住宅の保守・保証に関する住まいのトータルソリューションを提供している日本リビング保証(7320)の業績が好調だ。2021年6月期第2四半期業績は、売上高が前年同期比25%増の12億1400万円、営業利益同13.4%増1億7600万円、経常利益同23.6%増2億5500万円、当期純利益同21.8%増1億6700万円となった。同社はハウスメーカーやパワービルダーなど住宅事業者を通じたBtoBtoCサービス展開しているが、中長期戦略としてBtoCサービスにも力を入れていく。
住設あんしんサポート」主軸
取引事業者数は約3500社
同社は住宅事業者向けに様々なアフターサービスプラットフォームを提供している。大きな柱となっているのが、住宅設備の延長保証に代表される住宅保証サービスだ。
例えば「住設あんしんサポート」は、新築時やリフォーム時に新設されるキッチン・トイレ・バスなどの住宅設備機器の延長保証サービス。通常メーカー保証が1~2年のところ、最長10年間、無償で修理、交換に対応する。平均価格は10年間10万円程度で契約時に一括で支払われる仕組み。2012年のサービス開始以来、契約件数約21万件、契約機器件数約157万件、取引事業者数は約3500社。
同社のビジネスモデルは、安達慶高社長曰く、「生命保険会社に近い」という。長期保証にかかる保証料が前受で売上計上されるため、短期的には経常利益が圧迫される。
「このため利益が少なく見えがちな収益構造になっているのです。もっとも中長期的には、分割計上された保証料が、翌期以降に毎年積みあげていくため安定的な収益構造になっています」(同氏)
消費者には同社の名前が出ることはない。基本的には共同保証という形で住宅事業者と連名で住宅事業者の裏でサポートしているからだ。
住宅のメンテナンスなどのアフターサービスに限れば、競合他社が多いが、同社は他社とは微妙に異なり、完全に競合するモデルはないという。
「当社は保証をメインにするのではなく、住宅事業者に対して最適なソリューションを提供するビジネスモデルです。住宅事業者にとっては新築供給が減る中、引き渡し済みの顧客に対して如何に囲い込みをしていくか、ストック事業をいかに拡大させるかが課題となっている。一方で中小の住宅事業者は販促ツールとして拡大し、大手に負けない保証サービスを提供したい。事業者によってニーズはバラバラです。当社はこうした部分のどちらにも対応するサービスを展開しています」(同氏)
住宅事業者が必要なアフターサービスを付加価値として提供する。単体で勝負するよりはパッケージで勝負するのが同社の特徴だ。
「保証単体ではなくて住宅事業者の痒い所に手が届くサービスを展開する。付加価値をパッケージ化して保証に入ってもらう訳です。保証が収益の源泉であることは間違ありませんが、それを売るための方法、例えばコールセンターなどアフターサービスのソリューションを提供するが当社の強みです」(同氏)
同社のターゲットとなる新築住宅の年間着工数は90万戸程度で推移しており、その意味ではマーケット拡大の余地があるという。
2021年6月期第1四半期はコロナ禍により、住宅事業者が売買できない状態が続いた影響で、一瞬落ち込んだ。しかしすぐに回復したという。その後は在宅勤務が浸透したことで、「家の中でこもるケースが増えるので、むしろリフォームメンテナンスが伸びていく可能性があります」(同氏)と見通しは明るい。
一方で、地方の住宅事業者への営業が効率化されたという。
「今までは営業マンが訪問するため、時間と手間がかかっていました。しかし今はZ00Mを使ってクロージングできるようになり、新規営業力が増し、新規の開拓スピードが去年の2~3倍になりました」(同氏)
ただ、事業者が顧客を獲得するのは早くとも1年先のため、すぐに売り上げに直結するわけではないが、先を見据えた新規開拓の効果は大きい。
▼ビジネスモデル
持ち家3000万戸がターゲット
サブスクリプション方式を採用
同社では今後、中長期的な成長戦略として居住中のオーナーを中心にBtoCでのサービスの展開にも力を入れていく。市場規模は居住中のオーナーが圧倒的に多い。持ち家3000万戸にいかにアクセスするかが非常に重要と位置付けており、数年のうちに大きな柱としたい考えだ。
その商品として期待されているのが「建物あんしんサポート」だ。同商品はサブスクリプションサービスで、引き渡しから10年以降も引き続きサポートするもの。新築は引き渡しから10年間は瑕疵保険があるが、引き渡し10年を超えて突発的に発生する雨漏りなどの不具合に関し、1不具合当たり最大200万円まで無料で修理する。
既に初めての株主優待として発表されている「スイッチゴールド」も居住中のオーナーの呼び水として期待している。金(ゴールド)の保有量に応じて発行される電子ゴールドを提供もので、0.1g=約600円相当小口から追加購入も可能で、金投資としても活用できる。電子マネーに交換してハウスメンテナンス用品への交換や、リフォーム資金の積立てに活用することができる。
「住宅用の財布という位置づけです。積み立てできるサービスでポイントを貯め、いつでも金に変えられる。電子マネーなどとシームレスに使えるシステムです。しっかりお金を貯めて将来に備えましょうという訳です」(同氏)
同社の今後の課題は会社の価値をいかに上げるかだ。
「今後企業価値を10 ~20倍に上げようとするとまだまだ力不足。そのためにはDX化やM&Aを進めていく。成長を加速させるためにはM&Aを抜きにしては難しい。3~5年先までに強みの金融事業を軸にしながら ITで先行していきたい。足元は長期保証とアフターサービス。あくまでも住宅をメーンとしてどんなソリューションを提案できるか。そこを軸として事業を拡大していきたい」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)