株式投資をするとき、タイミングを考えずにすぐに株式を購入してしまってはいないでしょうか?株式は運任せや一時の勢いで購入してしまうと高値掴みとなってしまうことがあり、その後株価が下落してしまったり、上がったとしても株価の天井が近づいていたりして、値上がりによる利益を得る幅が小さくなっているかもしれません。

今回は、投資初心者に向けて、株式投資で重要な「株を購入するタイミング」の判断方法について解説していきます。

目次

  1. 株式投資で利益を出すには「安いところで買って、高いところで売る」
  2. 株の買いタイミングのルール1:リバランスで買付け
  3. 株の買いタイミングのルール2:決算やIR発表後に購入
  4. 株の買いタイミングのルール3:テクニカル指標で投資判断
  5. 株の買いタイミングのルール4: 投資タイミングを計らない
  6. ネット証券であれば手数料も安く、商品ラインアップも多い
  7. まとめ:買いのタイミングの判断はひとつではない

株式投資で利益を出すには「安いところで買って、高いところで売る」

金融
(画像= Tr3/stock.adobe.com)

株式投資で利益を上げるための理想形は「安く買い、高く売る」、このことにつきます。

株価の予測に関する学説の1つである「効率的市場仮説」によると、株価はその時点で利用可能な情報がすべて盛り込まれた価格で取引が行われており、特定の投資手法によってリスクに見合った以上のリターンを得ることはできないといわれています。

しかしバブルの発生による株価の高騰など、効率的市場仮説に反する事象もあり、実際の株式市場は投資家の心理状態などによって引き起こされる非効率性も含まれているとも考えられています。

そこで、株価が実体以上に乖離したときに売買を仕込むことができれば、安く買って高く売るという株式投資の理想形に近づけることができ、市場平均を超えるリターンを得ることが期待できます。

「相場が下がったら売り、上がったら買う」ではリターンを上げるのは難しい

人間の心理状態が投資活動に与える影響は大きく、景気が悪化し株価が下落し続けているときは「どこまで下がるのか?」という恐怖感から、買い向かうこと(積極的に買うこと)は容易ではありません。

しかし、相場が反転してから買いに入るのでは利幅も縮小し、リターンを上げるのが難しくなってしまいます。

投資家の心理状態を表す「VIX指数」と「サイコロジカル・ライン」

相場の変動が投資家の心理に与える影響は大きく、時に実体より相場を乖離させる株価の過熱や暴落を引き起こす一因となります。

そこで投資家の心理状態を表すボラティリティ・インデックス(VIX指数)やサイコロジカル(心理的な)・ラインといった指数・指標が開発されています。

・VIX指数

VIX指数は今後の相場の価格変動が拡大するか否かを元に、相場に対する投資家の恐怖感を数値化したもので、通常は10~20の数値を取るといわれています。

しかし、相場の不透明感が増して今後価格変動が大きくなると投資家が予想した場合は、VIX指数は上昇していき、リーマンショック時には89.53にまで達したこともありました。

・サイコロジカル・ライン

サイコロジカル・ラインは、例えば、コイン・トスでは裏が出る確率は50%ですが、3回連続で表が出た場合、次は裏が出る確率が高いのではないかと考えます。

サイコロジカル・ラインは、こうした投資家心理の偏りを分析した指標です。

株価でも同様に、前日比で上昇した日や下落した日が続いた場合、そろそろ反転するのではないかという考えが徐々に強まり、投資家心理が一時的な強気または弱気の状態となり相場に影響を与えることがあります。

株式市場の心理的な相場動向に左右されず一定のルールを設けて売買を行えるかが重要です。以下に、初心者が参考にしたい、株の「買い」タイミングに関する4つのルールを紹介します。

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株の買いタイミングのルール1:リバランスで買付け

株式市場で売買を行う投資家は、個人投資家と、銀行や保険会社などに所属し大量の資金で売買を行う機関投資家に大別されます。

機関投資家は個人投資家と異なり、一定のルールに従って売買を行っています。代表的なルールに、「リバランス」(資産の再配分)があります。通常、資産の組入れ比率は定まっているため、株価などが低下した場合は新たに購入して比率を上げるなど、資産配分を是正します。

個人投資家も取り入れたいリバランスルール

機関投資家は債券や株式などの金融商品を、一定の資産配分(アセットアロケーション)に沿って購入し、資産運用を行っています。

しかし、金融商品は日々価格が変動していくため、設定した資産配分から徐々に離れていきます。資産配分はリスクとリターンを決定する重要なパラメータで、比率が崩れたまま資産運用を続けてしまうと想定したリターンが得られなかったり、大きな値下がりに直面したりします。

この資産配分の乖離を是正するため、値上がりによって組入れ比率が上昇した金融商品を売却し、逆に値下がりしているものは購入するなどし、リバランスを行うことで安定したパフォーマンスを獲得しています。

このリバランスのルールは、個人投資家にも応用できるルールです。「もう少し上がりそう」といった目先の相場観ではなく、資産配分に沿って行うことで機関投資家のように、よりよいタイミングで売買が行える確率が高まります。

株の買いタイミングのルール2:決算やIR発表後に購入

株式投資において、企業決算やIR発表は投資の先行きを検討する重要な資料となります。

決算資料から、投資先企業の収益状況や財務の健全性を計ったり、IR発表からは企業活動の方向性を知ったりすることができます。

こうした財務状況のデータを基に投資の可否を判断する手法を「ファンダメンタルズ分析」といいます。

決算内容が良く、その後も勢いが継続しそうな場合に購入する

ファンダメンタルズ分析は、投資先企業の本質的価値を基に株価の割高・割安を判断する分析方法です。企業の本質的価値は決算書をさまざまに分析することで読み取ることが可能です。

ファンダメンタルズ分析で用いる基礎的な判断指標としては、自己資本当期純利益率(Return on EquityまたはROE)、総資産利益率(Return on AssetsまたはROA)、株価収益率(Price Earnings RatioまたはPER)、株価純資産倍率(Price Book-value RatioまたはPBR)などがあります。

ファンダメンタルズ分析を行う際は単年度の良否に加え、複数年の決算内容を時系列に沿って分析し、同業他社と比較して良好な場合に購入することをおすすめします。

株の買いタイミングのルール3:テクニカル指標で投資判断

ファンダメンタルズは企業の成長を待つ必要があるため、成長が株価に反映されるまでに時間がかかります。

そこでチャート情報などを基に、過去の値動きを分析して比較的短期的な株価の動向を予想する「テクニカル分析」による投資判断を行う方法もあります。

テクニカル分析は分析者による解釈によって違う見方ができる場合もあるので、ファンダメンタルズの変化により株価が変動したのかを見極める必要があります。

騰落レシオの目安は80%~120%

値上がりした銘柄と値下がりした銘柄の割合を示す騰落レシオは、通常時は80%~120%の水準となり、これを下回ると売られすぎ、上回ると買われすぎのサインとなります。

2020年3月16日、騰落レシオ(25日移動平均)は40.12%まで低下しましたが、その後は順調に上昇し、日経平均株価が29年ぶりに2万6,000円台を回復した2020年11月17日の騰落レシオは94.63%となっています。

移動平均乖離率の目安は±15%~20%

移動平均線は一定期間の株価の終値を合計し、それを日数で割って値動きを平滑化したものです。

値動きを把握したい期間に応じて日数を調整して用いられており、5日移動平均~200日移動平均が主に使用されています。

移動平均乖離率は、移動平均線からの株価が上下にどの程度乖離しているかを示すもので、東証市場第一部に上場されている銘柄では通常は±15%~20%の範囲内に収まるといわれており、この乖離率が大きいほど売られすぎ・買われすぎのサインと見なされています。

酒田五法のW底

株式を購入する際、できるだけ安く購入できれば大きな利幅を狙うことができるため、株価の底値を知るテクニカル分析の手法もあります。

酒田五法のひとつであるW(ダブル)底は、株価が下落から反転したものの株式の売却によって再度下落し、2回目の底値を付けた場合に、株価の上昇を押さえ込んでしまった売りがなくなっているため、その後の株価が急上昇するという考え方です。

底値を狙って株式を購入しようとする場合は、上値の圧力を意識してポジションを取るとよいでしょう。

株の買いタイミングのルール4: 投資タイミングを計らない

ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析などで購入を検討することが難しい場合は、あえて投資タイミングを計らないのも選択肢といえます。

つみたてNISAやiDeCo、積立投資を利用して自動で毎月投資を続ける

投資信託などを利用した長期積立による分散投資は、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度も利用することができるなどのメリットがあります。

投資タイミングを計らず、ドル・コスト平均法などの定額購入法を用いて一定期間にわたって資金を分割して投資を行うことで、投資期間における平均値で金融商品を購入することができます。現物の株式は購入単価がさまざまであり、少額ずつ購入する際は投資信託を利用すると便利です。

この際、日経平均やTOPIX(東証株価指数)に連動する投資信託を用いることで、市場の平均程度のリターンを狙うことができ、機械的に積立投資を行うため各種分析に時間を割く必要がなく、気軽に投資を継続できるといったメリットもあります。

また、投資信託を用いて積立投資を行う場合は、つみたてNISAやiDeCoの非課税枠を利用し所得税などを節税することも可能です。

つみたてNISAとは

つみたてNISAは、毎年40万円までの非課税投資枠が設定されており、20年にわたり投資を行うことができます。非課税枠は最大で800万円となります。本来、投資信託の分配金と売買による譲渡益には所得税などが約20%課税されますが、つみたてNISAの非課税枠を利用した利益については非課税とすることができます。

投資に用いることができる金融商品は金融庁が長期・積立・分散に適していると認定した投資信託のみが利用可能です。

iDeCoとは

iDeCoは、老後資金を準備するための公的制度です。掛金は全額所得控除されるため、積立期間にも節税効果が得られる特徴があります。

拠出した掛金は、投資信託や定期預金などを用いて自身で運用することとなりますが、値上がり益はすべて非課税となります。

その反面、掛金の払い出しには制限があり、原則として加入期間が10年以上と加入者が60歳以上に達することが条件となっています。

iDeCoの老齢年金は一時金形式と年金形式またはその両方から選ぶことができ、一時金形式の場合は退職所得に、年金形式の場合は公的年金に関わる雑所得に区分されますが、いずれも控除枠が設定されており税負担を軽くすることが可能です。

ネット証券であれば手数料も安く、商品ラインアップも多い

売買手数料などのコストは資産運用のパフォーマンスを確実に低下させるため、少しでも安い証券会社を選ぶことが肝要です。

また、投資信託のうちで上場されていないものは、証券会社が販売先となっているため、証券会社ごとにラインアップが異なります。

投資信託を用いた資産運用を想定している場合は、取扱本数の多さや意中の投資信託を取り扱っている証券会社を選ぶようにしましょう。

現在はネット証券を中心に売買手数料が安価な傾向があり、投資信託の取扱本数も充実してきています。なかでもSBI証券と楽天証券は、2,600本以上の投資信託を取扱っているので、資産運用に用いる証券会社としておすすめです。

まとめ:買いのタイミングの判断はひとつではない

株式投資の理想は安く買って高く売ることにつきますが、下落相場が続くとどこまで下がるのかわからない恐怖感からポジションを取り難く感じてしまいます。

本記事で紹介した「買い」のタイミングを見極めるための、ポイントを整理します。

・決算やIR直後、テクニカル分析などの方法がある

買いのタイミングを判断する方法として、決算書やIR発表より企業の本質的価値を計るファンダメンタルズ分析と、チャートなどの過去の値動きを判断材料として用いるテクニカル分析などがあります。

いずれも市場平均以上の大きなリターンを得る可能性がありますが、ファンダメンタルズ分析は決算書などの分析と企業の成長が株価に反映されるまでに時間が必要となり、テクニカル分析は分析者の解釈に幅があるなどの特徴があります。

・自動化(リバランス、ドル・コスト平均法で積立)

資産運用を行う際は、リスク・リターンを管理するため、組入れる金融商品の割合を定めることが重要ですが、日々の価格の変動により資産配分は徐々に崩れていってしまい、想定外のリスクの発生やリターンの不足に直面する恐れがあるため、定期的に当初の組入れ比率に戻すためのリバランスを行いましょう。

また投資銘柄を絞り切れない場合や各種分析に時間をかけることができない場合は、日経平均やTOPIXに連動する投資信託を、ドル・コスト平均法を用いて購入することで市場平均程度のリターンを狙うこともできます。積立投資については、iDeCoやつみたてNISAなどの税制優遇制度の活用も検討しましょう。

・相場の上下で感情的に判断するのではなく、ルールを設けて売買するのが重要

投資の格言に「もうはまだなり まだはもうなり」というものがあります。これは、もう底値(天井)なのではないか?と思うときはまだ下がる(上がる)のではないかと考えを巡らせようという意味で、投資家の感情による判断を戒める意味があります。

一時の相場の状況によって過度に過熱または悲観した売買を行わないよう、ルールを設けて売買することが重要です。

文・菊原 浩司
2級ファイナンシャルプランニング技能士、一種証券外務員資格保有、管理業務主任者 人生のお金の設計図であるマネープランには、マイホームの取得や養育費の準備、老後資金の確保といった問題に対処するため、資産運用やリスク対策の為に各種保険を利用していく必要があります。 複雑化するマネープランに対し、PDCA【Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)】サイクルを利用したコンサルタントを行っている