低炭素化社会の実現に向けて、世界各国が取り組みを始めています。そのなかで今後加速度を増して進むのが自動車のEV化です。日本の自動車メーカーもEV車の新モデルの開発に力を入れています。

しかし、EV化には再生可能エネルギーの普及がカギを握っています。EV化へ向けての課題と、自動車のオールEV化に個人がどのように備えたらよいのかを考えます。

世界の自動車はいずれオールEVへ

自動車はオールEV化の流れ、個人はどう備えたらいい?
(画像=TheSupporter/stock.adobe.com)

資源エネルギー庁のまとめによると、世界の主要国はガソリンやディーゼルなど化石燃料を使用する自動車を、将来的にEV車へ切り替える方針を発表しています。例えば、英国では2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止。フランスでは2040年までに温室効果ガスを排出する自動車の販売を終了する予定です。

ドイツでは連邦参議院でガソリン・ディーゼルエンジンの販売を禁止する決議案を可決しました。インドは2030年までにすべての販売車両をEV化する方針です。

この方針を受けて、世界の自動車メーカーもEV自動車の開発を積極的に進めています。BMWは2025年までに12車種のEV自動車を含む25車種の電動車両を発売します。また、フォルクスワーゲンは2025年までにEV自動車を50車種発売し、世界で年300万台のEV自動車を販売します。

さらに、ダイムラー(メルセデスベンツ)は2022年までにEV自動車を10車種以上発売するなど、その他の会社も含めEV化が加速していく見込みです。当面はガソリン車が共存するものの、いずれ新車はすべて電気自動車になると思われます。

日本の自動車EV化への流れは?

では日本における自動車EV化の流れはどうなるのでしょうか。2020年10月26日の第203回臨時国会の所信表明演説において、菅首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会を目指す」という目標を表明しました。

カーボンニュートラルとは炭素中立と訳され、排出する二酸化炭素と吸収する二酸化炭素が同じ量であるという概念です。

その目標達成のために大きく貢献するのが電気自動車です。電気自動車のメリットは、二酸化炭素をまったく排出しないことです。ガソリン車と違い排気ガスも排出しないため、環境や健康にも優しい自動車といえます。政府は2030年代半ばには、発売される新車自動車をすべてEV車にする計画です。

日本自動車販売協会連合会が発表した2021年2月の「燃料別販売台数(乗用車)」によると、燃料別の販売シェアは、EVモードを搭載したハイブリッドカー(HV)が39.9%、外部電源からの充電が可能なプラグインハイブリッド車(PHV)が0.8%、バッテリーの電力のみでモーターが駆動する電気自動車(EV)が0.6%、水素と酸素で発電してモーター駆動する燃料電池自動車(FCV)が0.2%で、電動車を合計すると41.5%となり、ガソリン車の52.4%と比べてそれほど大差がなくなっています。

ただし、二酸化炭素をまったく排出しないEVとFCVを合わせても0.8%にしかならず、脱炭素化にはほど遠いのが現状です。

再生可能エネルギーの普及とも関連している

オール電気自動車の社会を実現させるには、再生可能エネルギーの普及も重要になります。火力発電と再生可能エネルギーでは二酸化炭素排出量が異なるからです。

2050年にカーボンニュートラルを目指すには、火力発電がメインでは達成は困難です。本来なら原子力発電が発電時に二酸化炭素の排出がないので適しているのですが、日本では原発停止の流れになっています。そのため、再生可能エネルギーを普及させる以外に道はないのです。

現状はどうでしょうか。資源エネルギー庁の調べによると、2017年時点の発電電力量に占める再生可能エネルギーの比率は16.0%(水力7.9%を含む)となっています。再エネ先進国ドイツ(33.6%)の半分以下で、調査した先進9ヵ国のなかでは最下位という状況です。2050年に向けさらなる政策の推進が求められます。

次に買い替えるならEV車?その性能とは

自動車ユーザーにとって迷うのは、いつ電気自動車に買い替えるかです。国内自動車メーカーも続々とEV車の新モデルを発売しています。どのような性能を装備しているのでしょうか。トヨタ自動車が2022年に一般発売する予定の超小型EV車「シーポッド」(2人乗り)の例で見てみましょう。

シーポッドの最高速度は時速60㎞なので高速道路は走れませんが、通勤や買い物で一般道を走る分には十分な速度といえます。フル充電した場合の走行距離は150㎞です。車を使わない時間に充電しますが、200V充電の場合約5時間で充電できます。

さらに、「Gクラス車」には即効性のある快適温熱シートと効率よく乗員を冷やすクーラーが標準装備されており、消費電力を抑えながら快適な運転を行うことができます。

4人乗りを希望する場合は本田技研工業から発売されている「Honda e」が人気車種として知られています。こちらの走行距離はモードにより283km、308kmと遠出も可能になります。

家庭で充電できる環境を整えるのが理想

将来のオールEV化に向けて、個人はどのように備えればよいのでしょうか。一番心配なのは充電の問題です。ガソリン車の給油はセルフスタンドなら4分程度で終わりますが、電気自動車の充電スタンドはサービスエリアにある急速充電スタンドの場合でも30分程度かります。充電のために30分待つのはかなりストレスになるでしょう。

そこで個人でできる備えとして有効なのが太陽光発電システムと V2Hを組み合わせる方法です。V2H は電気自動車に蓄えた電気を家庭でも使うことができるシステムです。V2Hは高速充電のため200Vの充電器よりも充電時間を大幅に短縮できます。また、太陽光発電と組み合わせると電気料金のコストを大幅に下げることができます。

ガソリン代に比べると電気自動車の充電料金は割安ですが、料金がかかることに変わりはありません。しかし、太陽光発電は発電した電力を電気自動車に充電できるので充電費用そのものはかかりません。初期費用の負担はありますが、長い目でみてコストダウンになる点は大きなメリットです。

電気自動車とV2Hは補助金を活用できる

これからの時代に必要になる電気自動車とV2Hですが、補助金を利用して購入することができます。経済産業省が実施する「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」と、環境省が実施する「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」では、下表のような補助金額が支給されます。

補助対象になるのは、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車の購入費の一部と、充放電設備・外部給電器の購入費・工事費の一部です。経済産業省の補助金は、「電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車と充放電設備・外部給電器を同時に購入する個人」が対象になります。

▽補助上限額(経済産業省)

電気自動車上限60万円
プラグインハイブリッド車上限30万円
燃料電池自動車上限250万円
充放電設備の設備費1/2補助の上限75万円
充放電設備の工事費定額補助で上限40万円
外部給電器の設備費1/3補助の上限50万円

▽補助上限額(環境省)

電気自動車上限80万円
プラグインハイブリッド車上限40万円
燃料電池自動車上限250万円
充放電設備の設備費1/2補助の上限75万円(個人・法人等共通)
充放電設備の工事費定額補助で上限40万円(個人)又は上限95万円(法人等)
外部給電器の設備費1/3補助の上限50万円

補助金の支給には細かい規定があり、車種や機器名が指定されています。詳細は下記経済産業省のホームページでご確認ください。

経済産業省:令和2年度第3次補正予算案に「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」等が盛り込まれました

電気自動車の購入は個人でできる二酸化炭素削減への貢献にもなります。太陽光発電システムとV2Hを組み合わせ、自宅を充電スタンドにする理想的なカーライフの実現を目指してみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online


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