電気料金の長期上昇傾向が続いています。理由は1つではなく、さまざまな要素が絡んでおり、対策を講じなければ家庭の負担は増す一方になる懸念があります。個人はどう備えたらよいのでしょうか。

その対策の切り札になるのが「家庭用蓄電池」の導入です。これからの時代に家庭用蓄電池が必要になる背景と導入するメリットを探ります。

電気料金はなぜ上昇しているのか

電気料金は長期上昇へ!これからは家庭用蓄電池が必要になる
(画像=Stockwerk-Fotodesign/stock.adobe.com)

最近、電気料金が高くなったと感じることはないでしょうか。気のせいではありません。

電気料金は長期上昇傾向にあるのです。資源エネルギー庁の調べによると、家庭向け電気料金の平均単価は2010年度の1kwhあたり20.4円から2018年度には25.0円と約23%も上昇しています。産業向けに至っては約27%とさらに上昇が加速している状態です。

出典:資源エネルギー庁Webサイト
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その要因の1つになっているのが再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の存在です。賦課金が加算されていることで、電気料金の上昇につながっています。

再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が固定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」がありますが、この買取のためのコストを賦課金という形で利用者が負担しているのです。その負担金は2012年度に平均モデルで月あたり57円だったものが2019年度には767円と約13.5倍に増加しています。

注目すべきは、下のグラフにあるように買取費用が増えるほど賦課金も増えていることです。これは今後再生可能エネルギーが普及するにつれ、電気料金も上昇することを意味します。

出典:資源エネルギー庁Webサイト
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さらに、東日本大震災の影響で原子力発電所の稼働が停止されていることも、電力会社にとってはコストの増加につながります。

東日本大震災が起こる前、2010年度の電源構成における原子力の比率は25.1%でしたが、2017年度は3.1%と約8分の1まで縮小しています。代わってLNG火力が29.0%から39.8%まで拡大し、コスト上昇の一因になっています。

家庭用蓄電池が必要な時代になった

競争原理の導入で電気料金の引き下げにつながると期待された新電力ですが、2020年に起きた新型コロナウィルスの影響による卸電力取引所価格の暴騰でコスト負担が増しています。

取引価格は2019年の1kWhあたり7.36円から2020年は38.85円と約5倍に値上がりしています。すでに事業から撤退した会社や倒産した会社も出ており、自社で発電所を持つ大手電力会社など一部の例外を除けば今後も厳しい経営環境が続きそうです。新電力を使えば安くなるという状況ではなくなる可能性があります。

そしてもう1つの要因が原油の値上がりです。原油価格は米国のシェール革命により国際原油価格(WTI)が2014年から2016年にかけて大幅に下落しましたが、2019年12月には1バーレル61ドル台まで回復しています。

IEA(国際エネルギー機関)の新政策シナリオによると、原油価格は2030年には1バーレル96ドル、2040年には112ドルまで上昇する見通しです。

原油の輸入に影響を与える為替相場はどうでしょうか。ドル円相場は2021年1月6日に直近の安値である1ドル102円59銭を付けたあと上昇に転じ、約2ヵ月後の3月15日に109円36銭の高値を付けました。円安は輸入コストの増加につながりますので、これも電気料金の値上がり要素になります。

以上のような背景を考えると、何も手を打たなければ今後家庭の負担は増加する一方になりそうです。そこで電気料金の長期上昇に備える方法として有効なのが家庭用蓄電池の導入です。

再エネ賦課金の増加、原発稼働停止、卸電力取引価格の暴騰、原油高、円安と怒涛のように押し寄せる電気料金値上げ要因に対抗するには、太陽光発電システムと蓄電池の導入がこれからの時代に必須の選択肢になるでしょう。

蓄電池を導入するメリット

蓄電池を導入する最大のメリットは、エネルギーを効率的に使えることです。あとで紹介するように、家庭の事情に合わせ自在に利用方法を選ぶことができます。太陽光発電システムと組み合わせれば「売電」と「節電」の両方のメリットを得ることができます。

また、将来普及が進む電気自動車(EV車)との相性が良いのもメリットです。昼間仕事などで電気自動車を使っている間に、太陽光発電システムで発電した電気を蓄電池に貯めておくことができます。自動車が自宅に戻ってきたときに貯めておいた電気を電気自動車に充電することで、理想的なサイクルを築くことができます。

気になる設置スペースですが「パワーコンディショナ一体型」にすると省スペースで設置することができます。一体型であればパネルの設置容量が変わらなくても売電量が増えるメリットがあります。

災害時の非常用電力になる

もう1つ重要なメリットは災害時の備えができることです。2021年2月13日に東北地方で震度6強の地震が起き、改めて災害時の備えが必要なことを思い知らされました。蓄電池は災害時には非常用電力になり、停電の影響を最小限にとどめることができます。

蓄電池の容量は4kWh以上あれば半日程度停電が続いた場合でも困ることはありません。仮に停電が半日以上に伸びても翌朝には太陽光発電で再度蓄電池に充電できるので安心です。

しかし、ここで疑問なのは真夜中に停電した場合、暗いなかで蓄電池を操作できるのかという点です。心配はいりません。実は蓄電池は停電時に操作をしなくても、自動的に電気を供給するようになっています(自立運転機能)。蓄電池が災害時の非常用電力になるというのはそのような仕組みがあるからです。

蓄電池の利用方法

では、蓄電池はどのように使ったらエネルギーの効率化につながるのでしょうか。太陽光発電システムと組み合わせることによって太陽光の発電量を増やしたり、太陽光発電で賄えない時間帯の電気を賄うことができます。

例えば、深夜の安い電力を蓄電池に充電しておき、太陽光発電が発電している昼間の使用電力に充当することで、太陽光で生産した電気をより多く電力会社に売電することができます。

逆に昼間を太陽光発電で賄い、太陽光発電で賄えない時間帯の電力を蓄電池でカバーするという方法もあります。こちらは購入電力が減るので節電になります。日中に多くの電気を使う家庭は前者を、日中に電気を使わない家庭は後者の方法を採用すると電気を効率よく使用できます。

また、前者は固定価格買取制度期間中のモード、後者は固定価格買取制度期間終了後のモードと考えることもできます。

補助金を活用しよう

家庭用蓄電池を導入する際には補助金を活用することができます。家庭用蓄電池の補助金には2種類あります。1つは国(SII/環境共創イニシアチブ)が行う「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」、もう1つが全国の地方自治体から独自に交付されている補助金です。

▽国の補助金及び補助上限額

出典:SII/環境共創イニシアチブ資料
出典:SII/環境共創イニシアチブ資料

国の補助金及び補助上限額は上表のとおりですが、全体の上限は1/3または60万円のいずれか低いほうと定められています。

補助対象になる家庭用蓄電池は、蓄電部(初期実効容量1.01kWh以上)とパワーコンディショナー等の電力変換装置から構成されるシステムであり、蓄電システム本体機器を含むシステム全体を1つのパッケージとして扱うものです。

全国の自治体が支給する補助金は市区町村によって大きく異なります。例えば東京都の「令和2年度自家消費プラン事業」では最大60万円が補助されます。国と地方自治体の補助金は併用できるので、可能な限り利用するとよいでしょう。

ただし、補助金は予算額が決っていますので年度の途中で終了する場合があります。新年度の募集が開始されたら早めに申し込むことが肝要です。

なお、上記補助金の概要は令和2年度のものであり、年度が切り替わると内容が変更になる場合があります。申し込みにあたっては最新の申込要項をご確認ください。

SDGs(持続可能な開発目標)のゴール7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献でき、電気料金の値上げにも対抗できる家庭用蓄電池の導入は、私たちにとって最善のエコ対策といえるのではないでしょうか。(提供:Renergy Online


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