●実車を見れば「CXハリアー」とはきっといわなくなる!
世界累計384万台の人気SUV、ホンダ・ヴェゼルが2代目にフルモデルチェンジした。
半導体の供給遅れもあり、すでに最上級グレード(PlaY)の納車がほぼ1年待ち(来年5月頃)という人気っぷりだが、同時にいままでのホンダにないモデルチェンジ戦略も見え隠れする。
いわば、それはインテリア専業『ニトリ』顔負けの価格コンシャス戦略であり、いままでのホンダになかった乗る人への優しさ戦略だ。
まずはボディ。新型ヴェゼルのプラットフォームは基本1stモデルの流用。しかし、高張力鋼板の使用比率を増して横剛性、ねじり剛性、ダンパー取り付け部剛性をアップさせている。
それ以上に大きいのがエクステリアだ。抑揚のある初1stモデルのワイルドデザインも良かったが、大胆にイメージを変更。直線基調で塊感のあるクリーンデザインに変貌している。
デザインが露出された時点では、フロントがマツダCXシリーズ、リアがトヨタ・ハリアーに似ているという声が殺到。「CXハリアー」なる表現も出たが、それは真正面、真後ろから見た二次元グラフィックの話。
立体的に見るとどちらにも似ておらず、造形は清潔感があってカッコいい。似ているという揶揄はすぐに消え去るだろう。
●居住性とユーティリティの絶妙なバランス
同時に向上したのが室内パッケージングとクオリティだ。
全長×全幅×全高は4330×1790×1580(1590)mm。1stモデル後期と長さ変わらず、幅がプラス20mm、高さがマイナス25mmで、2610mmのホイールベースは不変。
骨格が変わってないのだが、乗るとリアシートはヤケに広い。身長176cmの小沢が座ってヒザ前にコブシ3つが余るほど。
リアの着座ポイントは下がり後方配置されている。その分、視点は下がったが広々感はかなりのもの。
それでいて荷室は初代と変わらぬ容量390Lを確保。デザインと居住性と実用性のバランスは上がっている。
見逃せないのがクオリティでシートのクッション性が向上。座り心地が柔らかく気持ちよくなってるし、プライムスムースとファブリックによるコンビ表皮の質感も高い。
インテリアで面白いのは、初めて採用した「そよ風アウトレット」で、エアコン冷気を肌に直接当てたくない人向けに、送風を壁に這わせることが可能。繊細な現代人向けの装備だ。
●フィットより力強い加速
さらなる注目ポイントは走り味だろう。
新たに2種類のパワートレインを用意。メインは新型フィットから導入したコンパクト車用の1.5Lの2モーターハイブリッド『e:HEV』。
エンジン出力、モーター出力ともにフィットより向上し、とくに後者のピークパワー&トルクは131ps&253Nmとパワフル。118ps&142Nmの1.5ガソリンも用意するが、やはりいいのはe:HEVだ。
初代の1モーターハイブリッドに比べ、燃費が向上しただけでなく静粛性、スムーズさがダン違い。
フィットよりパワーアップしたうえ、ギア比を下げているので発進直後から力強い。
フィット用e:HEVは静かで滑らかだったが電動感は抑えぎみで物足りなかった。
しかしヴェゼル用e:HEVは電動感が強まっており、アクセルオフ時の回生ブレーキも4段階から選べ、ワンペダルに近い運転が可能。
とはいえ、電動感をセールスポイントにする同じ2モーターハイブリッドの日産キックスe-POWERより全体的には穏やかなのだが。
全体を見渡すと、刺激を抑えた上品で立体的なデザインやタッチ、座り心地に優れたインテリア、電動車ならではの滑らかさを備えた新型ヴェゼルは、いままでとはひと味違う。
「燃費スペック」や「クラストップの広さ」に必要以上にこだわらず、明らかに乗る人への優しさであり、心地よさを優先してきている。
これは、新型フィットから始まったホンダの新しい人間中心の物作りとみて良いだろう。
同時に1.5LのガソリンCVTモデルは、ほぼ228万円スタートと価格抑えめ。
たとえば、ハイブリッドしかない日産キックスと比べてかなり手頃。
ハイブリッドモデルも2モーター化で、装備の違いもあるが15万程度しか上がっていない。
全体にはハイコストパフォーマンスといっていい。
確かに待つのはじれったいが、待つ甲斐のある1台かもしれない。
(提供:CAR and DRIVER)