投資の初心者にとって、投資信託は比較的リスクの低い商品も多く、投資を始めやすい金融商品です。しかし、投資信託と一口に言ってもその銘柄は何千もあり、選ぶだけでも迷ってしまうところです。そこで本記事では、投資信託の2大分類である「インデックスファンド」と「アクティブファンド」を比較。メリットとデメリットを解説し、初心者が選ぶべき銘柄にナビゲートします。

目次

  1. 投資の神様が推す「S&P500と連動するインデックスファンド」
  2. インデックスファンドのメリットとデメリット
  3. 平均指数を決めて、銘柄を選ぶ。インデックスファンドの選び方を解説
  4. 一般の投資信託と上場投資信託(ETF)の違い
  5. アクティブファンドとは「インデックスファンド以外の銘柄」
  6. アクティブファンドのメリット・デメリット
  7. まとめ:それでも不安な人は無理のない一定額を長期積立

投資の神様が推す「S&P500と連動するインデックスファンド」

ETFと投資信託の違いとは?それぞれ向いているのはどんな人?
(画像=Olivier Le Moal/stock.adobe.com)

投資信託は大きく2種類にわかれます。日経平均株価やダウ平均などマーケットの平均指数と連動する「インデックスファンド」と、平均指数を上回るリターンを目指す「アクティブ(パッシブ)ファンド」です。

インデックスファンドとは、TOPIX、日経平均株価やダウ工業平均といった特定の市場の平均指数(インデックス)を指定し、その平均指数と同じ値動きになる運用を目指す投資信託(ファンド)のことです。特定の指数への連動を目指すため、その市場のたくさんの銘柄を均等に購入する仕組みです。

対してアクティブファンドは、市場の平均指数を上回るリターンを得る運用を目指すファンドです。ファンドマネージャーが投資戦略を策定、運用するため、特定の銘柄に集中投資をすることも一般的です。この仕組みから、インデックスファンドよりも高い利益を期待できる反面、市場平均を下回ることもあります。また、手数料などが割高になる特徴もあります。

インデックスファンドとアクティブファンド、この2つは同じ投資信託でも“別モノ”といってよいくらい仕組みやメリット・デメリットが違います。一般的に、初心者に向いているといわれるのは「インデックスファンド」です。さらにいうと、いくつかあるインデックスファンドの平均指数の中でもS&P500と連動している投資信託などは長期的な安定運用を目指す人にうってつけと考えられます。

「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェットは、妻へ「自分が死んだら遺産の90%をS&P500の平均指数と連動するインデックスファンドに投資するように」という遺言を残しています。この遺言の内容は、2020年という世界経済の先行きが見えない時期に行われた、彼が率いる投資ファンド、バークシャー・ハサウェイの株主総会でも一切変わっていません。

さらにバフェットは、このような言葉を残しています。「多くの人にとって、最も良い方法はS&P500インデックスファンドを買うことだ」。投資の神様がここまで推すインデックスファンドとはどのようなものなのでしょうか。また、アクティブファンドとの違いは何でしょうか。詳しく見ていきましょう。

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インデックスファンドのメリットとデメリット

はじめに、インデックスファンドのメリットとデメリットを整理したいと思います。これをしっかり押さえたうえで、インデックスファンドを通じて投資をするか否かを検討していきましょう。

▽インデックスファンドのメリット・デメリット

メリット デメリット
・信託報酬(運用コスト)が安い
・投資初心者でも値動きを理解しやすい
・長期運用に向いている
・マーケット平均を超えられない
・急落リスクもある
・長期的に停滞する可能性もある

インデックスファンドのメリット1:信託報酬(運用コスト)が安い

インデックスファンドは、後ほど紹介するアクティブファンドと比べると、投資先となる企業や市場の調査費用などがかからないぶん、運用コストである信託報酬が割安です。信託報酬とは、その投資信託を運用する会社に払う運用管理費のことです。保有している限り発生し続けるため、保有期間が長くなるほど、信託報酬が割安な銘柄と割高な銘柄ではコストの差が広がります。

インデックスファンドのメリット2:投資初心者にも値動きを理解しやすい

インデックスファンドは、対象となっている平均指数(インデックス)が上がれば基準価額(投資信託の価格)が高くなり、平均指数が下がれば基準価額も安くなるというシンプルな仕組みです。そのため、投資初心者にも理解しやすく扱いやすいという利点があります。

インデックスファンドのメリット3:長期運用に向いている

「将来の老後資金をつくるため」など、長期運用を考えている人とインデックスファンドは相性がよいと考えられます。なぜなら、インデックスファンドは平均指数と連動するため、運用会社やファンドマネージャーの力量による影響を受けにくいからです。対象としている平均指数が伸び続ける限り、投資信託も価値を高めていくのが基本です。

インデックスファンドのデメリット1:マーケット平均を超えられない

インデックスファンドのデメリットの1つは、日経平均株価やダウ平均などの平均指数が下降局面のとき、それに伴って基準価額が値下がりすることです。株式投資の個別銘柄であればマーケットが下降局面でも値上がりすることもありますが、インデックスファンドはマーケットと一体化しているのが特徴です。そのため、上昇局面ではメリットになり、下降局面ではデメリットになります。

インデックスファンドのデメリット2:急落リスクもある

巨大なマーケットの平均指数と連動しているインデックスファンドは安定運用がしやすいイメージがあります。ただ、マーケットの状況次第ではインデックスファンドも急落するリスクがあります。

たとえば、2020年3月にNYダウは過去最大の下げ幅まで急落。これによってNYダウと連動する、ある投資信託の基準価額は1万9,000円台から1万1,000円台まで急落しました。このような経済危機は一般的に10年に1度程度の割合でやってくるといわれます。インデックスファンドを運用するときは、経済危機時に狼狽売り(株価の急落などに動揺し、あわてて売却すること)をしないことが大切です。

インデックスファンドのデメリット3:長期的に停滞する可能性も

マーケットの平均指数と連動しているからといって、インデックスファンドが必ずしも値上がりするわけではありません。対象となっているマーケットの平均指数が停滞あるいは下降すればインデックスファンド自体も値下がりします。

たとえば、2000年~~2012年頃の日経平均株価は上下動を繰り返し、思うような伸びを示すことはできませんでした。この期間、日経平均株価と連動しているインデックスファンドを保有していれば、ほとんどリターンが得られなかったことになります。インデックスファンドの銘柄を選ぶときは長期的に成長が見込めるマーケットの平均指数を選ぶことが重要です。

平均指数を決めて、銘柄を選ぶ。インデックスファンドの選び方を解説

ここまでの内容から「私は初心者だからインデックスファンドがいいかも」と思った方も多いでしょう。しかし、実際の銘柄選びはスムーズにいかないものです。まず選びたいインデックスファンドの平均指数には、いくつかの種類があるからです。主な指数として次の6つが挙げられます。

▽インデックスファンドの主な平均指数

指数名 概要
TOPIX(東証株価指数) 東証一部上場のすべての銘柄を対象にして東証が算出・公表しています
日経平均株価 東証一部上場のなかでも日本を代表する大企業225銘柄の株価と連動しています。「日経225」とも呼ばれます
ダウ平均 アメリカを代表する優良企業(時価総額が大きい、持続性があるなど)30社の株価を指数化したものです。「NYダウ」「ダウ工業株30種」とも呼ばれます
S&P500 アメリカの主要産業を代表する大型株500社で構成。アメリカの株式市場の時価総額の約80%をカバーしています
NASDAQ総合指数 アメリカのNASDAQ(ナスダック)市場に上場するすべての銘柄で構成される時価総額加重平均型の指数です
MSCIコクサイ・インデックス 日本を除いた先進国の株価動向を示す指数です。先進国22カ国に上場する大・中型株が対象です

ウォーレン・バフェットがS&P500を推している理由は、アメリカ経済が今後も伸びていくと信じていること、ダウ平均と比べて対象になっている企業数が多いので分散投資効果があることなどが考えられます。2020年のバークシャー・ハサウェイの株主総会でバフェットはこのように語ったそうです。「アメリカの追い風は止んでいない。この国への追い風は驚異的だ」。

なお、上記の表の平均指数(インデックス)は株価と連動したものです。この他、公社債と連動する指数である「NOMURA-BPI総合指数」や「FTSE世界国債インデックス」などもあります。一般的に公社債と連動する平均指数の方がローリスク・ローリターンと考えられます。

平均指数を選ぶ:「どのエリアが今後、経済発展するか」を考える

上記の指数のうちどれを選べばいいかを考える軸になるのは、「これから先どのエリアの経済が発展するか」です。ウォーレン・バフェットがS&P500と連動するインデックスファンドを推すのは、彼が今後もアメリカ経済が発展していくと信じているからでした。

もし、あなたがアメリカよりも日本のほうが今後の経済が好調と考えるのであれば、日経平均株価や TOPIXと連動しているインデックスファンドを選ぶという手もあります。また、日本の経済発展は期待できないが、先進国全体で見ると成長が期待できると考えるならMSCIコクサイ・インデックスと連動する銘柄が有力候補になるでしょう。

あるいは、アメリカ一国ではなく、新興国や欧州を含めた全世界の経済発展が期待できると先読みするのであれば、特定の平均指数と連動するインデックスファンドではなく、全世界の株式を対象にしたファンドも選択肢として考えられます。世界株式の指数としては、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスなどがあり、このような指数に連動したインデックスファンドについて、確認してみるのもよいでしょう。

銘柄を選ぶ:特定の平均指数と連動する銘柄が多数あることも

注目する平均指数が決まったら、インデックスファンドの銘柄選びに進みます。たとえば、ウォーレン・バフェットが推すS&P500の平均指数と連動するインデックスファンドで考えてみましょう。

ネット証券の口座を持っている人であれば、ログイン後、投資信託ページ内の検索機能で「S&P500」のキーワードでリサーチすると、S&P500指数と連動するインデックスファンドがピックアップされます。

▽S&P500指数と連動するインデックスファンドの例

ファンド名 純資産額(億円) 1年間のリターン実績(%)
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 1,395.5 15.25
iFree S&P500インデックス 134.38 15.21
iFreeレバレッジ S&P500 17.67 19.55
つみたて米国株式(S&P500) 0.34
NZAM・ベータ S&P500 0.18

※純資産額やリターン実績は2020年8月14日現在。検索結果は楽天証券でリサーチした場合

これらの銘柄のおおまかな概要をつかみたいなら、まずは「純資産額」と「過去のリターン実績」をチェックするとよいでしょう。「純資産額」が多いほど、その投資信託の規模が大きく、多くの人から資金を集めている、つまり信頼されているといえます。リターンについては、過去にリターンをあげ続けている銘柄がこれから先もリターンをあげるとは限りませんので、「純資産額が大きい、リターン実績がある=買い銘柄」ではありませんが、おおまかな傾向や概要をつかむ上での参考にはなります。

実際に投資信託を選択する際は、各投資信託の目論見書を見比べるようにしましょう。特にコストの部分は重要で、購入時や解約時の手数料、信託報酬などでそれぞれに違いがあります。たとえば、信託報酬だけで見比べても、『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』が年率0.0968%と他の銘柄の半分以下ということがわかります。

また、同じS&P500の平均指数と連動する投資信託でも、『iFreeレバレッジ S&P500』はS&P500の平均指数の約2倍の値動きをします。値上がりしたときは2倍のリターンが得られますが、値下がりしたときは約2倍のダメージがあります。レバレッジ型の投資商品は、難易度(リスク)が高いので初心者は選ばないほうが無難です。

一般の投資信託と上場投資信託(ETF)の違い

インデックスファンドを購入するときは、特定の平均指数と連動する上場投資信託(ETF)から選ぶ方法もあります。ただし下記表のように、一般の投資信託とETFは特徴が大きく異なります。普段から株式取引をしている人はETFを扱いやすいと思いますが、株式取引の経験が少ない人は一般の投資信託の方が扱いやすいかもしれません。

▽投資信託とETFの違い

投資信託 ETF
上場・非上場 非上場 上場
信託報酬 一般的にETFよりも割高 一般的に投資信託よりも割安
取得価格 基準価額を1日1回算定 価格がリアルタイムで変動
購入方法 基準価額を基に購入 市場の指値・成行注文で購入

なお、インデックス型のETFの一例は、S&P500の平均指数と連動する「iシェアーズS&P500 米国株ETF」、日経平均株価と連動する「日経225連動型上場投資信託」などがあります。

アクティブファンドとは「インデックスファンド以外の銘柄」

ここから先は、投資信託のもう1つの分類である「アクティブファンド」にフォーカスします。インデックスファンドは平均指数に連動するものという定義がありましたが、アクティブファンドには明確な定義がありません。一般的に「インデックスファンド以外の銘柄」と解釈されることが多いようです。それだけにアクティブファンドは数やテーマが豊富なのが特徴です。

投資の世界では「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない(インデックスファンドのリターンを下回る)」というのが通説です。この通説は「投資初心者にはインデックスファンドが向いている」といわれる根拠にもなっているようですが、はたして事実でしょうか。

東京証券取引所が運営する『東証マネ部!』のリサーチによると、運用10年後にインデックスファンドのリターンを下回っているアクティブファンドの割合は次の通りです。

  • 日本の大型株ファンド:63.0%
  • 日本の中小型株ファンド:65.2%
  • 米国株式ファンド:87.5%
  • グローバル株式ファンド:92.0%
  • 新興国株式ファンド:90.3%

この結果を見る限り、「アクティブファンドはインデックスファンドに勝てない」というのは事実のようです。ただ、すべてのアクティブファンドがインデックスファンドに負けているわけではないので、「リスクをとってでもリターンを狙いたい」という方には、アクティブファンドも1つの選択肢です。

アクティブファンドのメリット・デメリット

本記事では、初心者と相性がよいという観点からインデックスファンドにフォーカスしています。とはいえ、アクティブファンドで人気の銘柄も数多くあります。アクティブファンドの主なメリット・デメリットは下記のとおりです。

▽アクティブファンドのメリット・デメリット

メリット デメリット
・平均指数を上回ることも可能
・たくさんの銘柄から選べる
・ファンドごとの個性がある
・インデックスファンドのリターンを下回りやすい
・運用コストが高くなりがち
・分散効果が不十分な場合もある

アクティブファンドのメリット1:平均指数を上回ることも可能

インデックスファンドはマーケットの平均指数と連動する仕組みです。逆にいうと、平均指数を上回ることは基本的にありません(レバレッジ銘柄を除く)。アクティブファンドであれば、平均指数を上回る、より大きなリターンを得ることも可能です。

アクティブファンドのメリット2:たくさんの銘柄から選べる

インデックスファンド以外の銘柄がアクティブファンドですので、選択肢は豊富にあります。限られた銘柄から選ぶのではなく、選択肢をより広げたい場合はアクティブファンドのほうが魅力的でしょう。

アクティブファンドのメリット3:ファンドごとの個性がある

平均指数に連動するインデックスファンドは、ファンドごとの個性を感じにくい傾向にあります。一方のアクティブファンドは、それぞれのファンドの方針や考えが反映されやすいため、個性を感じやすいのが特徴です。

人気銘柄のなかには、ファンドマネージャーの存在感が強いものもあります。たとえば、ひふみ投信シリーズのファンドマネージャー・藤野英人氏は名を知られた存在のひとりです。こういった銘柄ごとの個性を楽しみながら選べる点も、アクティブファンドの醍醐味です。

アクティブファンドのデメリット1:インデックスファンドのリターンを下回りやすい

先に見たようにアクティブファンドは、一定の割合でインデックスファンドのリターンを下回ります。この割合は、運用期間が長くなるほど大きくなる傾向があります。たとえば、新興国株式やグローバル株式をテーマにするアクティブファンドのリターンがインデックスファンドを下回る割合は、1年後に7割超ですが、10年後になると9割超にまで増えます。

アクティブファンドのデメリット2:運用コストが高くなりがち

機械的に平均指数と連動するインデックスファンドに比べて、アクティブファンドは投資先の調査費用などがかかる分、運用コストである信託報酬が割高な傾向があります。

アクティブファンドのデメリット3:分散効果が不十分な場合もある

平均指数と連動するインデックスファンドは、さまざまな分野の企業の株価が反映されるため、結果的に分散投資の効果があらわれやすくなります。アクティブファンドの中でも特定のテーマや特定分野を対象にしている銘柄は分散効果が不十分な場合もあります。

まとめ:それでも不安な人は無理のない一定額を長期積立

ここまで、「初心者に向いているのは投資信託の種類はインデックスファンド」をテーマに、投資信託の大きな分類であるインデックスファンドとアクティブファンドの違いを解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。

まず、インデックスファンドとアクティブファンドを比較するとこのようになります。

▽インデックファンドとアクティブファンドのメリット比較

インデックスファンド アクティブファンド
・信託報酬(運用コスト)が安い
・投資初心者でも理解しやすい
・長期運用に向いている
・マーケット平均を上回ることも可能
・たくさんの銘柄から選べる
・ファンドごとの個性がある

▽インデックファンドとアクティブファンドのデメリット比較

インデックスファンド アクティブファンド
・マーケット平均を超えられない
・急落リスクもある
・長期的に停滞する可能性も
・インデックスファンドのリターンを下回りやすい
・運用コストが高くなりがち
・分散効果が不十分な場合もある

このうち、特に注目したいのはアクティブファンドのデメリットである「インデックスファンドのリターンを下回りやすい」という部分です。10年間継続して運用した場合、大半のアクティブファンドはインデックスファンドを上回れないという結果でした。

また、インデックスファンドを実際に選ぶときの流れは「指数を選ぶ→銘柄を選ぶ」というものでした。指数にはダウ平均や日経平均株価などがあり、ウォーレン・バフェットが推しているのはS&P500です。銘柄の中身はそれぞれ違いますので、目論見書で確認して購入しましょう。

最後に注意点ですが、デメリットに挙げたようにインデックスファンドにも急落リスクはあります。不安な人はムリのない一定額を長期積立していく投資スタイルがよいでしょう。ドル・コスト平均法の効果によって取得価額を平準化することが可能です。

文・本間 貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自身で賃貸物件の経営や、年間で億単位の株式売買も行っている