本特集では「富裕層のお受験」と題して、お受験の実態、候補となる学校、なぜ富裕層はお受験をはじめ子息子女教育に積極的なのか、などについて見ていく。なお、本特集における「お受験」は、幼稚園受験もしくは小学校受験を指すと定義したい。
なぜ富裕層は、時間もコストもかかるお受験をしてまで、御三家幼稚園や御三家小学校をはじめ、名門校に子どもを通わせたがるのだろうか。第3回では、この点について考察する。
お受験だけではなく、富裕層は子息子女教育に積極的だ。その理由には大きく分けて、以下の2つが浮かび上がる。
【1】子どもの人的資本が大きくなる
【2】実質的なバランスシートの移転に繋がる
それぞれを見ていく前に、まずは「個人のバランスシート」について解説しよう。
富裕層の資産管理は丸(ポートフォリオ)ではなく四角(バランスシート)で考えよ
「個人のバランスシート」とは、個人B/Sと個人P/Lを可視化することで、個人の資産管理を行おうという試みだ。プライベートバンクなど富裕層向け資産管理の現場でよく使われる。
P/Lでは、ある期間に自分がどのくらい稼ぎ(収益)、何にどのくらい使い(費用)、どのくらい残ったのか(利益)を整理し、お金の流れを把握することができる。多くの方にとって、「1ヶ月」や「1年」が馴染みある期間だろう。
B/Sでは、自分がどのくらい価値のある財を築いており(資産)、どのくらい他からお金を借りているか(負債)、差し引きで純粋な自分の資産がいくらあるのか(純資産)を整理し、これまで自分がどのくらい資産を築いてきたかを把握することができる。
P/LとB/Sは密接に結びついており、P/Lで生まれた利益がB/Sに「金融資本」として積み上がっていく。場合によっては、P/Lが赤字となり、B/Sの純資産が減ってしまうこともある。
よく資産割合をポートフォリオで表すことがあるが、それだと他人資本(負債)と自己資本(純資産)の割合を可視化しづらい。「富裕層の資産管理は丸(ポートフォリオ)ではなく四角(バランスシート)で考えよ」と言われるゆえんだ。