りをチェックすると、8〜10%の高利回り案件も見受けられます。
傾向的には、プラットフォームの立ち上げ当初は高利回りの投資案件が多いように感じられます。こういった高利回りの投資案件を中心に運用して、不動産ファンドで効率的に稼ぐことも可能でしょう。
リターン狙いなら「J−REIT」、手軽に投資なら「不動産クラウドファンディング」
ここでは「J−REITと不動産クラウドファンディング、どちらのファンドが儲かるか」をテーマに解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。
個人投資家が扱いやすい不動産ファンドには、「J−REIT」や「不動産クラウドファンディング」があります。両者の共通点は、「ネットで手軽に投資できること」「手間をかけずに不動産を運用できる」などがあります。
次に2つの不動産ファンドの違いです。単純な分配金の平均利回り比較では、不動産クラウドファンディングのほうが上でした。
J−REIT | 不動産クラウドファンディング |
---|---|
平均利回り3.62% | 平均利回り5〜10%程度 |
ただし、平均利回り以外の「それぞれのリターンの特徴」をしっかり理解して、ご自身に合う不動産ファンドを選ぶことが大切です。両者のアドバンテージは次の通りです。
J−REIT | 不動産クラウドファンディング |
---|---|
・投資口価格の値上がり益を狙える ・NISAで税金を抑えられる ・運用期間を自由に選べる | ・ムリのない投資金額で稼げる ・ファンドの選択肢が多い ・高利回り案件がある |
上記の内容に基づくと、より大きなリターンを狙っていきたい人は「J−REIT」向き、少額で手軽に投資をしていきたい人は「不動産クラウドファンディング」向きといえるでしょう。
※本稿は不動産ファンドの購入を推奨するものではありません。投資は自己判断で行いましょう(提供:Renergy Online )
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