SBテクノロジー【4726・東1】新主軸のクラウド・セキュリティ事業が右肩上がり テレワーク・デジタル政府向け製品で攻勢かける
渡辺 洋司代表取締役CTO

企業のウェブサイトがサイバー攻撃を受け、個人情報の流出やウェブサイト改ざんなどが起きると、企業経営に大きなダメージを与えかねない。このような危険からウェブサイトを守るのが「WAF(ワフ)」というサービスだ。サイバーセキュリティクラウド(4493)は2013年12月以降WAFの開発・提供を行っており、クラウド型WAFサービス「攻撃遮断くん」で導入社数・サイト数合わせて国内ナンバーワン(※1)を獲得している。

渡辺 洋司代表取締役CTO
profile◉わたなべ・ようじ
1975年生まれ。明治大学理工学部情報科学科を卒業。大手IT企業の研究開発のコンサルティングを手掛ける企業において、クラウドシステム、リアルタイム分散処理・異常検知の研究開発に携わる。2016年、サイバーセキュリティクラウドCTOに就任。17年同社取締役CTO、20年ソフテック代表取締役社長。21年1月、サイバーセキュリティクラウド代表取締役社長兼CTOに就任。21年3月、同社代表取締役CTOに就任(現任)

純国産WAF「攻撃遮断くん」
AIがサイトに合わせ自動運用

 WAFとは「ウェブアプリケーションファイアウォール」の略で、ウェブアプリケーションへの攻撃を検知して防御するサービスのこと。同社は、主力製品であるクラウド型WAF「攻撃遮断くん」をはじめ「WafCharm(ワフチャーム)」、「Managed Rules(マネージドルールス)」などのセキュリティサービスを自社で開発、提供している。

 同社売上の約8割を占める「攻撃遮断くん」は、外部からのサイバー攻撃を遮断し、個人情報漏えいやウェブサイト改ざん、サービス停止などからウェブサイトを守るサービス。

2013年のサービス開始以降、建設や金融、航空など1000社以上、1万2000以上のサイトに採用されている。

「攻撃遮断くん」のタイプは、ウェブサーバに直接インストールする“エージェント連動型”と、一旦「攻撃遮断くん」専用のサイトを経由することでセキュリティを守る“DNS切り替え型”の2つ。費用は月額課金制で、エージェント連動型は月額4万円から、DNS切り替え型は月額1万円〜80万円となる。

「日本ではアメリカのWAFサービスを国内企業が買って運用するケースが多い。当社は社内で開発したAIエンジンを使い、日本のセキュリティ情勢に合わせたサービス提供・運用をしています」(渡辺洋司代表取締役CTO)

■サイバーセキュリティクラウドが守る領域画像

株主手帳

■攻撃遮断くんのイメージ

株主手帳

クラウド使用時の手間を省略
2つのWAFサービスが急成長

 売上の約2割を占める「ワフチャーム」は、「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」などのクラウドコンピューティングサービス上でWAFを自動運用するものだ。

 各クラウドサービスには、セキュリティ対策としてそれぞれにWAFが用意されている。しかしその中身の機能はユーザー企業が選んで設定する形になっており、専門知識がないと運用が難しい。一方「ワフチャーム」はウェブサイトの使用状況に合わせWAFを自動運用するため、企業の手間が不要。価格は月5000円がスタート時の料金となるが、ウェブへのアクセス数による従量制料金となっており、平均すると月6万5000円程度という。

 同社はクラウド市場世界シェア1位(※2)のAWSが提供するAWSWAF用「ワフチャーム」を17年に開発。20年には、同シェア2位(※2)のマイクロソフトが提供するAzure WAF用サービスも開始した。特に伸びているのがAWS WAF用サービスで、現在は392ユーザーが導入する。

「ウェブサイトのセキュリティ対策はお客様それぞれの事情が大きく、クラウドサービス側でそれに合わせるのは難しい。当社は『攻撃遮断くん』でいろいろなお客様に対応してきたノウハウがあり、それらを『ワフチャーム』に生かしています」(同氏)

 また現状では売上の約5%にすぎないが、前期比261%増と大きく伸びているのが「マネージドルールス」だ。これはAWS WAFの汎用性が高い機能をセットにし、それを元に自動運用するもので、月額約5000円で使用できる。最小限の防御には充分な機能が入っており、比較的低価格であることから、世界で約1500ユーザーが使用している。

「AWS用の『マネージドルールス』は国外他社も出していて、当社は世界で7番目の発売になる。後発だけに、他社より性能が良いが安いというポイントを押さえました。日本のサービスということにこだわらず、性能を見て使うお客様がいると実感している」(同氏)

サービスの知名度を上げる戦略
〝本場〟アメリカでも販売拡大を

 アメリカでは約2割の企業が、ウェブサイトのセキュリティ対策としてWAFを使用している。しかし日本では、WAFを使用している企業は全体の6.7%程度と低い。同社ではWAFの知名度を上げるため、都心部だけでなく地方にもフォーカスして導入を促進したいと考えている。

 また、今後はウェブサイトの脆弱性管理のサービスを伸ばしていく。脆弱性管理とは、ウェブサーバの中のソフトウェアに攻撃されやすい部分がないかをチェックする、いわばサーバの健康管理に当たるもの。同社は20年にわたり脆弱性管理を手掛けてきたソフテック社を子会社化しており、WAFとの組み合わせでビジネスを最大化していきたいと考えている。

 同社は18年に米国法人を設立、WAF導入が盛んなアメリカへの販売にも注力していく。すでにAWSを通じて同社のサービスを使用するユーザーは70以上の国と地域に広がっており、国外ユーザーは800を超えている。

「日本のWAF市場規模は数十億〜数百億円と言われますが、アメリカでは数兆円のビジネスであり、さらに拡大を続けています。現在は国内売上が大部分ですが、いずれは日本とアメリカの売上が逆転するようでありたいし、またそうするべきだと考えます」(同氏)

※1 出典:「クラウド型WAFサービス」に関する市場調査(2019年6月16日現在)<ESP総研調べ>(2019年5月〜2019年6月調査)

※2 出典:Gartner(August 2020)・・・Worldwide Iaas Public Cloud Services Market Share, 2018-2019

(提供=青潮出版株式会社