FXで利益を得た場合、他の金融商品と同じく税金がかかる。FXを始めるときは、利益の出し方や損失の抑え方ばかりに目がいきがちだが、税率や申告の仕方についても理解しておかなければならない。

この記事では、FXで利益を出したときにどの程度の税金がかかるのか、税率や確定申告の注意点などについて解説する。

そもそもFXとはどのような投資か?

FX,税金
(画像=PIXTA)

FXとは「Foreign Exchange」の頭文字を取った略語だ。Foreign Exchangeとは本来、外国為替という意味だが金融商品においては「外国為替証拠金取引」という。簡単に言えば、2国間の通貨の為替変動を利用して行う投資法で、「外国為替取引」と「証拠金取引」を組み合わせているところに特徴がある。

・外国為替取引

「円/米ドル」「円/ユーロ」のように異なる2通貨を交換する取引を指す。例えば1米ドル=80円のときに1万円分の米ドル(125米ドル)を買ったとする。為替が変動し、1米ドル=100円になったときに125米ドルを売れば1万2,500円になるため、2,500円分の為替差益を得ることができる。

・証拠金取引

一定の証拠金を預け入れることで、証拠金を担保にして取引を行うことを指す。証拠金を預け入れることで預け入れた証拠金の何倍もの金額の取引ができるようになる。このように小さな金額を預け入れ、大きな金額を動かす仕組みを「てこ(レバレッジ)の原理」になぞらえて、「レバレッジ」という。

レバレッジが10倍の場合、預け入れた証拠金の10倍まで取引することが可能だ。例えば、100万円を証拠金として預け入れた場合、1,000万円まで取引ができる。

つまりFXはただ外貨の交換をして利益を狙う投資法ではなく、預け入れた証拠金を担保に何倍もの外貨の交換をして利益を狙う投資法なのである。

FXで得られる利益は2種類

FXで利益を得る仕組みを簡単に言えば、「安く買って高く売る」ことだ。投資の基本的な考え方でFXも株式なども同様だ。FXには2種類の利益があり、それぞれについて解説する。

●為替差益

為替差益とは、2通貨間の為替の差によって得られる利益だ。先ほど、外国為替取引における利益について「円/米ドル」を例に簡単に説明したが、どの通貨でも「円高のときに買って円安のときに売る」ことで為替差益を得ることが可能だ。

例えば、為替取引では「1米ドル=80円」と「1米ドル=100円」の場合、前者を円高、後者を円安という。1米ドルを80円(円高)で買って100円(円安)で売ることで20円の為替差益を得ることができる。これは「安く買って高く売る」という株式などの利益の出し方と同じと言える。

しかし、株式などと異なるのは、FX取引では「先に売って後から買い戻す」ということができる点だ。売ることから取引をスタートし、円安のときに売って円高のときに買い戻すことで為替差益を得ることもできる。円安になるのを待つだけでなく、円高傾向の場合でも利益を期待することも可能だ。

●スワップポイント

FXでは、為替差益以外にスワップポイントで利益を得ることもできる。スワップポイントとは、2通貨間の金利差を意味する。低い金利の通貨を売って高い金利の通貨を買う場合、2国間の金利の差額を調整するために付与されるものがスワップポイントだ。

例えば、豪ドルの金利が2.0%、日本の金利が0.1%だとすると、その差は1.9%となり、1.9%分のスワップポイントが受け取れる。逆に高い金利の通貨を売り低い金利の通貨を買うと、スワップポイントの支払いが発生するため、注意が必要だ。

スワップポイントは、金利情勢によって日々変動するため、常に一定の金額の受け取りが約束されているわけではない。今までスワップポイントを受け取っていたのに、ある日突然スワップポイントの支払いが必要になることもあるため、注意したほうがよいだろう。

FXで得た利益には税金がかかる

FXによる利益には、為替差益とスワップポイントの2種類の利益があることを説明した。どちらの場合も「先物取引に係る雑所得等」として取り扱われ、税金がかかる。FXで得た利益にはどのように税金がかかるのかを確認していこう。

●確定申告が必要

投資にかかる利益は、金融商品によって所得の種類が変わり課税方法も異なる。FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として取り扱われ、申告分離課税の対象となり、確定申告が必要だ。申告分離課税とは、他の所得から分離して税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式のことだ。

例えば、会社員が毎月もらっている給与は給与所得となる。給与所得者の会社員がFX取引をして利益を得た場合、「給与所得」と「先物取引に係る雑所得」の2種類の所得があることになる。それぞれの所得に税金がかかるが、FXによる所得は申告分離課税のため、給与所得とは別にFXによる所得分だけを対象にしてFX分の税額を計算し、申告する。

とはいえFX取引では、利益が出るたびに税金を計算するわけではない。所得税は、1年間(1月1日~12月31日)の所得に対して計算されるため、1年間の利益(あるいは損失)を合計し、所得がプラスとなった場合に確定申告を行って納税することになる。

●損失やプラスがわずかな場合は不要

1年間のFX取引の合計で利益が出ても確定申告が不要な場合がある。一般的な会社員の場合、会社で年末調整を行っているため、基本的に確定申告は必要ない。しかし、税法では会社員でも確定申告をしなければならない場合が決められている。例えば、「年収が2,000万円超の人」「給与所得と退職所得以外の所得の合計額が年間20万円超の人」などだ。

つまり会社員で年収2,000万円以下かつFXによる所得が20万円以下の場合、確定申告は不要となる。ただしFXでの所得が20万円以下でも、他の所得と合わせて20万円を超えれば確定申告が必要だ。

●確定申告には損益通算や経費申請できるメリットも

1年間の取引を合計したときにマイナスとなってしまうケースも考えられる。この場合は、他の所得のプラス分をFXのマイナス分で減らす「損益通算」をすることが可能だ。損益通算をすることで他の所得のプラスが減るため、その分税額も少なくなり節税につながる。

ただしFX取引によるマイナス分を損益通算できるのは、FXと同じく「先物取引に係る雑所得等」だけだ。例えばCFD取引、外為オプション取引などが挙げられる。他の「先物取引に係る雑所得等」と損益通算をしてもなお引ききれないマイナス分があれば、一定の要件の下、「翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除が可能だ。これを「3年間の損失繰越控除」という。

FXにかかる税金計算は「利益」ではなく「所得」に対して計算されることにも注意が必要だ。1年間の取引で利益や損失を合計したときにプラスとして算出された金額が「利益」となる。一方「所得」とは、その利益から必要経費などを差し引いた金額を意味する。

FXによる所得を計算する際は、かかった経費があれば差し引くことができる。例えば、FXでの1年間の損益を合計して30万円の利益が出たとしよう。経費として年間10万円を支払っていた場合、30万円から10万円を差し引くことができるため、所得は20万円となる。つまり年収2,000万円以下の会社員で他の所得がない場合は、確定申告をする必要がなくなる。

一般的に経費として認められるのは、以下のようなものが挙げられる。

・FXを学ぶための書籍代
・通信費
・有料のセミナー代
・取引にかかった手数料など

ただし領収書などが必要となるため、きちんと保管しておかなければならない。

FXの税率は?

FXは、国内FX口座と海外FX口座があるが、それぞれに税率が異なる。

●国内FXは20%

国内FX口座での取引による利益(所得)の場合、税率は一律20%(所得税15%+住民税5%)だ。2037年末までは復興特別所得税が上乗せされ、所得税15.315%、住民税5%の計20.315%となっている。

●海外FXは税率が違うので要注意

海外FX口座で得た所得に対しても日本の税制が適用され、日本国内で確定申告や納税をしなければならない。しかし国内FX口座とは異なり、海外FX口座で得た利益は雑所得として取り扱われ総合課税の対象になる。総合課税というのは、給与所得や不動産所得など他の所得と合算した金額から基礎控除などの所得控除を引いて税金を計算する課税方式だ。

総合課税の場合、累進課税といって所得額が大きいほど税率が高くなる。2021年時点で所得税の税率区分は、5~45%の7段階となっている。

FXの利益を確定申告する際の注意点

FXの利益を確定申告する場合、いくつか注意点がある。

●年間損益報告書が必要

FXの利益を確定申告する場合は、FX会社が発行する年間損益報告書が必要だ。年間損益報告書は、FX会社の取引ツールなどからダウンロードできる。自分がどれだけの利益と損失を出しているか把握するためにも必ず確認しておこう。

●経費申請するなら領収書の保存も

前述のとおり、FX取引にかかる経費を利益から差し引く場合は、支払いを証明できる領収書などの書類が必要だ。領収書があっても、FX取引のための経費として認めらなければ経費を差し引くことはできない。例えば書籍代の場合、FXを勉強するための購入と認めてもらえるよう書籍タイトルを領収書に記載してもらうなど工夫をしたほうがよいだろう。

正しい知識で健全なトレードと納税を

会社員など税金の計算や確定申告に慣れていない人にとっては、FXで利益が出た場合の所得額算出や税額計算、確定申告手続きなどを面倒に思うかもしれない。しかしFX投資をするということは、投資家として確定申告を行う義務があることも意味する。

万一申告せずに放っておくと、無申告加算税や延滞税など余分な税金を徴収されることになりかねない。確定申告をしなければいけないことがわかっていながら隠ぺいした場合など悪質なケースでは、さらに重加算税が課される可能性もあるため、注意が必要だ。FX会社から税務署へ「先物取引に関する支払調書」が提出されるため、税務署も各投資家の利益を把握している。

正しい知識で健全な取引と納税を心がけるようにしたい。